44話 ヒートアップした会話
2人の話を聞く中で俺は俺自身をどうするべきなのか考えていた。
バジリスクが鳴いたとき、メイとハルは倒れたが俺にはそこまでの影響がなかった。
それは俺が『魔の勇者』であるからか?
また一つ可能性が確定に近づいてしまった。
「――そうしてお互いに話し合い、いくつかの契約を結んだんだ。例えば、聖域を定め、その中にいる限り人類は攻撃しない。また、神獣も聖域に入らない限り攻撃しないということが交わされたり、人類もその聖域を横切りたいときがあるために、神森には『守護の道』を、神海には『守護の航路』を作った。空には必要ないだろうということで作られなかったけどね」
「よく知ってるじゃない」
ノレジは嬉しそうに笑った。
「あとは――」
新しい情報ばかり頭に入ってきて整理に追われる。
どれが常識でどれが専門的なのか俺には分からないためむやみに聞くことができない。
いや、もうすでに結構質問していた。どちらかというと遠いところから来たという設定の方が都合がいいんじゃないだろうか。
「そろそろ止めなくていいの?」
「あ、そうだな、めっちゃ盛り上がってるし」
「――三神獣は体の周りに魔術結界を張ってるから物理、魔術耐性が異常に高く生半可な攻撃じゃ無駄だろうって帰ってきた超術師は言ってたらしいよ。弱点と言えるところは今のところ見つかってない。わざわざ共存できてるのに危険を冒してまで弱点を探す物好きはいないよ。強いて言うならその結界を破壊すると攻撃が通りやすくなるからそれが弱点と言えば弱点かな。あくまで通りやすくなるだけで結界のない場合の耐久力は調べようがないから――」
「盛り上がってるところ悪いが」
俺はどんどんヒートアップする会話を止める。
「あ、すいません! 長々と話してしまって!」
「イツキ、いいところだったのに」
ハルはジト目で俺を見てくる。拗ねた子供のようだ。
「だって終わりそうになかったし、これからどうするかもまだ……」
「じゃあ、ノレジにこの国を案内してもらう?」
ハルはノレジに問いかけるように視線をそちらに向けた。
「僕でよければ! 広いのでじゃんじゃん行きましょう!」
「道中でもうちょっとほかのことも教えてくれる?」
「何でも聞いてきてください!」
ノレジは生き生きとしている。自分の知識を人に聞いてもらうのがうれしいようだ。
それはわからないでもない。
「じゃあまずこの国、いや、この世界の最高傑作の庭園から行きましょう! 僕のイチオシです!」
そう言い、ノレジは歩きだす。俺とハルもついていく。
「メイ?」
俺は後ろでボーとしているメイに呼びかける。
「え、あ、どうしたの?」
「いや、今からノレジにこの国を案内してもらうって」
「あ、ああ、そうだったわね。ごめんなさい」
そう言ってメイも急いでこちらに来る。
「……やっちゃったわね」
メイがぼそりと呟く。
「なんか言ったか?」
「いえ、何もないわよ。さあ、行きましょう」
そう言いメイも一緒にノレジについていく。
「ねぇねぇ! そういえばお姉さんの名前は?」
ノレジはハルに名前を聞く。
「じゃあさっきの続きなんだけど、三神獣って――」
しかし、ハルはそれに答えなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます