第16話 煮えきらねぇ
間に合ってよかった、
そしてありがとう多田さんと陽菜の友達。
俺は泣きつく二人を落ち着かせながら心のなかでそう思っていた。
そういえばナンパの仲裁ってラブコメのテンプレだよな、とか思ってしまった自分もいるが、
とりあえず、ふたりとも無事で良かった。
なんか両腕に柔らかい感触があるが、気にするのはやめておこう。
─────────
「どうする?なんか雰囲気ぶっ壊れされたわけだけど、、、、ちょっと名残惜しいが帰るか?」
俺は遅めの昼飯を食いながら二人を気遣ってそう提案したのだが、ふたりとも首を横に振った。
「じゃあ、どうするかなぁ、、」
「とりあえず、俺らと離れないほうがいいんだろうな。」
まぁ、それ以外の選択肢はないのだが
「まぁ、まだ遊ぶことは、、、」
あれ?そういえば海って何するの?俺ここ数年来てなかったから何していいのか分からんのだが、、
「そういえば、ビーチバレーできるとこあるらしいけど、そこ行くか?」
「へー、じゃあそうするか。」
俺はユウが出した案に乗ることにした、桜や陽菜も乗ってきた。
陽菜と桜がコソコソと話し合いをしていたのだが、なんだったのだろうか。
―――――――――
なんか、増えてね?
ビーチ―バレーのコートについた俺らなのだが、
ここまで来る途中で、陽菜の友人三人と、多田さん、波さんがグループに混ざっていた。
そして厳正なチーム分けの結果、
『俺、陽菜、多田さん、陽菜フレンズの一人』と『ユウ、桜、波さん、陽菜フレンズの二人』というチーム分けになった。
これって、遊びだよね、、
なんで、陽菜と桜は全国大会の決勝と同じぐらいの気迫で睨み合ってるの?
「あのぉ、、陽菜さん?なんでそんなに闘志むき出しナンデスカ?」
「いや、、女にとって負けられない戦いだからね、、」
「へー、、、、」
俺は遠い目になりながら気にすることをやめた。
――――————
陽菜と桜が尋常じゃないぐらい本気で試合をしていた、
一方俺の方は、女性陣の何か揺れるものが気になって試合どころじゃなかった。
結果、俺らのチームが勝ったのだが、時間はもう夕暮れに近付いていた。
俺らはさっさと着替えてそろそろ帰るかと、更衣室に行った。
―――――――――
着替え終えて、更衣室から出た。 俺が一番最後だったようで、みんなが俺を待っていた。
俺が出てきたのを確認したと同時に、陽菜は、桜とユウに目線で何かを伝えたようで、ユウと桜は他のみんなとどっかに行ってしまった。
俺もついていこうとしたが、陽菜が腕に抱き着いてきて、俺は固まった。
「ねぇ、フミ、ちょっと一緒に行きたいところがあるの」
俺は頭の回転が追い付かなくなり、おとなしく陽菜についていくことにした。
――――――――
陽菜に連れられ着いたのは例のデートスポットだった。
すでに人はいなくなっており、ただ向かい合って俺と陽菜だけがそこにはいた。
「あのね、フミ、、私ね、、フミのことが好き、、、」
ここに連れてこられた時、俺はある程度分かっていた、ある程度覚悟もしてきた、
でも、いざされるとなるとそれがすべて無意味と化す。
俺は何も言わなかった、いや、何も言えなかった。
「自分からフッておいてこういうのはダメだと思ってる、でも伝えておきたいの、、」
「フミ、私と付き合ってください」
陽菜は申し訳なさそうにだけどもすがすがしい表情でそう言い切った。
夕焼けに照らされた陽菜はとてもきれいだった、他の形容詞が思いつかないぐらいにきれいだった。
俺は何か声を出さなければと思ってはいたのだが、のどが思うように動いてくれない。
まだ心が決まってないからだろうと自分の中で決めつける。
「返事はまた今度でいいよ、、」
俺はその言葉に甘えることしかできなかった。
陽菜は先にみんなのところに戻ると言っていた、その眼からは輝く光の粒がこぼれていた
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これでよかったんだ、気持ちは伝えれた、
あとはフラれたって私は文句を言うこともできないし、フミを恨むこともできない、ただフミの気持ちに任せるだけだ。
この後桜ちゃんもフミに告白するだろう、、
それで、フミは桜ちゃんを選ぶのだろう。
私はあの試合に勝ててよかった、そのおかげでフミにしっかりと気持ちを伝えることができた。
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「陽菜?大丈夫?」
ユウさんが涙を流して歩いてきた陽菜ちゃんに心配して声を掛けます
「大丈夫、、桜ちゃん、行っておいで、、」
私は彼女の意図を読み取り、彼女が通った道を逆行していきます。
多分陽菜ちゃんはフミにフラれてはいない、返事すら聞いていないでしょう。
フミくんがその場の感情に流されてOKしてしまわないように、私にチャンスを作るために、、
「フミ、、くん」
「ん、、、ど、、、どうした?桜?」
防波堤に座っている彼は、平然を装っていますが、はかない雰囲気を纏っていました。
「フミくん、こういうときに言うのはダメだと思うけど、陽菜ちゃんのためにも言わせて、、」
「あぁ、、いいよ、、」
ここから私が何というのかフミくんも察したのでしょう。
彼は立ち上がって私の方を向いてくれました
「フミくん、私は、、あなたのことが、、好きです。私と、、付き合ってください!」
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あぁ、俺は多分ダメ人間だな、二人からこんなに純粋な愛を向けられてるのに、、
俺はまだ自分の気持ちがはっきりしない。
俺は眼の前にいる桜に、失礼と知りつつもスマホのメッセージアプリで、一人にメッセージを送った
「桜、少し待ってくれるか?返事ではないかもしれないが、今の俺にできることは伝えるから、、、」
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数分後、目の下を真っ赤にした陽菜がこっちへ来てくれた。
そして、二人が俺の正面に並んだことを確認し、俺は今までにないほど重い口を開く。
「桜、、陽菜、、すまない。俺はまだ自分の気持ちが分からない。
だから、気持ちがはっきりとしたら俺から告白させてもらう。」
これが俺なりの、今できる、最大限の返事だ。
二人ともこの何とも煮え切れない返事を承諾してくれた。
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筆者だより
新作投稿始めました
新作もラブコメなので読んでいただけたら嬉しいです。
これからは毎週火曜日投稿になります
たまに休むかもしれませんが、、、
これからもよろしくお願いします
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