第14話あまのじゃくの恋(恋の5角関係)

私達はあれから更に10年後の高校2年生にタイムリープしていた。

そして、私も谷野やの君も母の同級生となり制服を着て、一緒に授業を受けている。

なんだか、高校生からやり直しているみたいだ。だけど、私が過ごしてきた

高校時代とは違った景色が今、 目の前にある。同級生の子達が母親世代の

人達ばかりって なんか変な感じがする。話も合うのか心配していたが、

それなりに意外と合うものだと不思議な感覚になる。

色褪いろあせた校舎も、古い教室も、全ての風景が私が生まれる前の

光景だった。これが母の青春時代なんだ。

ツンケンした気が強い母の子供の頃も可愛かったが、思春期を迎えた高校生の母もなんだか可愛いい。



多分、小学1年の時から葵ちゃんは春陽はるき君が好きだった。

葵ちゃんの視線を見ていればわかる。あんなに喧嘩ばかりしていた

雪子ちゃんと春陽はるき君は少し距離を置いているみたいだった。

多分、母(雪子ちゃん)がずっと好きだった男の子は春陽はるき君だ。

そして、春陽はるき君も雪子ちゃん(母)のことが好き――ーー。

なのかな? って思う情景が何度も見られた。互いに視線で意識している、

強引に葵ちゃんがアタックしている反面、雪子ちゃんは自分からはバンバンいく

タイプではない。それは春陽はるき君だって同じだ。だから、2人は互いに

反発し合うのだろう。そして、その想いは大人になってからも変わることなく

素直に言えないまますれ違ったのだろう。

見ていれば、それくらいは想像がつくーーー。


じゃ康介君(父)と雪子ちゃん(母)の関係は? 

いつから2人は結婚に結び付いたんだろう…。


それに康介君(父)と千恵子ちゃんの関係は?


とりあえず友達のフリはしているけど、今更、聞けるわけもなく、

私はみんなの会話についていくのが精一杯だった。


その会話からわかったことは雪子ちゃんと葵ちゃんは親友になっていた

ことくらいだった。谷野やの君の話だと康介君と雪子ちゃんは元々

家が近所で幼馴染みたいなものだったらしく、康介君はいつも雪子ちゃんの

ことを気にかけていたらしい。千恵子ちゃんはそんな康介君のことを小学校の時から

一途に想っていたらしい。



恋の5角関係?


雪子ちゃんより2つ年上の康介君と千恵子ちゃんは同じ大学に行っているらしい。


この前のカラオケボックスでは先に受付をしていた康介君と雪子ちゃん、千恵子ちゃんの3人の後に葵ちゃんと春陽はるき君が偶然 来店して来て、たまたま空いている部屋がなくて、『知り合いです、同室大丈夫ですか』と、葵ちゃんが強引に受け付けスタッフに頼みこんで同室になったらしい。


そこへ、たまたまタイムリープした私達が合流したのだ。



春陽はるき君の家柄は大手不動産業界のトップに立ち、大都市の殆どのマンションを春陽はるき君の両親が経営している。いずれは春陽はるき君も父親の跡を継いで会社の社長の座が約束されているハイスペック男子だ。高校も名門校に入学させたかった両親に反発し、『せめて、高校だけはみんなと同じ普通の高校に行かせて』と頼む春陽はるき君の熱意に負けて両親は許したのだった。



