三話【わがまま?】

「一夫多妻、それは強い男を独占させまいと、世の女性が作り出した愛の掟! 私達奴隷は、そんな掟からはみ出したモテない男の為に売られ、生きる希望も失くした者達です! ですが運命は今、私達に強く生きろと勇者をこの世に遣わしてくれたのです!」


「「「「「 おおおおお〜 」」」」」


「惣一郎様、ありがとうございます! この場を借りて心からお礼を言わせて下さい!」


なんじゃコレは……


ローズの話術に、泣いてる子までいるぞ……


「待て待て、で、なにがしたいのよ?」


「ですから、村の女性はいつでもOKと……」


「アホ! 付き合ってられん」


椅子から立とうする惣一郎に、木の根が伸び、椅子に縛りつけられる。


「アホはどっちや! 逃さへんで」


「なっ! ドラミ」


「まぁまぁ、惣一郎様。皆感謝してるんですよ」


ハクが細い目で語り始めると、ローズが遮り司会を続ける。


「はい! ではそう言う事で、惣一郎様にはこの中から正妻を決めて頂きます! その上でルールを先にお伝えしておきます!」


ルール?


「まず、第一に正妻と言えど、他の女性との関係を止める権利はありません! 愛人を作る事は自由です」


それ意味あるのか?


「第二に、毎年正妻を決める大会が行われます。したがって正妻でいられる期間は1年!」


はい?


「第三に……」


「待て、最初の第一回って、そう言う意味か!」


「ええ、チャンスは皆に平等に!」


「そんなんええ! んで、どうやって決めるねん!」


「ドラミさんはせっかちですね〜 まぁ、良いでしょう!」


いいのかよ……


「惣一郎様の理想を聞き、それに近い人が見事、正妻の座を手にするのです!」


「「「「「 おおおおお〜 」」」」」


興奮するドラミとミネア。


ジルとマチリナは、本当に理解してるの?


ベンゾウは料理に夢中だし、スワロは…… 


寝てる?


姿勢良く座るスワロ。


だが、目を瞑るスワロの耳は下に垂れていた。


「それでは、惣一郎様! 正妻に最も相応しい条件をお聞かせ下さい」


「あんな〜 正妻正妻って、ひとりを特別扱いしろって事なのか? それともこの世界の習わしで、指輪の交換でもするのか?」


「そう言われると、そうですね…… 正妻っておっしゃる通り、特別扱いするって事なのかしら?」


「みんなの事は大切な仲間、家族だと思ってるし、特別って意味では、ベンゾウとスワロとは今回、確かな繋がりが出来た。特別な女性だと思ってるし、今ここにいない仲間にも近い感情を持ってる」


食べるベンゾウの手が止まり、スワロの耳が動く。


「ひとりに絞る事なんて俺には出来ない。優柔不断で申し訳ないが、他所の世界から来た俺には、子を作る事も出来ないし、恋愛経験もほとんど無い俺に器用な真似は出来ない」


「ご主人様……」


「主人……」


「申し訳な…ぎぃ!!」


勢い良く抱きつく、ベンゾウとスワロ。


真剣に謝る惣一郎に、罪悪感を覚えるローズ。


地球なら、ひとりに決められないと煮え切らないゲス発言に、キュンとする村の女性達。


「せやな、恋愛は自由や! ウチがええならそれでええちゅう事、忘れとったわ」


するとミネアが、


「惣一郎様、困らせてしまい申し訳ありません。私も惣一郎様に特別に思われる様、頑張ります」


っと、縛られた惣一郎に抱き付く。


正直、惣一郎は愛想尽かされるかもと思っていたが、真逆の反応に戸惑っていた。


あれ… 結果オーライ?


せめて、盛り上がっていた雰囲気だけでもとその後、村人全員に高級焼肉を振る舞い、誤魔化す惣一郎だった。


美味い焼肉を絶賛する声の中、遠くから細マッチョのジャニーが頬を赤く惣一郎を見つめていた。



あっごめん、その可能性は絶対無いです……







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る