第25話:オフ会で着ていく服装をどうしようかな……

 翌日の金曜日。


 今日も昼休みに生徒会の打ち合わせがあるため、俺は昼休みが始まるとすぐに生徒会室へと向かった。 生徒会室に着くと俺以外の生徒はまだ誰も来ていなかったので、とりあえず俺はそのまま近くの席に座って昼ご飯を食べ始めた。


「さて、どうしたもんかなぁ」


 俺はコンビニで買ってきた菓子パンを片手に持ってパクパクと食べながら、もう片方の手でスマホを開いて“高校生 服装 オシャレ”と検索を始めていった。


「うーん……」


 俺は検索をかけて表示されたスマホの画面をぼーっと眺めていった。 俺は未だに当日の服装について悩んでいたんだ。


 いやゴリさんとは今更気を遣うような間柄ではないんだけどさ、でも女子と二人きりで遊ぶのって今回が生まれて初めてだし。 やっぱりこういう時はちゃんとオシャレをした方がいいのかな? い、いやでも……うーん……


「こらこらー、お行儀わるいぞー?」

「……え?」


 そんな事をずっと考えていると唐突に後ろから声をかけられた。 声をかけられた方に顔を向けてみると、そこに立っていたのは七種先輩だった。 俺は慌てて今食べていた菓子パンとスマホを机に置いてからすぐ七種先輩にお辞儀をした。


「あっ! さ、七種先輩! お、お疲れさまです!」

「うんうん、お疲れ様ー。 って、あれ? 今はまだ神木君だけなの?」

「は、はい、今は俺一人だけですね」

「そっかそっかー。 じゃあ私もここで一緒にお昼ご飯食べてても良いかな?」

「え、あ、はいっ! 全然良いですよ! どうぞどうぞ!」

「うん、ありがとう。 それじゃあ神木君のお隣失礼するね」


 そう言って七種先輩は俺の隣の席に座り、そして鞄から小さな弁当箱と紙パックの緑茶を机の上に広げ始めた。 ということで数日前と同じく今日も七種先輩と一緒にお昼ご飯を食べる事になった。


「ふふ、何だか最近は神木君とこうやって話す機会が多いよね」

「え? あ、そ、そう言われてみたらそうですね。 同じ生徒会所属って言っても、去年の先輩は副会長の仕事で忙しかったから、今まで先輩と話す事ってあまり無かったですよね」

「あはは、確かに去年は大変だったね。 いやー懐かしいなー」


 七種先輩は楽しそうに笑いながら去年の事を懐かしんでいる様子だった。 そして前回一緒にご飯を食べた時の七種先輩は、ため息をつきながら落ち込んでいる感じだったのだけど、今日はとても明るい感じだったので先輩の事が好きな俺としてはそんな様子にホッとした。


「それで? 神木君はお昼ご飯を食べながらスマホで何を見てたの?」

「え? あ、あぁ、えっとそれは……あ」


 七種先輩にそう聞かれたので、俺は机に置いていたスマホをもう一度手に取って画面をオンにしたんだけど……その時、憧れてる先輩に“ファッション”について色々と調べてるのがバレたら何だか恥ずかしいなと思ってしまい言葉に詰まってしまった。 どうにかして誤魔化せないかな……


「うーん? 神木君どしたの? 眉間にしわが凄い寄ってるよ?」

「え? あ、本当だ……」


 俺がそんな事を思っていると、七種先輩にそう指摘されてしまった。 慌てて自分の眉間に手を当てて確認してみると、確かに眉間にしわが寄っていた。


「ふふ、そんな眉間にしわを寄せながらスマホを見てるなんてさぁ……一体どんなえっちぃ画像を見てるのかな? ちょっとお姉さんに見せてみよっか」

「えっ!? あ、ちょっ!」


 そう言うと七種先輩はニヤっと笑いながら俺の方に顔を近づけてきて、そのまま手に持っていたスマホの画面を覗き込んできた。 あまりにも突拍子もない行動だったので俺はかなり焦った声を出してしまった。


「へーなになに、今時男子のイケてるファッション特集……? なーんだ、えっちぃ画像じゃないのかー」

「い、いやいや! そ、そんなの学校で見るわけないじゃないですか!?」

「ふぅん? なるほどーそれじゃあ神木君は“学校じゃなければ”そういうものを見るのかなー?」

「え!? あ、い、いや違……!」

「あはは、嘘嘘! 冗談だよ、からかっちゃってごめんね!」


 七種先輩はそう言いながら両手を合わせながらテヘっと可愛らしく謝ってきた。 いや普通に可愛い過ぎる仕草だったので俺はそれにドキッとしてしまった。


 というか七種先輩って冗談とか軽口とかも言ったりするんだな。 七種先輩は優しくて真面目な性格な人だから、何だかそのような言動はとても意外に見えた。


「でもさ、別にしかめっ面で見るようなサイトじゃないよね? なのにどうしたの神木君?」

「え? あー、えぇっとその……」

「んー? 何々? あ、もしかして……女の子関係とか?」

「え゛っ゛!?」

「……!? ほうほう!」


 七種先輩にそんな事を言われた俺は動揺を隠せずに声が裏返ってしまった。 そしてそんなあからさまな態度を取ってしまったせいで、先輩は何かを察したように何度も頷いてきた。


「へぇ、そうなんだね! それは青春だなー! それで相手は誰なのかな? 神木君の彼女さん? それとも好きな人とか?」


 七種先輩は目を輝かせながら俺に向けて矢継ぎ早に質問をしてきた。 い、いやちょっと待って! 誤解なんですって……!!

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