第5話 スキルポイント獲得倍率の変化
「むふ~、美味しいよぉ」
ぱくぱく
サーモンにイクラ、マグロの寿司を美味しそうに頬張るリーサ。
永遠に見ていられる光景である。
「カーテンもきれいになって、おふとんもふかふか。
ユウがいっぱい頑張ってくれたおかげだねっ」
少しだけきれいになった俺たちの寝室。
臨時収入で、いい加減古くなっていたカーテンと布団を買い替えたのだ。
「えへへ、ありがとう!」
ぽふり、とリーサが膝の上に乗ってくる。
「ユウも、あ~ん」
ぱくっ
リーサがあーんしてくれた寿司を口いっぱいに頬張る。
超美味い。
世界一美味い。
「ふふ、大げさだよ~」
1日かけて10個近いHランクダンジョンを狩った俺たちは、豪華な夕食タイムを過ごしていた。
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■個人情報
明石 優(アカシ ユウ)
年齢:25歳 性別:男
所属:東兵庫第25ギルド
ランク:F
スキルポイント残高:5,820
スキルポイント獲得倍率:お@な&%
口座残高:915,800円
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現金報酬は微々たるものだが、スキルポイントはトータル4000近い黒字で、これは先月の収入の3倍以上になる。
これだけのスキルポイントを投入すれば、Bランクダンジョンすらクリアできるだろう。
「まあ、そんな危険を冒す必要はなさそうだけどな」
スキルポイントは100ポイント=10,000円の公定レートで取引されるので、低ランクダンジョンを狩るだけでも我が家の生活は安泰かもしれない。
「ただ、毎回もらえるポイントが異なるんだよな」
「ふむ~」
リーサはいつも持ち歩いているモバイルノートを開き、表計算ソフトを見せてくれる。
Hランクダンジョン1:385
Hランクダンジョン2:210
Hランクダンジョン3:875
Hランクダンジョン4:30
Hランクダンジョン5:565
Hランクダンジョン6:280
Hランクダンジョン7:990
Hランクダンジョン8:3
Hランクダンジョン9:320
Hランクダンジョン10:770
「う~ん」
見事にバラバラだ。
通常の100倍以上もらえた時もあれば、赤字になったこともある。
「わたしの推測では」
リーサが俺のステータスを指さす。
【スキルポイント獲得倍率:お@な&%】
「スキルポイント獲得倍率に表示されている文字が毎回変わっているから。
なにかしらの要素が、乱数としてえいきょうしてるんだと思う」
「なるほど」
リーサはとても頭がいい。
小学5年生にして大学入試レベルの問題を解くほどだ。
その才能に答えようと、頑張って小中高一貫教育の私立学園に通わせている。
学費?
リーサは特待生なので、何とかなっています。
「それじゃあ、もっと上位ランクのダンジョンも狩ってみるか。
頼りにしてるぞ?」
「えへへ」
もふもふの頭を撫でてやると、銀色のキツネ耳と尻尾がピコピコと動く。
……今さらの説明になるが、ダンジョンが出現するようになってから、リーサのような獣人族やエルフなどが生まれるようになった。
いまや彼女たちが街を歩くのは普通の光景になり、ダンバスやアイドルとして活躍している子も多い。
なにより……。
「なんてリーサはカワイイんだ!」
カワイイは絶対正義である。
俺はリーサを抱きしめモフモフを堪能する。
「あうっ……もう、ユウ。
ドキドキしちゃうよ……」
俯いて頬を染めるリーサ。
おっといけない。
リーサは少しだけ特別なのだ。
「ごめんごめん、それじゃそろそろデザートを……」
俺はリーサの頭から手を離すと、冷蔵庫からプリンを取り出そうとする。
ピリリリ
そのとき、俺のスマホが呼び出し音を立てる。
『明朝0900にギルド事務所へ出頭の事……陣』
この無機質な文章は、先代からギルドマスターの座を引き継いだ陣(じん)さんだ。
ギルドでも底辺ダンジョンバスターな俺には目もくれなかった陣さん。
一体何ごとだろうか?
「まさか?」
先日ギルドメンバーが話していた求人の件もある。
にわかに不安になってくる俺なのだった。
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