第24話:あたぎさんにオフ会をする時に気を付けた方が良い事を聞いてみる

 次の日の夜。


『へぇ、オフ会やんの? ええなー!』


 俺はあたぎさんと通話をしながら格ゲーの練習に付き合って貰っていた。 今話してる内容は昨日のゴリさんとの会話だ。


『あーあ、私も二人と会いたかったなー』

「あはは、俺もあたぎさんと会ってみたいっすよー。 いつか大阪に行く事があったらその時は宜しくお願いしますね!」

『うんうん! いつでもおいでなー! 美味しいご飯屋さんとか沢山連れてったげるよー』

「おー、それは頼もしい! あとはそうっすねー、いつか俺とあたぎさんとゴリさんの三人でオフ会とかもしてみたいっすね!」

『あーそれめっちゃしたいなー! あはは、それじゃあ長期休みでも取れたら私が東京に遊びに行こかな?』

「え、マジっすか!? 是非是非! あたぎさんもこっちに遊びに来てくださいよー!」

『うんうん、是非とも遊びに行くわー! そん時はもちろんクロ君とゴリちゃんにはエスコートをお願いね! 大阪は私担当やけど、東京案内は君ら二人の担当やからね!』

「もちろん了解っすよ! ……あっ、でも、俺達はお酒飲めないからあたぎさんが一番行きたいであろうお店とかには行けないっすよ?」

『いやいや! 未成年を連れて居酒屋に行くほど私アホちゃうよ!? ……多分やけど』

「あはは、いやそこは多分じゃ駄目でしょー!」


 いつかあたぎさんとゴリさんの三人でもオフ会が出来たら良いなと思いながら、昨日のゴリさんとの話を続けていった。


「あ、そういえば俺、今回が初めてのオフ会なんですけど、何か気を付けた方が良い事ってありますか?」

『気を付けた方が良い事? うーん、なんやろうなぁ……まぁネットでは仲が良くてもリアルでは初対面な訳やから、ちゃんと身だしなみを整えて清潔感ある感じで行くのがマナーなんちゃう?』

「あぁなるほど、確かにそういうマナーは大事ですよね」

『まぁでも私が始めて行ったオフ会は同士達の集まりやったからさー、そん時は推しキャラのフルグラTに、推しカラー&ヘアスタイル、ぬいと缶バッジを敷き詰めた痛バックの完全武装でキメてったけどな! あははっ、めっちゃ懐かしいわーw』

「あはは、何すかそれめっちゃ楽しそうな事してるじゃないっすかw」


 前々から思ってたけどあたぎさんの学生の頃のオタク話とかかなり面白そうだなー。 またいつか時間があったらあたぎさんの昔の思い出話とか聞いてみようかな?


『まぁでもさー、初めてのオフ会やと思うけどあんまりに気にせずめいっぱい楽しんできてなー!』

「はい、ありがとうございます! そうっすね! とりあえずなるべく緊張しないように頑張ってきます! ……いやまぁ多分緊張すると思うんですけども!」

『あはは、そりゃあ無理やろーw お互いに初対面なんやし緊張は絶対にするもんやてw』

「あ、やっぱりすか?w うーん、でも何か緊張を解す方法とかってあったりしませんかねー?』

『うーん、そうやなぁ……まぁでも二人はゲーム好きやし、一緒にゲームでもやればすぐに緊張も解けるんちゃう?』

「あぁ、なるほど! あはは、それなら大丈夫っすよ! ゴリさんと会ったらまずはゲーセン行く予定なんで!」

『えっほんまに?? あははっ! 君らほんまにゲーム大好きっ子やなぁ!』

「あはは、まぁやっぱり俺らはゲーム好きで集まった仲間ですからねー」

『うんうん、それなら大丈夫そうやなー! それにクロ君とゴリちゃんは仲めっちゃ良いしさ、最初の緊張が解けたらめっちゃ楽しいオフ会になると思うよ! だから全力で楽しんできてなー!』

「はい、そうですね! 全力で楽しめるように頑張ってきます!」

『うんうん! 楽しめ楽しめー! あ、お土産話にも期待しとるからねー』


 あたぎさんに色々な助言を貰いつつ楽しんできてと言って貰えたので、俺はそれに応えるように感謝の言葉で返した。 よし、今週末のオフ会は全力で楽しんで来るぞっ!


『あははっ、いやでもクロ君めっちゃ羨ましいなぁ! ゴリちゃんと二人きりでオフ会なんてさー、それ実質デートみたいやね!』

「……え?」


 俺がそう決意を固めたその瞬間、あたぎさんの何気ない一言で俺は固まってしまった。 あたぎさんからしたら別に他意なんて無いただの一言だったんだろうけど……え、デートって……え?


―― ピロリン♪ ピロリン♪


 俺がその言葉の意味を理解しようとして頭を動かしていたその時、あたぎさんのマイクから何かのタイマー音が聞こえてきた。


『あ、ごめんクロ君! ちょうど今お風呂湧いたから今日はこれで終わりでもいいかな?』

「え!? あ、は、はい、わかりました! じゃあ今日はこれで終わりにしましょう!」

『うん、ありがとね! それじゃあお疲れさんー』

「はいお疲れ様です!」


―― atagiさんとの通話が終了しました。


 あたぎさんとの通話が終了した後。 少し時間が経ってから先ほどのあたぎさんの言葉の意味を理解した俺はそのままパソコンの前で頭を抱えながら悩み始めた。


「……た、確かに女子と二人で遊びに行くのって、傍から見たら……?」


 あたぎさんに言われるまで気が付いてなかったんだけど……確かに女子と二人きりで会うのってデートみたいな状況じゃん!


 いやちょっと待って! ついさっき“緊張しないように頑張る!”って宣言したばかりなのに、そんな事を意識しちゃったらさ……ゴリさんと会う前から既に緊張しだしてきたんだけど!?


「いやこんな事ゴリさんにバレたら絶対にまた煽られるって!」


 万が一にもゴリさんに会う前から緊張してるなんてバレてしまったら、今度は“小学生からじゃなくて幼稚園からやり直せば???ww”って煽られるに決まってる。


 いやでもさ、そもそも俺は女子と二人きりで遊んだ事なんて今まで一度も経験した事ないんだよ!! そんな非モテ男子高校生がいきなり女子と二人きりで遊ぶってなったら誰だって緊張するだろ??


“ちゃんと身だしなみを整えて清潔感ある感じで行くのがマナーなんちゃう?”


「……あっ!!」


 そしてその時、ふと先ほどのあたぎさんとの会話が俺の脳裏に過った。 そして今度はそれが今の俺にとってとても悩ましい問題となってしまった。 その問題とはもちろん……


「や、やばい……オフ会で着て行く服どうしよう……!」


 今まで女子と二人きりで遊んだ経験が一切ない男子高校生には、この問題をどうやって解決すれば良いのか全くわからないのであった。

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