第37話 オリジナル鉱山へ
「ユウとリーサ、ぱわーあーっぷ!!」
拳を振り上げ、万歳するリーサ。
「パワーアップ?」
魔法学院でブレンダと”お話”(リーサ談)して数日後、俺たちはオックスフォード市郊外にあるオリジナル鉱山へ向かっていた。
イギリス政府からようやく立ち入り許可が出たのだ。
ロンドン市内でレンタカーを借りた俺たちは、ダンジョンを監視する守衛所で身分証の確認と綿密な身体検査を受けた後、ようやくオリジナル鉱山が望める場所までやって来た。
この辺りは産業革命時代には炭鉱であり、オリジナル鉱山は坑道の入り口にほど近い場所に直接固定されている。
「こないだみたいにモンスターが”溢れて”来ても、対抗できるようにブレンダおねーちゃんに準備してもらったの」
魔法学院の制服の上から革製のプロテクターを付けたリーサ。
そういえば身長ほどあるギターケースを背負っている。
「これはね……じゃーん!」
リーサが取り出したのは、一振りのショートソード。
「……さすがに刃は入ってないか」
「捕まっちゃうからね」
凝った装飾が施された柄に比べ、刀身はシンプルな軽金属。
重量も軽く、叩き切ることも出来そうにない。
「これにね、”魔法”を掛けるの」
「”エンチャント”!」
「!!」
ヴィイインッ
刀身が蒼く輝く。
「リーサ、この魔法は!?」
「うん、魔導書から再現した強化魔法」
「あ、心配しないで。
ブレンダおねーちゃんが改造してくれたから、マナの消費は最低限になってるよ」
「それならいいけど……」
本来なら、魔力とマナの消費量が大きい中級魔法だ。
今のリーサなら倒れてしまってもおかしくないが、ブレンダが何かしてくれたらしい。
「こーすれば、スキルの発動を押さえながらモンスターを”斬れる”から。
もう無理しなくていいよ、ね?」
にっこりと微笑むリーサ。
「ああ、頼りにさせてもらうよ」
やっぱり俺の相棒はリーサしかいない。
俺はリーサの頭をガシガシと撫でる。
「えへへ♡
もう置いてきぼりはなしだよ?」
「しょうがないな」
「あふれたモンスターにも対処可能ですか。
いよいよユウさんも最強ですね」
「言いすぎだって」
俺はショートソードを鞘に納めると、オリジナル鉱山の入り口に向かった。
*** ***
「ふおおお……!」
キラキラと輝く水晶。
巨大な鍾乳洞のような空間はすべて、七色に輝くクリスタルで構成されていた。
『ユウさん、リーサちゃん、大丈夫ですか?』
「ああ、問題ない。
現在表層、A-21地点だ」
『オリジナル鉱山のコアは、下層C-51地点にあります。
気を付けて進んでくださいね』
「了解だ」
鉱山の入り口で俺たちをモニターしているフェリナに返事をする。
「鉱山の中に入るのは俺も初めてだけど……凄い光景だな」
「とっても綺麗!!」
リーサの言う通り、壁や天井から突き出している水晶は七色に色を変え、キラキラとした粒子がリングのように渦を巻いている。
見とれてしまうほど幻想的な光景だ。
「”固定化”されたダンジョンにモンスターは出ないはずだけど、念のためステータスをチャージしておくぞ?」
「うんっ!」
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■個人情報
明石 優(アカシ ユウ)
年齢:25歳 性別:男
所属:F・ノーツギルド
ランク:B
スキルポイント残高:113,200
スキルポイント獲得倍率:1230%
--->増減予測:
剣技スキル+10%、魔法スキル-25%、被ダメージ-N/10%、与ダメージ+N/10%
口座残高:6,710,000円
称号:ドラゴンスレイヤー
災害迷宮撃破褒章
■ステータス
HP :1500/1500
MP :300/300
攻撃力 :400(+300)
防御力 :400(+300)
素早さ :300
魔力 :100
運の良さ:100
■装備/スキル
武器:ダマスカスブレード(300×5回)
防具:ダマスカスメイル(300×5回)
特殊スキル:ヒールLV4(300×5回)、攻撃強化技15%(300×3回)
デバフ回復(100×5回)、マジックシールド(100×2回)
固有装備:増幅の腕輪+
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■個人情報
アカシ リーサ・レンフィード
年齢:11歳 性別:女
所属:明石 優のパートナー
ランク:H(ダンジョンバスター見習い)
■ステータス
HP :1000/1000
MP :800/800
攻撃力 :200(+150)
防御力 :300(+150)
素早さ :200
魔力 :200
運の良さ:100
武器:チタントンファー+(150×5回)
チタンボウガン+(100×10回)
防具:ファイバーブレザー3+(150×5回)
特殊スキル:ファイアLV4(200×5回)、ブリザードLV4(200×5回)
フレア・バースト(1000×1回)
固有装備:増幅の腕輪+
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「げきつよ!!」
「ま、色々変わった所もあるから、確認も兼ねてな。
戦闘はないだろうが」
バトルが無ければダンジョンから出る際にスキルポイントとして返還されるので
実質的な負担は小さいのだ。
「そっか~、使ってみたかったけど」
「さすがにモンスターが出るなら、あんな簡易な入口とはいかないさ」
そのままではこちらの世界に影響が出てしまうので、宇宙船のエアロックのような設備が入り口に備え付けられていて、ダンジョンバスターはその設備を介してダンジョンに出入りするのだ。
「それじゃあ、歩きがてら変わったところを確認するか!」
「そうだね!
まずはここっ!!」
リーサの美しい指が、俺のステータスの一点を指す。
スキルポイント獲得倍率:1230%
--->増減予測:
剣技スキル+10%、魔法スキル-25%、被ダメージ-N/10%、与ダメージ+N/10%
「ブレンダおねーちゃんと一緒に解析を進めた結果、スキポ獲得倍率の上限が10000%……つまり100倍になりましたっ!!」
……いやもう、無茶苦茶である。
「さらにぃ。
あーきてくちゃの改善により、次に行う行動による獲得倍率上限の予測が正確にっ!!」
つまり、ほぼ自在にスキルポイント獲得倍率を操作できるようになったという事だ。
「これでユウとリーサはセレブになれる?」
「稼ぎまくれるのは間違いないが、やりすぎると怖い人が来るからな……ほどほどが大事だ」
「まるさ!!」
「よく知ってるな、リーサ」
鬼より怖い確定申告と国税局さんである。
ダンバスは基本的に個人事業主なので、年度末に確定申告が必要だ。
ただでさえ今年は家と車を買っているので、確定申告が大変なのだ。
好き勝手するのは来年からでいいだろう。
「それより、リーサお前……フレア・バーストを使えるようにしたのか?」
俺が気になったのはリーサのステータスだ。
「よくぞ聞いてくれました!!
魔法術式は再現できてたから、Bランクから使える”カスタマイズ魔法”を使ったんだ!」
「ふむ……」
”カスタマイズ魔法”とは、LV制のテンプレ魔法と違い、術式スクリプトを記述することで独自の効果を発揮する魔法スキルの事だ。
術式スクリプトにはまだ不明な点が多く、Sランクのダンバスでも使いこなしている人間は少ないと聞く。
さすが俺のリーサといったところか。
「えへへ~」
得意げにふんぞり返るリーサの頭を撫でながら、俺たちはオリジナル鉱山の中層へと降りていく。
……ウオオオオオオンッ
「……へっ?」
「……はっ?」
その時だ。
何者かの雄叫びが、クリスタルで出来たダンジョン内に響き渡ったのは。
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