39話 期待と不安の光

「うん?」


 歩き始めてどれくらい経っただろうか。もう日は高くまで登っている。


 そんな時、俺は道の先に違和感を覚える。


 あるところから急に明るくなっている。


「もうすぐ森の端のようね」


 メイの言葉を聞き、やっぱりと思う。


「じゃあもうすぐイチアに着く?」


「え、あれ、確かこの先って……」


「多分オトイックね」


 ハルははっきりと言う。


 しかし、それはバジリスクの言っていた国とは違う名前だった。


「バジリスクはこの方向に行けば他の国にって。その方角はイチアじゃなかったのか?」


「だって私たち、その方向を無視して『道』に沿って歩いたじゃない」


 確かにその通りだった。


 つまり一番近い国がイチアで、バジリスクはその国の方向を教えてくれたが、途中で『道』に沿って歩いたためオトイックに着いたということか。


「そもそもバジリスクはこの方向にイチアという国があるとか一切言ってなかった気がするけどね」


「まあそこ話しててもしょうがない。オトイックには入れるだろうか」


 そこで俺は立ち止まる。


 何故ここまで来たのかを完全に忘れていた。


 この国にも”勇者”の情報が来ていたとしたら?


 入るどころではない。確実に捕まる。また移動するほど体力に余裕もない。


「イツキ、どうしたの?」


 ハルが尋ねてくる。


「いや、何でもない」


 俺は静かに答える。これは悟られるわけにはいかない。


「そう、なら行きましょ」


「そうね」


 2人は前に進んでいく。


 俺にはあの森の抜けた時の明るさが俺の全てを晒す光のように感じた。


 しかし、このまま置いてけぼりをされるわけにもいかない。


 もう一度逃げるのか、そんな不安を胸に俺は2人の後を追う。


 情報が広がっていない事を願いながら。

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