幕間 その3 カカミ中等学校

 朝の仕事を終えて、学校に向かうミーヤがいる。ミカビ村から学校があるカカミまでは、徒歩でそれなりの時間がかかるが、ミーヤは苦も無く毎日学校に通っている。

「サンセッ、おっはよー。」 学校近くで友達を見つけたミーヤは、後ろから飛び付く勢いで元気に挨拶をする。

「あはっ、おやおや、ミーヤさんは、朝から元気だねぇ~。」

 サンセは、年寄りのような言い回しをしてミーヤの元気に応える。

「昨日はいい放送できたからね! 今日もガンバロー!」 ミーヤは拳を突き上げる。

「若いもんは~元気でいいですね~。リンカさんや~。」

「そうですね~、若さを分けて欲しいですよ~。サンセさん~。」

 すぐ隣からのサンセのフリに、リンカは即興で乗って返す。

「にひ、いいわよ。分けてあげるから、今日の放送もガンバロー!」 ミーヤは満面の笑みで、二人に抱き着いた。


 魔法が使える者は貴重であり、この世界の一般的な学校とは、その限られた人材を育成する機関である。魔法の力は戦闘のみならず生活においても、常人の数倍の成果を上げる。つまりそれは、魔法の元となる魔子を宿す人間と、魔子を持たない人間には超えられない力の差がある事を意味する。

 その差は、例えば、それぞれ魔子のない常人の赤子が1、屈強な男を10と指標化すると、強い魔子を宿す勇者ともなると、それは1000を超えるほどの数値を示すのである。とはいっても、人口に対して強い魔子を持つ者の割合は対数的な関係にある為、勇者レベルの者はごく稀で、魔子を宿す人間の大半は、どれほど修練を重ねたとしても100にも到達しないのが現実である。

 そして、魔子の強さと血統には、相関性がないことも分かっている。人間が持つ肉体的な遺伝要素に左右されることはなく、魔法が使えない両親から勇者が生まれたり、その逆もある。オレンやミーヤの様に、兄妹で素養に差が出ることも珍しくない。

 加えて、魔法とは、魔子が生み出す魔素を対価に、六属性エレメントと契約する事で発動する。このプロセスはあらゆる魔法で共通であり、そこには術者とエレメントの相性というものが介在する。この相性というのは、術者とエレメントの先天的な関係性である場合と、後天的な場合がある。後天的な場合とは、生まれ育った場所や風習とエレメントの相性が影響を与えたり、長い間特定の属性魔法を使い続けることなどで向上がみられる。

 その為、魔法が使える貴重な人材を育成する機関として学校が存在する。そして、生徒の持つ魔子の才能に合わせて、この世界の学校は、ランク分けされている。将来、勇者になりうるほどの先天的才能を持った者は、ヒナの妹が通っているような魔法学園で、より高度な教育を受けられる。ミーヤが通うカカミ中等学校は、それよりランクが二つほど下がる。精々、生活する上で便利な魔法が使える、程度の才能が集う学校である。それでも、広く学校が開かれているのは、人類に敵対する存在であり、同じく魔子を有する魔族に対しての対抗戦力として、国家としても少しでも多くの人材を確保したいからだ。そういう思惑がある中で、魔法の才能に恵まれた者を正しく導くという名目を掲げ、国家は学校を開いている。

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