二人の告白

第12話 俺がおかしいらしい

 7月も終わりかけている日の朝6時、俺は眠い目をこすり駅へ向かっていた。空は十分に明るくなっていた。


 横には桜とユウ、今日は海に行く日だ。


「フミ、お前鼻の下伸びてんぞ」

 ユウが面白いものを見る目で言ってきた。


「いやいや、そんなわけないだろ、、」


 俺は反論しようとしたが、少しは思ってるとこもあったので、はっきりとは否定できなかった。

 そのため逆に怪しくなってしまった、


 その様子を見て桜はうつむいて顔を赤くしていた、なんかブツブツと呟いていた。


「あのぉ、、、さくらさん?」


「えっ、ど、ど、どうしたの?」

 急に話しかけられたので驚いたのか、ぎこちない返事になっていた。


「いや、何でもない」


 ――――――――――――


「おはよう、みんな」


「おう」


「ギリギリアウト」


「おはよう、陽菜ちゃん」


 陽菜が集合時間に3分遅れてきた、多分寝坊したのだろう、頭の上にはピョッコっと跳ねるものがあった。


 意外としっかりしている陽菜のこういう姿は初めて見たので、『なんかラッキーかも』とは思った。


 それより、周りの人達からの視線がすごい、多分原因は美少女二人のせいだろう。


 陽菜は短めの濃い青色のスカートをはいて、薄い黄色の半袖の柄付きTシャツを着こなしていた。


 桜は白のワンピースに水色の薄めのカーディガンをはおっていた、一目見ただけで清楚系という印象を受ける、印象どうりでめっちゃ似合っていた。


 ユウもおしゃれな服装でその二人と並んでも違和感がなかった。


 一方俺は、、、黒色の半ズボンに白色の半袖というTHE地味という服装で、明らかに雰囲気に合ってない。


「じゃあ行くか」

 俺が一人で暗くなりかけたところで、ユウが気を遣ってか、そう言った。

 

 ――――――――――――


「そういえば、宿題の進捗はどうよ」

 ボックス席で横に座っていたユウが、絶望したような表情で聞いてきた


 その発言により陽菜も巻き添えになった、


「おい、まだ夏休みは始まったばっかただぞ」

 俺は、遠い目になっている二人にツッコみを入れる。


「おい、フミが余裕な表情してるぞ陽菜」


「なんかおかしいよなユウよ」

 陽菜とユウがおかしいものを見るような目で俺のほうを見ながら言葉を交わす。


「ん?どういうことだ?」

 俺は何がおかしいのか自分でも分からなかった。

 ただ、少し馬鹿にされてるような気がした。


「お前、じゃあ、宿題どこまで進んだんだよ」


「えーと、三分の一ぐらいか?」


「「はぁぁ!?」」

 陽菜とユウの声がハモった。


「え?なんかおかしいとこあったか?」

 俺はもっとわからなくなる。


「8月の後半になるまで、宿題に手を付けなかった、あのフミが?」


「始業式当日の朝に宿題を終わらせていたあのフミが?」


 陽菜とユウが本当に俺かどうか確認するついでに、さらっと馬鹿にされた気がする。


「あ、そういう事か」


この時、理由に気付き、原因も思い出した。

 毎回宿題のことを聞くと表情が険しくなる俺が、珍しく余裕の表情だったからだろう。


 去年まで俺は宿題は最後までやっていなかったのだが、今年はやっている、これが余裕の理由だ。


 客観的にみると確かにおかしいな、、


 普通、高校に入ったから心機一転したといえば納得されそうだが、あいにく、勉強に対しての意識は変わっていない。

 そのことを二人とも察しているだろう。


 正確な理由としては、桜と一緒に居ようと思い、ゲームに誘ったのだが、

 桜に宿題しなきゃダメと言われ、『じゃあ一緒に宿題すっか』となっただけだ。


 うん、本当にそれだけだ。

 

「いや、ちょっと宿題進める機会があってな」

 俺は理由をはっきり言ったらダメな気がして、適当に濁して答えた。


 まぁ、当然深掘りされたわけで、理由をすべて自白させられた。


 その間、陽菜と桜の間には火花が散っており、クーラーが効いているはずなのに汗が止まらなかった。


 ―――――――――――


 なんとか生きた心地のしない、車内から出て、目の前に広がる青


「やっと、ついたー」

 陽菜が声を上げる


「前に京都に行ったときより時間がかかったね、フミくん」

 桜が周りに聞こえるはっきりとした声で俺に話しかける。


 その声を聴いた陽菜は、桜をにらむ、

 それに対し桜は勝ち誇った表情を陽菜に見せつける。


 あの、桜サン?絶対狙ってますヨネ?


「フミくん、そうですよね?」

 桜は表情を変え、俺に肯定を求める。


 おい!桜、そんな可愛い表情で残酷なことしようとするな!


 さっきから陽菜が俺の方をめっちゃ睨んできてるから、


 これ本当にやばいやつだから

 俺、多分陽菜に殺されちまうYO!


 どこからかHIPHOP魂が出た気がするが、それは今はどうでもいいYO!


 だが、ここでそれをツッコむと睨みだす人数が一人増えてしまうため、、、、


「あぁ、ああ、そうだな、、」

 というしかなかった。


 陽菜は俺のほうににらみを強めたが、気にしないことにした。


「じゃあ、いこっか」

 桜は満足したようにそう声を上げた、そこにトイレに行っていたユウが帰ってくる。


「なんか、雰囲気どうした?」

 ピリついた雰囲気に気付いたユウは首をかしげながら聞いてきた


「何でもないよ」

 陽菜はムスッとした顔で言った、明らかに不機嫌だった


「いや、絶対なんかあっただろ」

 ユウはもっと踏み込む、場の空気のピリ付き度が少しUPした。


「そんなことより、早く海行こうぜ」

 俺はその空気に耐えられず、海へと駆けだした。






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