25話 蛇との接触
「バジリスク?」
あの蛇の王とか言われているやつか?
そう言おうとしたその時、
「――!? 避けて!」
不意に後ろを見たハルが叫ぶ。
その声に反応し、考えることなく俺は2人の体を抱え、思いっきり前に飛んだ。
「「え!?」」
2人が素っ頓狂な声を上げるが俺は無視した。
後ろを見るとバジリスクが口から紫色の毒液のようなものを俺たちに向かって吐き出していた。
その毒液は地面につくと、そこにあった草をすべて溶かし、ねばっとした液体が広がっていくのが見えた。
「え、前、前見て!」
俺が後ろを見ているときに、再びハルが叫ぶ。すぐに前を見る。目前に木が迫ってきていた。
俺は咄嗟に足の平を前に向け顔からぶつかることを防ぐ。
しかし、バランスを崩しその場に倒れてしまった。
俺はすぐに立ち上がろうとする。しかし、鋭い視線を感じ素早く顔を上げる。
バジリスクはもう、目の前にいた。
万事休すかと思ったその時、バジリスクは喋り出した。
「貴様ら、何故ここに入ってきた?」
え、こいつ喋れたんだ。俺は少し驚いていた。
少し沈黙が場を包む。後ろの女性陣は恐怖で動けていない。
再びバジリスクが俺たちに話しかける。
「もう一度問う。貴様ら、何故ここに入ってきた?」
「え、あー、なんででしょうね?」
知らない女性もいる以上迂闊なことは言えない。俺は適当に誤魔化す。
「吾輩を愚弄しているのか? 我が聖域にその穢れた足で入ってきておいて」
あ、そういえばハルも聖域って言ってたな。
「ちょっといいか?」
「あ? なんだ? 言っておくがどんなに詫びても貴様らは死ぬぞ」
「いや、そうじゃなくて。聖域って何?」
俺はいい機会だから、聞いておくことにする。
「……」
バジリスクは黙った。表情はあまり読み取れないが、視線から俺を訝し気に見ているように感じる。
そして突然上を向き、
「シュー!! シュー!!」
空気が漏れるような音を発した。刹那、周りの空気が変わった。
内側から内臓をつかむような、筋肉から力を奪うような、そんな違和感が体に広がる。
なんだこれは、と考えているうちに、その違和感はスッと引いていく。
恐らく一瞬の出来事なのだろうが、それはひどく長く続いているように感じられた。
体が落ち着いた頃、後ろからドサッと人が倒れる音が2つ、俺の耳に入ってきた。
咄嗟に振り返ると、ハルとあの女性が倒れていた。
「おい、二人とも大丈夫か?」
俺は慌てて駆け寄る。2人の体を起こす。まるで全身から力が抜け落ちているようだ。
「うぅ、気持ち悪い……」
ハルがぼそりと呟く。顔色が悪い。俺は優しく背中をさすりながら声をかける。
「深呼吸だ、落ち着け」
ハルは大きくゆっくりと息を吸い、そして吐く。これで少しはマシになると良いのだが。
「なあ、お前は大丈夫か」
俺はもう一人にも声をかける。
「ええ、大丈夫、よ。ありかと」
こちらはハルに比べると少しマシのようだ。
「……そうか」
俺が二人を見ている時、バジリスクが言葉を零す。
「悪かったな、追いかけたりして」
「は?」
俺は思わずやつを見た。やつが謝っただと?
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