TURN.07「ジャイアント・シップ・アイアンフォートレス(Part,1)」
二人とも、思わず顔を見合わせた。あまりにも早すぎる再会に。
「いやぁ~まぁ~? レアアイテム狙いなのは分かるよ~? けどぉさぁ……何百何千いるかもわからないマッチングの中からピンポイントで引き当てるなんて事ある~? どんな奇跡よこれ、運命の出逢いとか言いたいわけぇ~?」
巨大地上戦艦襲来ミッション。ストーリー上では謎の電子生命体に乗っ取られた地上戦艦が敵に回り、人類の本拠地であるメトロポリスに接近中。
直ちにコレを撃墜せよ……といミッションである。
レアアイテムのドロップは勿論、クリア報酬もかなりのものが用意されている……のだが、このイベント。少しばかりイジワルなところがある。
「やっぱもしかしなくてもォ~、君ってボッチだったりする~?」
(ギクッ!?)
ソロで挑む。或いは誰かとペアを組んで挑む。
そのどちらかで……クリア報酬が異なるのである。
「そういうお前こそ、野良とペアを組もうとしてるあたり同じ立場じゃないのか」
一応、誰でもペアを組めるように野良でマッチングできるシステムは搭載されている。これを機に新たな出会いも経験してほしいという運営の配慮らしいのだが---。
ヴィヴィッドにはこのゲームを一緒にやる友達がいない。というか現実世界で友達が一人もいない正真正銘のコミュ障ボッチなのだ。
デリカシーゼロのストレート言葉にノックダウンされかけたが、負けじと彼は『その発言はブーメランだ』と言い返す。
「うぐっ!? こ、今回はたまたまだァッ! イベント期間は友達が用事出来て来られないから仕方なくよ!勘違いすんなッ!」
それが彼女の言い分である。必死に言ってるあたり本当かどうかは分からないが。
「ま、まぁ、そんなことはどうでもいいよね!? 今回のミッションは結構難易度高いよ~ ?足を引っ張らないようついてきてよね!? ね!? ねェ~ッ!?」
「そのつもりはない。それはコチラのセリフだ」
最初、喧嘩こそしたが----
((この人ッ……こんなにも言葉のナイフでメッタ刺しにッ……!!!))
二人は内心安堵していた。
アイテム欲しさという理由であるにしろ知らない人と組む行為には中々の勇気がいる。特に人見知りのヴィヴィッドにとっては。
このゲームでは素顔を知られることはない。どころか彼はアバター自身の顔もバイザーで隠すなど徹底。故にリアルよりは安心して喋ることが出来る。だが、やはり不安はある。
(……でもラッキー♪ コイツ、メチャクチャ強いし? 少しは楽出来そう~)
(……この人と一緒なら大丈夫! 戦って分かったけど、凄く強いもん!)
少しとはいえ交流があった人物とマッチングして良かった。かなりの倍率の幸運をプレゼントしてくれた神様には礼を言わなくては。
『ミッション・スタート。殲滅、お願いいたします』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
地上戦艦の中はかなりの広さだ。フロアの数は相当なもので、マップもダンジョン形式で何度も変更される。まさしく迷宮なのだ。
「メカが相手だろうと何の問題もなーーーしッ!!」
迷宮の中で待ち構えているのは地上戦艦内部を護衛するAI軍団。人型、四つ脚、飛行ドローンなど無数のメカモンスターが人類に牙を剥く。
「【
防御力も高く、放つ火力もそこらのザコモンスターと比べて桁違いに高い。更に一定のダメージを受けると近くのサーバー端末へ逃げ込みエネルギー補給による回復を行うなど面倒なものばかり。
「この刀は対メカモンスター専用に特化したモノだからねェ~! 防御力なんてしったこっちゃなーし!!」
しかし、そんなモンスターを相手にVi0は次々と無双する。
そうだ。マップ内情報は毎回変更されるため攻略サイトはあてにならないものの……出現するモンスターは毎回同じだ。故にある程度の対策は情報さえ集めれば出来なくはない。
「もう、いっぱぁああつッ!! 「【
Vi0が今回用意した刀はこのイベントに特化したものだ。
一撃必殺の大振りの次に放ったのは、目にも止まらぬ速さで放つ十五連斬り。高レベルのメカモンスターを木端微塵に粉砕する。
「やるなッ……ふっ、はぁあっ!!」
敵のメカモンスター達はフォーメーションを変えて射撃攻撃を行う。ガトリングガンを利用した一斉射撃攻撃だ。
ヴィヴィッドはその一斉射撃を回避する。専用のバリアスキル、そして回避スキルを駆使し掻い潜っていく。
「残らず撃ち落とす……!!【クイック・レード】!!」
全弾高速連射+即リロードのスキルでマシンに反撃。どれだけ距離を取られようが、ヴィヴィッドは問題なく事を進めていく。
「逃がさんッ!!」
片手のマグナム銃は距離があろうが中距離ならば大ダメージを与える優れモノ。一発一発、的確にメカモンスターの弱点に狙いを定め粉砕する。
上部にいるドローンはもう片方のショットガンで撃ち落とす。プロペラを破壊されたドローンは次々と無力化し、転落させていく。
「お互いダメージ軽め。回復アイテムも余裕! これなら楽勝かもね!」
「先へ進むぞ」
次々とフロアを攻略していく。今のところ大した被害もなし。発言通り楽勝だ。
「……ねぇえええ~?」
次のフロアへ向かう最中、Vi0はヴィヴィッドをジッと見つめている。
「どうした?」
「……アンタ。もしかしてコミュ障?」
----無慈悲!!
(あぐぁあああーーーーッ!!!)
更なるストレート
「喋り慣れていないように見えるというか。無理やり会話しようとしないというか。それ、クールなキャラ演じてるだけで実際は、」
「無駄口を叩くな。次のフロアだっ……!」
いつもみたく冷静に。表情にこそ出さなかったし、態度にも表さないよう取り繕ってはいたが……心の奥底では死体も同然のズタズタの状態だった。
弟といい、出会ってそう経っていない知り合いといい……今日はやたらと暴言を容赦なく叩き込まれる。ここまでの理不尽がそうあるものか。
(いいもん……今の僕はカッコいいんだもん……カッコいい、もん……!)
ヴィヴィッドは己のコミュ障ぶりを嘆くばかりだった。
クールなキャラを演じて受け流す。つまりは言い返せない自分の不甲斐なさを呪っていた。
「ここが、次のエリア……ん?」
ミッションが開始されて15分近く。ある程度フロアの探索も終わりそろそろだとは思っていた。二人が到着した地点は行き止まり……ではなくゴール地点。
「おっと見えた見えた。この戦艦のコアがね~」
Vi0は片手を目の上に添えて呟く。
到着したのは機関室。地上戦艦を制御するプログラムが搭載された動力源。
目の前のコアを破壊すれば無事ミッションクリア。人類の平和は守られる、というわけである。
「……となれば、だ。来るぞ」
「えぇ、わかってますよ~ってね!」
では早速コアを破壊しましょうと言いたいところだが----そう易々とやらせてくれるはずもなく。
「さぁ! 御登場よね!」
コアを覆い隠すようにバリアが展開される。
同時……二体のロボットが二人の前に立ちはだかる。
-----ボスの御登場だ。
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