第54話 同窓会~再会~

pm7時ーーー。


同窓会の会場は普通のオシャレな店だった。


【blueーshadow】英語で書いている表札も響は良いが日本語に直すと

『青い影?』なんじゃそりゃ? ーーーと思う。


煌びやかなネオンにに包まれた外観はまるでナイトクラブのような雰囲気が

かもしだされていた。



賑わしい店内はなんら普通の飲食店と変わらない。


当然のこと、お酒や料理も注文可能だ。


その他にもゲームセンターのようなちょっとしたレジャーもあるし、

大人向けのダーツやビリヤードもある。


同窓会をする場所には向かないかな…と思っていたが顔馴染みの男女を私は

数名見かけた。みんな楽しそうに自由にしている。


勿論、初めて見る知らない人達もいるが、辺りを見渡すと殆どが中学の

同級生だった。


お酒なんか注文していて、昔の面影はあるのに笑えるほど、皆 大人ぶっている。

無理に大人の仲間入りをしているようにも思える。


「萌衣、久しぶり」


背後から女性の声がして振り向くと、そこには20歳の恵衣子が立っていた。

服装と髪型のせいだろうか、、、恵衣子の幼い表情は消え大人の魅力的な女性へと

変わっていた。


「え、恵衣子? 久しぶり。めっちゃキレイになってビックリした」


「そう? ありがとう。萌衣は変わらないね」


「今、何してるの?」


「ああ、ファッション誌の仕事。出版社で働いてる」


「え、すごいじゃん。夢、叶えたんだ」


「うん、まあね…。萌衣は?」


「えっと…社長秘書かな…」


「え、マジで?」


「う…ん…。それにしても、皆、適当に自由に飲んでるね」


「元々、同窓会っていう名前だけだからね。皆、飲みに来てるようなもんだから」


「あ、ねぇ…谷野やの君、来てる?」


「ああ、うん、来てるよ。あそこにいる人」


私は恵衣子が指差す方向に視線を向ける。


谷野やの君の横顔が私の視野に入り込んできた。


谷野やの君だ、、、、


その人は中学の時の卒業アルバムに載っていた谷野やの君だった。


私はゆっくりと彼に近づいて行く。


そして、私は彼の背後まで来ると、その肩を2回ほど軽く叩く。


「ん?」


彼は体を半回転させ、こっちに視線を向ける。


谷野悟志やのさとし君だよね?」


「ああ…。もしかして、津山さん?」


「うん…。少し、話せませんか?」


「え……」


谷野やの君は戸惑いながら了承してくれた。


私達はドリンクバーでグラスに飲み物を注ぎ入れると、開いているテーブルまで

移動する。


何から話せばいいのだろう……。


互いに向き合って座ると、谷野やの君は唖然とした顔でこっちを見ていた。


「話って何?」


「……えっと、、谷野やの君、今、どんな仕事してるの? …かなって、、、」


「携帯電話を組み立ててる」


「え?」


「ああ、今は最新型のスマホかな…」


「ああ、昔さ卒業文集を書いてる時に『将来の夢は』って項目があって、

私、隣の席の谷野やの君の用紙を見てさ『小学校の先生』って書いたことが

あったんだ(笑) 」


「…知ってる。だから、俺、『小学校の先生』だってワザと書いたんだ」


「え…」


「ホントは『タイムトラベル機を作る発明家になりたい』なんて書いたら、絶対、

みんなドン引きするなって思ったから…」


「え…」




「津山さんは? 今、何してるの?」


「私は…今、藤城コーポレーションで社長秘書をしている」


「……」


一瞬、谷野やの君の動きが止まった。

ーーーような気がした。


私は谷野やの君に視線を向ける。


谷野やの君?」


俯き加減で一点を見つめている谷野やの君の瞳孔はオロオロと揺れていた。


「じゃ,津山さんは藤城翔流ふじしろかける君のことを知ってるの?」


「え?」


谷野やのはスマホのアルバムアプリから翔流かけると一緒に

写っている画像を出してきてテーブルに置く。


「!!」


その画像を見て私は鳥肌が立った。 




萌衣の脳裏に浮かんだ仮説が一本の線で繋がった。




翔流かけるは高校の時の親友だったんだ。一年前に事故で亡くなった、、、」


やっぱり……!!


どういう意図で翔流かける君が私の前に現れたのかはわからないけど、

母の過去へ一緒に行った男の子は間違いない翔流かける君だった。


「もしかして、谷野やの君は今もタイムトラベルの研究をしてるんじゃ……」


翔流かけるが死んで、、増々時間を戻せたらって…そんな思いが強くなっていって…

でも、上手くいかなくてさ…全部失敗に終わってる…」


翔流かける君は谷野やの君が作った試作品段階のタイムトラベル機(つまりスマホ式デジタルタイムトラベル)の機械を使ったんだ、、、


谷野やの君が作ったタイムトラベルは失敗作じゃなかったよ…」

私はボソッと呟く。


「え? それ、どういうこと?」


「ああ、えっと…それは…夢をあきらめなければ、いつか現実になるっていう

ことかな」


「津山さん…」


「もしかしたら10年後、20年後の近未来、谷野やの君は発明家になって

ノーベル賞とかもらっているかもよ…なんてね」


「はっはっ…(笑)。津山さんって変わってるね」


「‥‥そう…かな…」


〈ホントに谷野やの君には感謝してる。谷野やの君が作ったタイムトラベル機がなかったら、私は翔流かけるにも会えなかった〉


だけど、私は翔流かける君と会ったことは言わなかった。




だって、このことは私と翔流かける君の

秘密にしておきたかったから…






失ってしまった過去は取り戻すことはできない……




でも未来は…今をどうやって生きるかによって変わってくると思うから……





今、生きている延長線上に未来はきっと繋がっている―――ーーーー。




私はそう思う、、、、、、。

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