六話【精霊うざし】

深夜かいた汗をクリーンの魔法で綺麗にする、裸のふたり。


「主人は凄いな……」


頑張り過ぎたかな?


「こんな素敵な城を……」


あ、そっちか……


心地良い疲れの中、ぼーっとベッド脇の床を見ていると、床の一部が薄っすらと光りだす!


飛び起きる惣一郎!


スワロもシーツを纏う。


床から突然現れたのは、木で出来た人の様な影であった。


腰を曲げ、前屈みの枝で造られた様な人影が、起き上がると、木の質感そのままの女性だった。


髪の毛まで枝で出来ている。


「だ、誰だ!」


惣一郎は慌てて幻腕を出し、ククリ刀を回し始める。


「突然すまない人の児よ…… 妾は木の精霊[ドライアドリス]……」


ドライ…… 精霊?


「敵意は無い……」


無いのだろう…… あればとっくにやられてる。


「にしても、覗きは良く無いぞ!」


スワロさん、今はそれ所じゃ……


「生き物にとって至極自然な事だ、気にする事なかろう……」


「いや、こっちが気にするのよ!」


「そうか…… すまぬ、以後憶えておこう……」


「と、取り敢えず…… 服着ていいか?」





惣一郎は改めて、キッチンのテーブルでお茶を出す。


ドライアドリスは出されたお茶に興味を示す。


「毒なんて入ってないぞ」


「口にする物なのか…… どれ……」


身体から生えた枝が、器用に口元にお茶を運ぶ。


「ほぉ、染み込む……」


「そ、それで、突然現れた理由を聞いても?」


「突然現れたのは、其方らなのだが…… まぁよい話そう……」


ドライアドリスは、このツリーハウスに何百年も宿っていた精霊だと言う。


それが突然、大きな魔力を取り込み、木が喜びの声をあげているというので、深い眠りから目覚めたそうだ。


まさか精霊がいたとは……


人の短い時間だろうと気にもしなかったそうだが、夜の惣一郎達のアレがアレして、床に付いたアレを取り込んだ所、濃縮された魔力に驚き、力漲り、数百年ぶりに世に顕現したそうだ……


まさか…… 出来たとか言い出さないだろうな!


「惣一郎といったか、其方… 先ほどの精…… もっとくれぬか?」


「「 断る! 」」




折角手に入れた家に、まさかこんな変なのが憑いていたとは……


どうする…… 手放すか…… 


クソ……





すっかり様変わりした室内を、珍しそうに見て回るドライアドリス。


床に沈むと向こうの壁から現れたり、壁に溶け込むと天井から顔を出す。


神出鬼没とはまさに…… そしてウザイ!


「すまん、スワロ…… 折角手に入れた家だが、他を探そうと思う」


「そ、そんな! おのれ覗き魔め倒してやる」


やめなさい……


「それは困るぞ惣一郎…… 妾も既に、其方の精の虜じゃ」


「やっぱ出よう……」




窓に朝陽が射し込む。


爽やかな朝を迎えた惣一郎の顔は曇っていた。






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