第二章
一話【厄災の秘密】
扉を出て森の中を、しばらく歩くふたり。
「誤算だったな…… こんな森の中とは」
「視界が悪いと距離飛べないのだな」
「まぁ、空からって手もあるんだが……」
「空から?」
まぁ、のんびり行こう!
歩いてしばらく進むと、遠くで木が倒れる音が聞こえて来る。
「主人よ…… 厄災だろうか?」
「かもな……」 サーチ!
「うん、厄災だ。あれがきっと目撃があった蟲だろうが、でっかいトロールと戦ってるみたいだぞ」
「では、行くか!」
「ノリノリだな〜」
ふたりは深い森の中を、音がする方へと歩き出すが、少し進むと音が聞こえなくなる。
先には木が何本も倒れ、大きなトロールを抱え込み、吸う様に食べる蟲が見えて来た。
「魔獣もちゃんといるんだな〜 捕食されてるみたいだが……」
「ああ、聞いた話では、蟲のお陰で数は大分減っている様だが、深い森や洞窟などには、まだいるそうだぞ」
なるほど……
艶のある黒い外殻の大きな蟲。
一見カナブンの様だが、脚に鋭い棘が無数にある知らない蟲。
こちらに気付くと「カタカタカタ」っと口元の触覚らしき物を振動させ、威嚇してくる。
スワロが前に出て杖を構えると上空に、巨大な光る青龍刀が現れる。
惣一郎と本を見て、相談しあった結果だ。
叩き切るのであればこの形と、スワロの頭上に約6mの巨大な青龍刀の形の光剣が一本、ピタっと静止していた。
そこに蟲が4本の脚で起き上がり、前脚2本でスワロを捕まえようと、左右から勢いよく伸ばしてくる!
だが蟲の脚は、惣一郎の出した2枚の盾により、関節部分で抑え込まれる!
止まっていた青龍刀がクルリと回り、蟲を真ん中で下のトロールごと真っ二つに切る!
地面を切り裂き、クルリと元の位置まで来ると、光の粒となって消えていく青龍刀……
「イメージ通りだな!」
「ああ…… 凄い、凄いぞ、我が主人よ!」
やはり光剣は応用が効く魔法だ。
だが切れ味よろしく、魔石まで真っ二つになっていた。
「まぁ…… 使えるだろう」
惣一郎は蟲の死骸を収納し、トロールの方はどうするかスワロに話しかけるが、ニコニコと何の練習か、杖を振り回すのに夢中であった。
「他にはどんなのイメージができたんだ?」
「内緒だ、その都度驚かせてやる!」
それじゃ連携取れないんだが……
また歩き始めるふたり。
厄災を一撃で倒せるのが、よっぽど嬉しいのか、スワロの足取りは軽やかに、先へとどんどん進んでいく。
惣一郎は歩きながら、考えを巡らしていた。
あの、ベンゾウの小刀でも時折跳ね返されていた厄災なのだが、スワロの光剣では難なく切れ、弱く感じる……
もしかしたら、向こうの厄災は世界を渡り強化されているのだろうか?
[世界]から貰う祝福とは別に、ネットで買ったものが強化される様に、向こうでも強くなっていたのだろうか…… それならスワロもスキルは貰えなかったが、強化はされているのかも?
じゃ俺は? 向こうでも強化はされなかった……
………… あっ、食い物か!
ベンゾウ達と倒した厄災は、向こうの人や魔獣を喰っている。
スワロも惣一郎の地球産の物を食べている。
俺は、ほとんど食い慣れた物しか食って来なかったからか……
確かに異世界の回復薬は、効果大だった。
なるほど、この世界の厄災は前より弱い!
気が軽くなった惣一郎が、スワロの後を追いかけていく。
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