五話【ミネアのシナリオ】

のんびりと湯船で足を伸ばす惣一郎。


街を眺めながらひとり、ゆっくり浸かっていた。


「ふぅ〜 癒される……」


夕陽が街に長い影を落としていた。


そこにしれっと入ってくるスワロ。


「ひとりで考えたいって言ったよな?」


「魂で結び付いているからな! 無理だ」


あっそう……


長い髪を束ね、恥ずかしげも無く入ってくるスワロ。


「まぁ、厄災退治は隠してる訳じゃ無いから、焦らなくても話は広がるんじゃないか?」


「変に話が広がるより、最初に情報操作は大事って話だろう。私はミネアの話に賛成だぞ」


まぁ、分からなくも無いが……


柄じゃないのよね〜




風呂を出て、熱った体にビールを流し込む。


「ぷはぁ〜 美味い!」


スワロも飲む為、瓶ビールが最近のお気に入りだ。


コップになくなると、注いでくれるスワロ。


「夕飯はなににするか?」


「「 ハンバーグ! 」」


リビングのソファーにすっかり居着いた、エルデとハイデ。


「最近ハンバーグばっかじゃん」


「美味い!」


「美味い、大事!」


そうですか……


じゃ和風にするかっと大根をおろし始めると、手伝うとふたりの子供に取り上げられたので、惣一郎はひき肉を捏ねくり始める。


「手伝います」


っと、テルミナとマチリナも現れる。


なんだかんだと、気が利く姉妹である。


「そう言えばドリーは?」


「陽が落ちたので、そろそろ来るかと」


中庭で日光浴に夢中だったのね……


言った側から現れるドリー。


「戻っておったか惣一郎よ!」


「ああ、結構前にね」


「惣一郎よ、大きいのが向かって来るぞ」


「なに、蟲の話?」


「他になにがあるのじゃ、気が付いたらすぐに言えと言ったのは其方じゃろ」


「まぁそうなんだが…… っで? どの位でここに?」


「ここまでは来ないじゃろうが、朝には南西の大群と鉢合うじゃろ」


潰し合ってくれれば儲け物なんだが。


そこに風呂から出て来たミネアが、


「惣一郎様、好機ですよ! その大群が負ければ街に来るかも知れません」


するとスワロまで目を輝かせ、


「それで、それで!」


っと、乗って来る。


「私達が事前に街に言って回るのです! 勇者がルルリカを襲った蟲を倒したと」


そこに、次女セリーナまでが乗って来る。


「それで、事前に大群が負ける様にすれば」


「なるほど! あらかじめ数を減らしておけば大群の方が負け、大型は近くの街を襲う!」


「そうです! そこで街の人達の目の前に颯爽と現れ蟲を倒せば、勇者と魔女の話が広まると」


「その前に避難して、誰も居なくなるんじゃないか?」


「大きな街です、全員は避難はしないでしょう。目撃者がいればいいのです!」


するとドリーまでが、


「ならば転移陣を使えなくしとけば、全員見るじゃろ!」


「それです!」


「なにが「それです!」だよ! 発想が危ないぞ」


「いや主人よ、ドリー殿ならドアの内側に蔓を出し、開かなくする事は容易い!」


「それです!」


おいおい……


「姉様、ならば壁もよく見える様、一部破壊しては!」


「やり過ぎです!」


あぁ、常識はあるのね……


盛り上がる女どもを無視して、ハンバーグを焼き始める惣一郎だった……







翌朝、惣一郎は森の中で殺虫スプレーを撒いていた。


バタバタと倒れていく大きな蜂。


スワロも慣れたもんで、大きなバッグにパンパンにスプレーを入れ、どんどん倒し進んで行く。


惣一郎は蜂の死骸を収納しながら倒していった。


「主人よ、今頃ミネア達が街でシナリオ通り触れて回っているだろうな!」


「本当に上手く行くのかね〜」


「ああ! ミネア殿とは朝まで打ち合わせしたからな、完璧だ」


夕食を食べてすぐ寝た惣一郎を他所に、話は進んでいた様で、まだ暗い時間に起こされた惣一郎が渋々、朝からテンション高いふたりから逃げる様に、蜂を退治しに来ていた。


「さぁ、ちゃっちゃと倒して戻ろう! 我が主人よ」


どうでもいいが、眠いよ……







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