三話 Vtuber史上最大最悪の事件

Vtuber史上最大最悪の絶望的事件を起こした…Vtuber界の名前を呼んではいけないあの人こと屑霧レーナだった。

Vtuber黎明期、Vtuber界で最も人気のあった箱があった。

ぶいどる部といわれていたその箱は主にアイドル売りをして、当時のVtuberファン層の大半がこのぶいどる部推しと言われていた。

そんな箱が…一夜にして消滅し、Vtuber界全体に激震が走った事件、それがVtuber史上最大最悪の絶望的事件。

その始まりはとある2chスレで、ぶいどる部全員の魂の姿での会話が映像つきで流出した。その中身は彼氏の話だとか、ファンへの悪口だとか…とにかくファンからしたら絶対に見たくない、生々しい姿だった。

当時、ぶいどる部はユニコーンと言われる過激なガチ恋勢に粘着され、ストーカー被害などを受けるライバーが多く、その被害を受けたライバーなどが裏でファンのことを気持ち悪がっているなどの噂があり、それが世間に晒される形になった。

この事件により、ぶいどる部の大半のVtuberが株を下げる中、1人だけ脚光を浴び、人気になったVtuberがいた。それが屑嶋レーナの前世、闇花ヒナだった。

彼女は、騒動直後に魂の姿をさらし、ライブ配信で涙ながらにファンへの謝罪。

彼女自身は流出した映像の中では、他の仲間がファンへの不満を口にする中、静観しており1人孤立してるような様子だったのもあり、あまり叩かれてはいなかったのだが、他のメンバーが沈黙を貫く中、真っ先に真摯に謝罪したことで、好感度をあげた。

更にこの配信のあと、情報を流出させた2chスレでリークをしたアカウントからぶいどる部内で彼女が無視されるなどのイジメを受けていたことが暴露され、闇花はぶいどる部ファンから、唯一の希望と持ち上げられ、その後、Vtuber界一人気の箱になるサンライブの二期生の屑霧レーナとして転生した。

この二期生は後に伝説の黄金世代と言われ、

メンバーは山賊のお頭Vtuber山宝リーフ、女侍Vtuberの黒鎧カノン、白猫Vtuber猫田ニャオ、ドワーフVtuber里桜レイヤ、そしてヴァンパイアVtuberの屑霧レーナの五名でデビューした。

屑霧が何故サンライブで超人気になれたのか…それは彼女がとてつもなくハイスペックだからだと言われていた。

魂の顔は超美人でスタイル抜群、歌唱力はプロ級、ゲームの腕はプロゲーマー級、英語、中国語、スペイン語と参加国の言葉をネイティブ並みに操る言語力、とにかくありとあらゆる場面で活躍できる彼女は、サンライブの黄金世代の中でも一際輝くその姿は、サンライブの至宝と言われていた。

そんな三期生がデビューから3年、サンライブは英語圏にも進出し、順風満帆な中、事件は起こった。それが、屑霧レーナのIP流出事件である。

2chスレのIPが流出し、当時ぶいどる部のリークを行ったアカウントのIPが闇花ヒナと一致し、全ての騒動が闇花ヒナが己を人気を上げるために仕組んだ事だったことが発覚したのだ。

その後、当然のごとく、屑霧レーナはサンライブから解雇処分を受け、その後は不明。一説にはショックで家に引きこもっていると言われていたが…

どうやら…それは本当だったようだ。

「な、なんで俺は屑霧なんかに…憑依しちまったんだ…?」

「それは僕が説明するっぴ」

俺の目の前には、おっさんの顔をした小さな妖精がいた。

この顔には見覚えがある。

サンライブの社長とそっくりだ。

「日郷社長…?」

「違うよ、僕はVtuberの神様 PIGOOだよ」

「Vtuber界の神様…PIGOO!?」

「そうだよ、サンライブ社長は現世の仮の姿、その正体はVTuberの神様TAGOOだったのっぴ」

「わけが…わからないです…」

「屑霧さんはとっても残念だったんだよ…まさか…自殺しちゃうなんて」

「屑霧が自殺…!?」

「そうだよ、そのベッド下に落ちてる瓶があるだろう、どうやら睡眠薬を過剰摂取しちゃったみたいだっぴ」

「なんでそんなことを…」

「うーん本人しかわからないっぴよ。引退した後も家を特定されて、ずっと嫌がらせを受けてたみたいだからそれが原因かもっぴ。彼女は魂の姿も有名だったし、その目立つ外見じゃ外を出歩くことも出来なかったんだろうね…下手な大手Youtuberより容姿が有名だったっぴ」

確かに屑霧は悪い事をしたが…まさか自殺するほど追い詰められてたなんて…

俺はやるせない怒りを覚えた。

「それで本題に入るっぴ

米竹君、君を屑霧ちゃんに憑依させたのは他でもない

この世界から貴重な才能をもつVtuberを同時に2人も消したくない

Vtuber界の神様として親心…

そして君にはとある目標を目指してほしいんだっぴ」

「目標ですか…?」

「そうだっぴ…それはずばり!!個人Vtuberになって登録者100万人だっぴ!」

「個人Vtuberになって100万人って…ありえねぇ!

今の時代をわかってますか?Vtuberはレッドオーシャン!最近新人Vtuberで100万人なんて大手の箱でもいないですよ!個人なら尚更無理ゲーです!」

そう、今の時代個人Vtuberなんてよっぽど才能と運に恵まれても10万人を越えれば快挙レベルの凄さなのだ。俺の知る限り、よっぽどバズって20〜30万人が限界だろう。

「大丈夫だよ米竹君、なせばなるなさねばならぬ何事もならぬは人のなさぬなりけりという上杉鷹山先生の名言を君におくるっぴ」

俺はPIGOOのふざけた言葉にため息を吐いた。

「…その目標って達成できなければどうなるんですか…?」

「その時は君は消えることになるっぴ」

「それって…つまり俺は」

「悪く思わないでほしいっぴ、今回君を屑霧ちゃんとして蘇らせたのは正確には僕の先輩の上位神の方で、君が多くの人を楽しませることができる素晴らしい人間だからって頼みこんでなんとか聞いて貰ったっぴ、そして因果をまげてまで、君を屑霧ちゃんの体に憑依させて生き返らせた条件が1年以内に登録者100万人なのだっぴ」

「そんな無茶苦茶な!」

「まぁまぁ…とりあえずはやってみるっぴよ

それに…これを見るっぴ!」

「これは…」

そこには銀髪に青い瞳…セーラー服にハンチング帽をかぶった、

可愛いキャラクターデザインの絵があった。この絵柄には見覚えがある。

これって…確かサンライブだと屑霧レーナや海空リクのキャラデザもしてる絵師、Pico先生のデザインじゃ。

「これは僕が描いた美少女漁師Vtuber海空マモルちゃんのキャラデザインだっぴ!

米竹君にはこのキャラデザでデビューしてもらうっぴ!」

「え?僕が描いたって…pico先生って…あんただったのか…?」

「そうだっぴよ?伊達にVtuberの神様やってないっぴ、

キャラデザだけじゃなくてモデル作成も僕がやったっぴ」

「そうだったのか…」

なんか複雑だ…。

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