私と谷野やの君はベランダに出て青空を眺めていた。

教室ではやっぱり春陽はるき君は女子にも男子にも人気があり、春陽はるき君の机の周りには男女関係なく集結していた。雪子ちゃんの机には葵ちゃんいて、

遠くからだと何を話しているのかわからないけど、葵ちゃんの口の動きからして

春陽はるき君って、やっぱりカッコいい、、』に対して、

『そうかな? ハルはただの女好きだよ』と言っている雪子ちゃんの唇の動きを読み取る。


はっはっはっ……。やっぱり、母(雪子ちゃん)はあまのじゃくだわ……


「どう? 自分のお母さんと同級生の気分は?」

谷野やのが萌衣に視線を向けて言う。

「なんか、複雑な気分だよ」

「だろうね…」

「見ててイライラする。私なら好きな人ができたら絶対、はっきり好きだって

言うのに…」

「ぷっ。よく言うよ」

「え?」

「俺がいた未来ではキミも同じだったけどな。ホント似た者親子って感じ(笑)」

そう言って、谷野やの君は笑っていた。

「ま、さか(笑)」

私は自分の未来が気になり、その後、谷野やの君に追及したが谷野やの君は答えてはくれなかった。


もしかしたら谷野やの君もまた先端技術を持つハイスペック男子なのかも

しれない…と、私は谷野君の横顔を見て、ふと思った。

そういえば谷野やの君は昔 から機械系に強かった気がする。

中学の時は友達の壊れた携帯電話をパッパッと直していたし、パソコン室で調べ物を

していた時に急に変な画面になった時だって、ウイルスを撃退してくれた。

なのに、『なんで、小学校の先生になりたかったんだろう?』

…って、今、思い出した。

今の谷野やの君を見てるとタイムリープを考えている方がしっくりくる。


「ねぇ、谷野やの君はなんで小学校の先生になりたかったの? 

今の谷野やの君を見てたら、なんかピンとこ^_^なくて…」

「卒業文集のこと言ってるの?」

「う、うん…」

「半分はホントで半分は嘘ってとこかな」

「え?」嘘?

「なんか、先生って響きがカッコいいじゃん。それに、将来の夢だもん。夢はでっかくてもいいかなってさ。約束された将来なんてつまらないでしょ」


それを私が見て書いたのか、、、

まあ、確かに。谷野やの君が言うことも

一理ある。



ベランダのドアが開き、葵ちゃんと雪子ちゃんが顔を出す。

「萌衣ちゃん、帰りにお好み焼き食べて帰らない?」と、葵が言った。

「あ、うん…いいけど」

「ついでに谷野やの君も行く?」と、辛口口調で雪子が言った。

「え、僕、ついでなの?」谷野やのも冗談交じりに聞き返す。

谷野やの君、谷野やの君、ちょっと…」

葵が手招きで谷野やのを呼ぶ。

「ん? なに?」

「あのさ、春陽はるき君も誘ってくれる?」

「え、自分で誘えばいいじゃん」

「あんな大勢いる中で誘えるワケないじゃん」

「でも、この前は一緒にカラオケ来てたじゃん」

「あれはたまたま一人の時に声かけたの。めっちゃ勇気いったんだから。

他の女子に見つかったら大変なんだよ」

「そんなもんかね」

「そうなの」

「ほら、谷野やの君って誰にでも愛想がいいから、ね、お願い」

「ったく、しょうがねーな。わかったよ」


この時代、谷野やの君は結構、頼りにされてるんだ。


私が知っている谷野やの君はどっちかというとクラスの端にいる

タイプの男の子だった。


私が同級生なのに谷野やの君の顔を思い出せない程、印象がなかった。


隣にいる谷野やの君は本当に谷野やの君だろうかと不信感さえ覚える。


けど、なんだかんだ言っても、この時代の谷野やの君はいい奴なんだよね。


葵ちゃんに頼まれ仕方なく谷野やの君は教室に続くドアを開ける――。

「おーい、春陽はるきー、帰りにお好み焼き食って帰ろうぜ」

その叫び声は遠くにいる春陽はるきまで聞こえ、

「了解(笑)」

と、春陽はるきは『ok』の合図を送る。


ドキッ


あの笑顔は反則だ。私でも恋に落ちるわ。


ふと隣を見ると、葵ちゃんも雪子ちゃんも頬を赤く染めて、目がハートに

なっていた。


春陽はるきの視線が雪子に向くと、雪子はその視線を逸らす。


そして、私は娘としてこの恋を実らせてあげたいと思ったーーーー。



 










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