第16話 教師コラボ その2+衝撃の事実
「…互いに話し始めたらキリがありませんね」
「そのくらい話題に事欠かない生徒ですものね。…あの二人を同時に担当とかじゃなくて良かったわぁ」
言霊 コトバ:もういっそ殺せ。
白百合 スノウ:大丈夫?パンツ食べる?
コメント:↑俺が食う。
白百合 スノウ:↑テメェじゃねぇ座ってろ。
コメント:パンツ食わそうとすんなw
コメント:それで元気出る?
白百合 スノウ:美少女のパンツの摂取は健康にいい。自分を美少女と暗示してパンツをしゃぶってる私がいうから間違いない。
コメント:流石は雪子氏。発言してるのが女だとしても、とんでもなく気持ち悪いセリフを連発する。そこに呆れる軽蔑する。
コメント:お汁粉と味噌汁のヤツこいつじゃねぇだろうな?
残念ながら、お汁粉の子は「雪子」という名前ではない。
しかし、あのような野に解き放ってはならない変態が、あの子以外にも居たとは。
コトバさんが被害を受けないか心配だ。
一応、彼女の面倒を見ていたシェスタさんに聞いてみよう。
「…雪子さんって、他人の服でお汁粉とか作ったりしてませんよね?」
「……ノーコメントで」
「うちの生徒、呪われてるんですか?」
言霊 コトバ:やっと解放されたと思ったのに。
コメント:↑たった一文にすげぇ哀愁を感じるの俺だけ?
コメント:哀愁すご。
コメント:無駄に叫び散らしたようなコメント出さんあたり、ホンマに迷惑してたんやろうなぁ…。
コメント:↑ワイ、☆☆高卒業生。コトバ様も同じくらい先生に迷惑かけてたぞ。
コメント:その苦労知ってるなら、先生に迷惑かけないとこから始めるべきでは…?
コメント:そんな奴らの面倒見てた先生すごい。
コメント:そら過労で倒れるわ。
だから、過労の理由は生徒の受験期が原因だと言ってるだろうに。
言ってはなんだが、頭のネジが吹き飛んだ変態と、付き合うだけでこっちのIQが急落しそうなバカの相手は慣れてる。
なにせ、幼少期からそういうアホばっかり相手していたからな。
親どころか、学生時代に勤めてたバイト先の店長にも交友関係を本気で心配された程だ。
「…まさか転職先でもアホに囲まれるとは。
嫁にまたバカにされます」
「……嫁?」
コメント:おっと?
コメント:えっ……?
コメント:嫁ってなに?
コメント:↑結婚相手のこと。
コメント:↑それは知ってんのよ。
コメント:え?コイツ既婚者なの?
コメント:許さん。
コメント:死ね。
コメント:くたばれ。
あ、やべっ。口が滑った。
シェスタさんの眼光が、僕の体を貫かんばかりに鋭くなる。
ダラダラと冷や汗を流しながら、僕はなんとか話題を変えようと視線を右往左往させた。
「えーっと、その…」
「嫁ってなんですか?」
「あの、あんまりプライベートなことは…」
「……ヘイ、コトバ様。テラス先生の奥さんの情報」
言霊 コトバ:関西弁の頭がいいバカ。美人だけど、それをぶっちぎってマイナスにするレベルのトラブルメーカー。今は奥さんの仕事の関係で別居中。
コメント:絶許。
コメント:ほんま死ね。
コメント:結婚して何年なん?
言霊 コトバ:大学卒業してすぐって聞いたから、今年で10年だって。
白百合 スノウ:デキ婚?
言霊 コトバ:恋愛婚。
コメント:死ね。
コトバさんの逆襲なのか、ここぞとばかりに僕の結婚事情が垂れ流されている。
コメント欄がいつもとは別の意味で荒ぶっていく様を前に、僕がどうしたものか、と悩んでいると。
隣にいるシェスタさんの表情から、一気に笑みがなくなった。
「私、先生のこと、仲間だと思ってました」
「えと、あ、はい。教職とインストラクターという違いはありますが…」
「そこじゃありません。
三十路で独身だという点です」
「……すみません。22で結婚したんで」
「はいもう許しません殺します。
きィイさァアまァアアアアアア!!!」
コメント:同じ教職三十路独身だと思ってたのに…。許さん。
コメント:これ見てゲラゲラ笑ってる学生ども。学生の間にガッついとけよ。社会人になったら出会いなんてねーぞ。
コメント:大学までに捨てられなかったら、一生そのままだと思え。
コメント:婚活サイトに登録して15年、そろそろ四十路の歴史教師です。そろそろ諦めの境地に達してます。
コメント:↑出てきたぞ、地獄の社会人軍団。
コメント:嫌すぎるリアルを逐一ぶっ込んでくる。そこに慄く恐怖する。
コメント欄もリアルも地獄絵図だ。
荒ぶって歌舞伎のようになっているシェスタさんを隣に、僕はこの事態にどう収集をつけるかを考える。
確かに、既婚者だという情報はこれまでぶっ込んでこなかった。
前の職場でも、僕が既婚者だと知っている人間は少ないだろう。肌と指輪の相性が悪くって、指輪してないし。
仕事の関係で別居が5年くらい続いてる関係上、かなり長い間ご無沙汰だし、子供だっていない。
そのことを話せど、燃え上がる憎悪と嫉妬の炎を前に、僕は身を引いた。
「大学卒業と同時に結婚って、その人とかなりお付き合いが長かったってことですよね?
そんなリア充全開な青春を送ったってことですよね?」
「あ、まぁ…、はい」
「どんな死に方がお好みですか?
私のおすすめは圧死です」
「この人、殺意が高すぎません?
コレが聖職者とか無理ありますよ?」
コメント:コトバ様がアレな時点で今更。
コメント:雪女って設定の雪子氏も、今や年中無休で燃えてるから。
白百合 スノウ:↑観光しようぜ。場所はスネークアイランドな。
コメント:↑死ぬぞ?
コメント:圧死って一番苦しい死に方なんだって。
コメント:俺のオススメは溺死。
コメント:ワイのオススメは輪切りにされてホルマリン漬け。奥さんに郵送しろ。
コメント:↑おいバカやめろ。
コメント:シェスタの配信見てると、いっつもモラルねーコメント見るけど、今日は特別ヤベェな。
コメント:↑配信主がモラルもクソもない罵詈雑言平気で言うからな。
言霊 コトバ:ふはははは!燃えろ燃えろ!私のことをバカにした報いを受けるがいい!
コメント:コトバ様クソ楽しそうで草。
コメント:珍しく先生が追い詰められてるのホンマ草。
人のピンチを笑うんじゃない。
画面の向こうでキャンプファイアーもびっくりな火柱が上がる様を前に、僕はぼたぼたと冷や汗を机に落とす。
絶対に事務所に詰められる。
どうしたものか、と考えていると、ポケットに入れていたスマホが鳴った。
画面を見ると、家内の名前が表示されてる。
正直なところ、今すぐに拒否したいところではあるが、我が家の家計の要である家内の機嫌を曲げるわけにはいかない。
葛藤の末、僕は「嫁から電話来ました」と断りを入れ、震える手でスピーカーをオンにした。
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