天上災禍⑪
直方体と円盤、それぞれの飛行物体の底面ハッチが開き、中から一機ずつウストクが飛び出す。
「遠くに三十機ほど、サーズデの下から攻めてきているのが七、八機。上からは二機ほどといったところか。もっと大勢来るかと思ったがのう」
サタデの頭部の眼球のような部分がキュルキュルと音を立てて動く。その隣、トゥーズデのコックピットでルガルはふぅーっと息を吐いて、身体の力を抜く。
「どうする? 先行して向かって来ている十機と後方の三十機の間にはまだ距離がある」
「ほう、さては十機だと物足りんから後続の部隊が来てから参戦したいとか思っとるんじゃろ?」
「ご明察」
直方体の別の底面ハッチが開く、中からはビッグスーツの背丈をも超える大きさの、人の拳の形をした兵器が出てくる。ニヌギルの武装だ。
「儂はマドクの手伝いで来とるからの。先に行って好きなだけ沢山殺す。お主はお主の好むタイミングで参戦するがよい」
「じゃ、お言葉に甘えて」
◇ ◇ ◇
ポポポポポポポポ!
「ちょ、待って、連射、し過ぎ!!」
イークデが繰り出す光弾の連射を回避しながら、リンコは敵に向かって文句を言う。
「んむ……やはりこの時代でも我々は強い」
バシュゥ! バシュゥ!
「!!」
イークデたちの左方向からビームによる射撃が飛んでくる! 攻撃の主はニッケルのウェハーだ。社員たちは落ち着いて横に動き、これを回避する。
バシュッバシュッバシュッ!
攻撃が止んだ僅かな隙を突いて、リンコはビームピストルを連射する!
「む……」
社員たちは続けて左右にゆらゆらと揺れるように飛行しながら避けていく。
「調子に乗らないでよね!」
「俺も合わせる!」
リンコとニッケルは一気にイークデ一機との距離を詰めにかかる!
ヴォン!
リュウビの脚に取り付けられた爪からビーム刃が展開される! リンコとニッケルは高速で突撃、そのままその刃でイークデを切り裂こうとする!
「やらせはせんよ」
ゴォゥ!
突如リンコとニッケルの右方向から、巨大な物体が高速で飛来する!
「危なっ!!」
リンコとニッケルは慌てて上体を反らして、リュウビを急停止させる。間一髪、目と鼻の先を巨大物体が通過していった。
「何だよアレ。ミサイルでもドローンでもねえ」
ニッケルは目を凝らして巨大物体を見つめる。よく見るとそれに五本の指がついている。
「……手? 拳か!? またアクの強い武器だな!」
ゴォゥ!
再び飛んでくる拳型の巨大兵器をリンコとニッケルは回避する。彼らの視線の先、イークデたちのすぐ後ろに、その兵器の主がいた。
「お主らがマドクのところの社員とやらか」
「
「まあそう硬くなるな。楽しく暴れようぞ」
拳型の飛行物体――「ビッグハンド」はニヌギルの乗るサタデの横へと戻り、一度指を開いて
「アイツはアイツで変な見た目だね……デメキンみたい」
ドォン! ドォン!
リンコたちがニヌギルと対峙しているそこから少し離れた所では、サーズデの
「な、なんかやけに狙いが正確でヤンス!」
「敵の人型どもはこっちを狙わなくなったな……じゃあ出来るだけデカブツの方の攻撃はこっちで引きつけないと……ってうぉ!?」
ヤンスデスたちは必死にサーズデの砲撃を避け続ける。その間にリュウビを支給されていない他のビッグスーツ乗りたちも、サーズデを射程圏内に捉えつつあった。
「ふん、ただの雑魚どもというワケではなさそうだ」
サーズデのコックピットでマドクは不敵に笑みを浮かべる。
「だが相手が悪かったな! 四千年前、超常の文明が生み出した
ドォン! ドォン! ドォン! ドォン! ドォン! ドォン!
サーズデの側面や底面に取り付けられた何十もの砲門から、一斉に砲撃が繰り出される! ヤンスデスたちがいるずっと後方では、マンタ型飛行ユニットに乗った討伐隊の何機かが、それを食らってしまう。
ある機体は飛行ユニットを破壊されて後退を余儀なくされ、ある機体は頭を飛ばされ、ある機体は上半身を持っていかれ爆散した。
「き、キツイ弾幕でヤンス!」
ヤンスデスは必死に砲撃を避けながらサーズデとの距離を保とうとする。その隣でリュウビを装着した味方機が、胸を貫かれ爆散する!
「ヤヤヤヤヤンス……!」
味方機が撃墜されるのをレーダーや通信で確認して、ニッケルとリンコは
ゴォウ!
ポポポポポポポポ!
ニヌギルのビッグハンドによる攻撃と社員たちの光弾連射が、二人に回避行動を強いる。
「クッソ、手数が違いすぎる!」
ニッケルが冷静さを失いかけた時だった。
「
ボボォン!
突如下の方向から巨大な火球が飛来、イークデ一機に直撃、炎で包み込んだ!
「ゼ、ゼロファイブ! ぬかった、奇襲か!」
炎に包まれて地上へと
「スマン! 遅れてもうた! 押し返すで!」
その内の一機、「オールリ」を駆るショウは、続けざまに手を動かして印を結ぶ!
(天上災禍⑫ へ続く)
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