二話【懐かしき未来】
何はともあれ懐かしい顔に嬉しい惣一郎は、中庭の食堂にゾロゾロと降りて行く。
食堂では、凄い量を食べているベンゾウ達を遠巻きに見る村人が囲んでいた。
口の中の物を撒き散らしながら声を上げるミコ。
「だんば!」
ミコと競う様に食べていた対面のベンゾウの顔に、ご飯粒が飛ぶ。
「久しぶりだな、ミコ! それにガオ!」
「元気そうじゃないか旦那」
「ガオ!」
顔の食べカスを拭い、立ち上がるベンゾウの頭に、惣一郎の拳骨が落ちる!
「相談ぐらいしろ! ベンゾウ」
「はぅ〜」
そこに長い黒髪に前髪の一部が白髪のツナマヨが現れる。
「まぁ、実際危なかったではないか、許しておやりな」
「ツナマヨ……」
長い刀を腰に下げ、姿勢良く凛と立つその姿は、以前と変わらない物だった。
いや、少しシワが増えたか?
首元から古傷を覗かせるワイルドなお姉様。
そう考えるとミコは昔と変わってないな……
ベンゾウと同じ獣人なのに……
ガオも違いが分からん。
「ガブガや他のみんなは?」
「ガブガは腰やって引退した」
「フジンカガイライもトーマの引退を機に解散したのだ。エルとギコルは仲間を集め違うチームで動いているのだが、今回連絡がつかなくてな」
「そうか8年か…… みんな変わるわけだ」
「ツナマヨも今やギルドに欠かせない、ギルドマスターなんだぜ! ビルゲンなんて女王様だぞ」
マジか!
「ああ、ゼリオス達も今や国に使える騎士だ」
そこに割って入る大きな白い体。
「惣一郎、肉だ! わざわざ来てやったのだ、あの肉を食わせるのが礼儀という物」
よだれを垂らす大きな犬神。
「クロ…… クロも大きくなったな……」
だが可愛くない……
久しぶりの毛感触を感じようと手を伸ばす惣一郎に、見覚えのある杖が前を塞ぐ。
「お姉様は! お姉様がいると聞いて来たのだ。何処にいる!」
フードの中から険しい顔のピノが、惣一郎に冷たい目を向ける。
「やめろピノ! アタイの旦那様に失礼は許さんぞ」
後ろから杖を握る弁慶。
惣一郎が手を挙げ、弁慶をなだめる。
「その事でみんなに話がある」
惣一郎はみんなに今までの事を、詳しく話し始める……
その頃、大陸では。
「貴様! 誰も居ないじゃないか」
「いや、あれ? まだ渡る時期じゃないはずなんだが……」
赤い岩場にヒョロリと生えた一本の大きな木の上に集落があり、訪れていたキッドとスワロが、誰も居ないその集落跡に呆然と立ち尽くしていた。
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