第15話あまのじゃくの恋(お好み焼き屋・ふくちゃん)
放課後、私達はお好み焼き屋へと向かう。
前方を歩く葵ちゃんと
横目で見た。
下がり私の隣に来る。
私達はいつ飛ばされてもおかしくはない。こうして歩いていても何かのきっかけで
また別の世代へと移動する。過去か未来か?
それは私達にさえわからないのだ。
もしも私達がここで消えても雪子ちゃんや葵ちゃん、
何事もなかったように歩き続けるだろう。
私達が消えた時点でこの世代に存在していた私達は抹消され洗脳が解かれる。
そう、最初から私達はこの場所にいなかったことになる。
「津山さん…」
「……?」
「そろそろ、準備しといた方がいいかも」
「
「…はっきりとはわかんないけど…。でも、未来の僕が作ったタイムスリップは
短い期間しか同じ場所に滞在できない物だって思い出して…」
「まあ、確かに…。この世代に来る前は1日くらいしかいなかったし」
でも、あの時は急に頭が痛くなって、それから地震がきた。
何か時空が変わる予兆みたいなものがあった。
今、地震が来たらどうなるのだろう。建物は大丈夫だろうか?
だけど、そんな予測は不可能だ。だって、それは思いがけず突然にやってくるから。
「津山さん、雪子ちゃんともっと話しといた方がいいんじゃない?
もしかしたら、高校生の雪子ちゃんにはもう会えないかもしれないんだよ」
だけど、話するって何を言えばいいのか わからない…
もしも、この世界で雪子ちゃんと
未来で康介君と雪子ちゃんが結婚してるってことは、その間のどこかで2人は別れるってことでしょ。じゃなきゃ、未来は歪んでしまう。
私の存在自体がなかったことになってしまう。
「ううん。いい…」
多分、それは雪子ちゃん本人が気づいて言わなきゃダメだと思う。
母からもらった手紙には【好きな人に好きだって言えなかった】って書いていた。
だとすると、この世代の雪子ちゃんはあまのじゃくのままだ。
「
「ああ、一応な。でも
「取りあえず、教師にでもなろうかな」
「じゃ、
「うん、そのつもり」
〈すごっ。
嘘ばっかりのくせに。
「
じゃあさ、
「アオはファッション誌の会社行くんだろ? ファッション誌の編集
してみたいって言ってたじゃん」
「うん。そうだけどさ。萌衣ちゃんは?」
「ああ、私は受かればどこでもいい」
—―なんて、急に葵ちゃんがふってくるからビックリした。
私は何も考えていなかった。
「なんか、雪子ちゃんみたい」
「え?」
「雪子ちゃんも受かればどこでもいいとか言ってたよね」
「ああ、うん…」
「ユキは夢とかねーのかよ。つまんねー女だな」
「うるさいな。ハルに言われたかないよーだ」
この時代の雪子ちゃんはまだ絵本作家の夢を見つけてなかったんだ。
「じゃ雪子ちゃん、絵本作家とかどう?」
私は聞いてみた。
「あー無理無理。私、絵、めっちゃヘタクソだもん」
「だよなー(笑)。ユキの絵は幼稚園児以下なんだぜ」
「ぷいっ。ハルも絵ヘタクソじゃん」
雪子は膨れっ面の顔をしてそっぽを向く。
『まるで小学生のケンカだな』
『うん…』
私と
気づいたら私達は【お好み焼き屋・ふくちゃん】の前で立ち止まっていた。
ドアの前に掛けられた【本日、臨時休業いたします】の看板が目に入る。
「えー、うそー。今日、休みじゃん」
「なんか、あったのかな…」
「これからどうする?」
「私は帰るよ」
「じゃ、俺も帰ろうかな」と、先行く雪子と
「もー、
と、葵が2人に駆け寄っていく。
その時、湿った風が私の足元にひんやりと漂ってきた。
「ん?」
ふと、私は【お好み焼き屋・ふくちゃん】の看板に視線を向ける。
少し隙間が開いたドアが気になった私は静かに歩みよりドアを開けた――
〈開いてるーーー〉
なんだか嫌な予感がした私はそっと店内へと入って行く―――ーーー
そして、萌衣に視線を向けた
入って行ったのだった。
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