七話【赤面勇者】
「ノイトアランって何よ……」
惣一郎は向かって来る巨大な厄災[ゴホンヅノカブト]に向かって、回転する槍を投げ込みながら、スワロに話しかける。
真っ黒な頭部に5本のツノを持つ、羽だけが燻んだベージュの巨大な厄災。
その前脚2本の付け根に槍が突き刺さると、頭部を下げ地面を削りながら滑り止まる!
「良い名前だろ、魔を統べる者って意味なのだ」
喋りながらスワロは、銀の杖を抱えげ上げ、厄災に青い炎槍を無数に刺す!
燃えながらギシギシと暴れるゴホンヅノカブト。
「ふざけんな、勝手に変な名前付けやがって!」
歩きだす惣一郎は幻腕を出し、怒りそのままに厄災の顔を殴り上げる!
顔を潰しながら巨大な厄災が仰け反り、胸を見せると、
「なに、カッコ良いでは無いか!」
っとスワロも喋りながら、厄災の胸に光剣を何本も突き刺さす!
そのまま勢い良く、仰向けに倒れる厄災!
ひっくり返り脚をバタつかせる厄災に、更に惣一郎の槍が数本刺さる!
「どこがカッコいいんだよ、恥ずかしいわ!」
スワロは目を閉じて集中すると、空を黒い雲が覆い出し、ピカピカと光り出す。
「主人のつける名前は意味不明すぎるのだ!」
振り下ろした杖に従い大きな雷が、巨大な蟲に刺さった惣一郎の槍めがけて光の線を空と繋ぐ!
ドッゴーーーーン、ゴロゴロゴロ。
腹に響く大きな音が、街の人々にも届く。
厄災は煙を上げ、動かなくなっていた。
「アホか、名付けに関してはお前より上だわ!」
惣一郎は巨大な厄災を収納すると、街の崩れた壁の内側へと戻って行き、ポケットから種を取り出すと、壁に向けて掲げる。
すると地面から大きな蔓がいくつも現れ、互いに巻き付きながら、前より頑丈な壁を形成していく。
崩れた丸太の残骸を収納し、何も無かったかの様に歩きだし、街の人々の前に立つ惣一郎。
街の人々は皆んな、何が起きてるのか理解が追いつかないアホみたいな顔で、惣一郎に注目する。
注目され、見る見るまた赤くなる惣一郎。
隣で膝を突くスワロが、惣一郎の足に肘を当て合図する。
だが、一気に恥ずかしくなった惣一郎が限界を超えたのかスワロの頭を掴み、瞬間移動で消える!
静まり返る街の人々……
そんな中、エルフの少女が声を上げる。
「ゆ、勇者様! 勇者ノイトアラン様!」
…………
………
「「「「「 おおおおおおおお! 」」」」」
少女ミネアもまた、真っ赤な顔だった。
大きな歓声が街を包む中、離れた壁際の木々の中に入って行くふたり。
「主人よ、話が違うでは無いか!」
「アホ! 恥ずかしいわ」
「あそこで演説をする予定だったのに、今からでも戻ろう!」
「絶対にやだ!」
そこにドリーも現れ、
「何じゃ、小心者じゃの〜」
っと、憎まれ口を挟む。
「うるせ! 壁まで壊すなんて!」
「壁があっては見えぬでは無いか?」
遅れてツリーハウスに入って来るミネア達。
「「 勇者様、カッコ良かった! 」」
「惣一郎様、私が恥ずかしかったじゃ無いですか!」
「知らん!」
取り敢えず無事、厄災は倒す事が出来た惣一郎達であった……
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