5話 奇襲

「ふぅー」


 俺は静かに息をつく。以上に力は強くなっているとはいえ、やはり疲れはあるらしい。


「ねぇ、大丈夫?」


 隠れていたハルがこっちに来ていた。顔をスカーフで隠している。


「ああ、普通に何とかなった」


 俺は彼女に笑いかける。彼女は少しほっとしているように見える。


 すると、後ろから足音が近づいてきた。振り返ると走って近づいてくる鎧の人の姿が。


「助けていただきありがとうございます。私たちも苦戦していたもので、大変助かりました」


「いや、別に気にしなくても」


「いえいえ、アルベガ様もお礼が言いたいと仰っています。ぜひ馬車まで来ていただけませんか?」


「ああ、分かった」


「特に厄介だったのは魔法を使ってくる奴等だったんですが、今は姿が見えません。そいつらも倒してくださったんですね」


「え、いや、倒してないけど……」


 刹那、後ろからけたたましい音が響く。俺は振り向きそれを確認する。ビームのようなものが木を吹き飛ばしこちらに向かっていた。


 それを見て俺は反射的にそれに手を伸ばす。そして呟く。


「『吸収』」


 その瞬間、俺の手にそのビームが触れる。そして、消える。まるで手の中に吸い込まれるように渦を巻きながら消えた。


「「……」」


 周りにいた人全員が目の前で起こった光景に絶句している。俺も少し驚いていた。なぜこんなことをしたのかわからない。


 ただ、俺は走り出す。今のビームが放たれた場所へ。


 しかし、もうそこには誰もいなかった。






 俺は歩きながら馬車のところへ戻ってくる。


「だ、大丈夫ですか?!」


 一番最初に話しかけてきた人が焦りながら聞いてくる。


「ああ、平気だ。でも、犯人は逃げた。捕まえられなくてすまん」


「いえいえそんな!守ってくださっただけでも大変ありがたいです!」


 さっきのは何だったんだろうか。俺は少し悩む。


 俺が来たのを見て下がった、そして俺たちが油断しているところを狙って一掃を図った、が、失敗したので逃げた、って言うのが妥当か。でもそれだと、俺があの盗賊たちを倒せるぐらいの力を持っていることを知ってないとできない。盗賊たちと俺が互角だった時、横から攻撃できるように近くにスタンバイしていた方が有利だと思う。


 いや、俺があの戦いに飛び込んだ時にはもうすでにいなくて、味方ごと一掃するつもりだった?それだとしたら何のために?


 ちょっと待て、落ち着け俺。ちょっと焦りすぎている。もう少し冷静に……。


「あの、よろしいですか?」


「え、何が?」


 気付けば鎧の人がまた話しかけてきた。


「アルベガ様もお礼を述べたいと仰っているので馬車まで来ていただくという話なんですが……」


「ああ、その話ね。わかった、行くよ」


「ありがとうございます」


 鎧の人は深く頭を下げるとそのまま馬車の方へ歩いていく。俺はそれについていった。


「イツキさんってすごいね。あの魔法を一瞬で消せるなんて」


 ハルが小走りになりながら追いかけてきて俺の横に並ぶ。


「いや、俺も何が何だか……」


「結構強そうなやつだったね。ちょっと怖かった」


「あの魔法はどんな魔法なんだ?」


「私はそこらへん詳しくないからわからないわ。ごめんね」


「そっか、まぁしょうがないか」


 そして俺たちは馬車のすぐそばに着いた。


 周りでは、ほかの鎧の人達がみな騒然としているのだった。

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