第6話 和解、ついに
ものすんごい遅れまして、大変すみませんでした。
以下、第6話です。
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(リアレンス視点)
困ったことになった。今現在、私の目の前では件のエリスタ様が泣いている。手紙が送られてきて屋敷に迎え入れた途端、泣き崩れてしまった。どうしましょう。目の前で女性が泣いている時の対処法なんて王妃教育では習ってないわ。
「エリスタ様。どうしたの? 少しずつでいいから話してちょうだい?」
「ぐすッ・・・う、はい・・・申し訳ありません・・・」
「大丈夫よ。辛いことがあったのよね?」
「はい・・・。実は、シリウス様に会いたくないって衝動的に言ってしまって・・・そうしたらいきなり背を向けて帰ってしまってっ・・・きっと失望されたんだわ! こんな可愛げのない女、私だったら嫌だもの! シリウス様だって・・・ッう、うわあああん!」
「・・・・」
うーん。どうしたものかしら。少々、いやかなりエリスタ様は子供っぽいところがある。主に婚約者に関することに。
けれどこの泣き方は淑女としては褒められた行動ではない。
普段は淑女としてしっかりしているエリスタ様がシリウス殿に関することだけ感情を乱すというのはもう、シリウス殿のことが好きだと言ってるようなもののような気がする。
ここまで思い合っていてなぜすれ違えるのか逆に不思議なくらいだわ。
・・・これはもう、荒療治だけれど覚悟を決めてもらうしかないわね。このままちまちまと仲を取り持っていても一向に距離が縮まらない気がする。中を取り持つどころか余計酷くなってるのは本当なぜなのかしら。
「ーー分かったわ。エリスタ様。覚悟を決めてもらえるかしら?」
「えっ?」
涙に濡れた目でキョトンとこちらを見つめてくるエリスタ様に、私はニコリと笑みを返した。
ーーーーーーー
「い、いやです、離してくださいリアレンス様!」
「離したら逃げるでしょう? それとも離したら大人しく着いてきてくれるのかしら?」
「う、それは・・・」
「ね、観念してちょうだいな」
わたくしは今、屋敷の客間に招待して待たせているシリウス殿のところへ、手を引っ張ってエリスタ様を連れて行こうとしている。
多少強引なのは許してほしい。シリウス殿とのことについて相談はしに来るくせに会いたくはないなど、わたくしが認めないわ。じれったくてしょうがないったらない。最初はちょっとずつ仲を取り持って見守ろうと思ったけれど流石に我慢ができなかったわ。
頑なに拒むエリスタ様の気持ちもわかる。会って婚約者に言われる言葉を想像して恐れているのだろう。
おそらくは、というか絶対マイナスな言葉を想像して。
あのシリウス様に限ってそれはありえないとわたくしは思うけれど。
彼女の話いわく、抱きしめられたり愛してると言われたけれど、会いたくないなんて言ってしまった自分は嫌われたに違いないと。
どれだけ思い込みが強かったらそんな結論に至るのか。見てて飽きないけれど、2人とも思い込みが強いせいでなかなか誤解が解けない。どころかさらに誤解が増える始末。
だから、わたくしは今回2人に、お互いスッキリするまで思い切り自分の思いをぶつけ合いなさいと言った。
それが一番手っ取り早い。ぶつけ合って言い合えばお互いの誤解も解けるかもしれない。
「はい、着いたわよ。ーー待たせたわね。2人ともどうぞ、思う存分言い合って誤解を解いてちょうだい」
「え、リアレンス様!? 待ってくださーーッ」
引き止めようとしたエリスタ様を部屋に押し込み、邪魔者のわたくしは退出して扉を閉める。
一応わたくしの侍女のセラを部屋に残してきたため、2人きりという心配はない。2人の痴話喧嘩(?)を目の前で聞かされるセラには悪いけれど。
さて。わたくしは愚かなあの方に手紙でも書くことにしましょう。
ーーーーーーー
「エ、エリスタ・・・その、」
「な、なんですっ?」
「・・・エリスタッ! 愛してるーーーーッ!!」
「ッ!!?」
はぁ、はぁ、お、大声で愛を叫ぶというのは案外疲れるものだな・・・
距離があるとはいえ他の人ーーリアレンス嬢の侍女であるセラさんがいるところでこれは、かなりの苦行だ。
とはいえ、俺が勝手に羞恥を感じているだけで、彼女は終始ポーカーフェイスで無表情を貫いている。
エリスタは豆鉄砲を食らった鳩のように目を見開き、唇を震わせている。
「な、な、なにをッ!? ×○△※%!?」
あ、エリスタの方がヤバかった。羞恥心が限界突破して意味の分からない言葉を発している。
顔中真っ赤にして口をぱくぱくしてるエリスタも可愛いすぎるううーー!!
「い、いいいきききなりお、大声でなな何を言ってるのッ!?」
俺がえへえへと口を緩めていたら、エリスタがものすごい吃りながら聞いてきた。
「ーーリアレンス嬢にお互い自分の思いをぶつけ合えって言われたからね。・・・俺は本当にエリスタ、いや、エリィを愛してる。大好きだ。感情が豊かなところも、ツンツンしてるけど優しいところも、普段はしっかりしてるところも、全部好きだ。今まではあのアホ王子の尻拭いに、押し付けられた公務に、学園で言いつけられた雑用にって毎日朝から晩までやることが詰まってて、本当に文字通り全く暇がなかったんだ。それこそ過労死しそうだったよ・・・でも学園で会うどころか、手紙すら送れなかったことは本当にすまない・・・!」
俺は自分の気持ちと、今までのこと、事情を伝えた。
さっきまで動揺しまくっていたのが嘘のように黙って聞いてくれていたエリィは、俺が言ったことを咀嚼するように、眉を寄せてじっとしている。そして、口を開いた。
「ーーそうだったのね。わたしもあなたの事情を考えずにいろいろ尖った態度を取ってごめんなさい。でも寂しかったし、悲しかったわ。王子殿下の噂は私たちの学年にも届いていたけれど、伝えてくれないと分からないもの。てっきりもう見捨てられたのかと思った。それなのにいきなり会うことになったと思ったら急に誤解してるとか言われて混乱したわ。それと、屋敷に来たと思ったらいきなり告白してきて抱きしめてくるから動揺して殴ってしまったことと会いたくないと言ったことも謝るわ。その、は、恥ずかしくて・・・あ、あと、その、わ、私もす、好きよ・・・っ! わ、わかったかしらッ!?」
エリィは俺のことが好き。
俺は今、このまま空へ飛び上がれそうなほど喜びを感じている。衝動的に抱きしめたいのを我慢して、俺は言う。
「ッ! ああ。俺も好き、愛してる」
「ッ!! ふ、ふん! 分かればいいのよ!」
再び愛してると言うと、エリィは顔を茹だこのように真っ赤にし、顔をツンとそらしながらそう言った。
・・・よく見ると、エリスタは目を潤ませていた。
驚いて目を見開く。
「エ、エリィ、泣いて・・・?」
「こここれは嬉しくて・・・ッ!!」
指摘すると、エリィは動揺し、慌てたようにゴシゴシと袖で目を擦った。
俺は立ち上がると、向かいのソファーにいるエリスィをそっと抱きしめた。
また暴力という名のツンが来ることを覚悟したが、予想に反して、エリィは俺に大人しく抱きしめられている。
それどころか、抱きしめ返してくれた。
「ッ・・・」
腕の中にいるエリスタをちらっと見ると、相変わらず顔を真っ赤に染めているが、ぎこちないながらも俺の胴に腕を巻きつけ、お互いに抱きしめ合うような体勢になっている。
・・・可愛い。可愛すぎる。素直なエリィがこんな可愛いなんて・・・!?
「シ、シリウス様。痛いわ・・・」
ハッ! 可愛すぎてつい抱きしめる腕に力が入ってしまっていた。バッと腕を離すと、エリィはホッとしたように息を吐いた。
「ご、ごめん。可愛くてつい・・・」
「か、かわッ!?」
「ああ。可愛い」
「だ、だだ誰が・・・!?」
「エリィが。当たり前だろ」
「あッ、あた・・・ッきゅうぅ〜・・・」
「あっ・・・」
エリィはついに目を回してしまった。
ゆくゆくは結婚するんだし、慣れてほしいところだが、攻められて目を回すエリィを楽しむのも良いかもしれない。
これからはもっと可愛がる予定だし、いろんなエリィが見られることだろう。
俺はエリィが目を回して気絶しているのを良いことに、彼女が目を覚ますまで膝枕をしていた。
目を覚ました彼女が飛び上がって驚いたのは言うまでもない。
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とりあえず、本編、というかシリウスとエリスタの話はこれで終わりにするつもりです。
文章は拙いですし、視点入り乱ってるし、違和感ある部分もあるかもしれませんが、これからも温かく見守っていただけると嬉しいです(*゜∀゜*)
この後は、リアレンスや王子の話を番外編として書いていこうと思います。
面白かった、番外編気になるという方はフォロー、評価、応援していただけると作者は泣いて喜びます(*'▽'*)
【本編完結】側近侯爵令息の憂鬱と歓喜 ラムココ/高橋ココ @coco-takahashi
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