〇〇の二見さんと私
なになにどういうこと? 理解が追い付かない。いや、理解を拒んでるといった方が良いのかもしれない。
いつも楽しそうだね……って、もしやバレてたのか。いままで陰でサポートしてたことが。
そんなのあり得ない。だって二見さんは抜けてて、気づいてる素振りすらなかった。
「…………」
目を合わせたままの二見さんはなにも言わない。笑ったままだ。
いや、もしかして、嗤ってるとか……そ、それはないよね! あの二見さんだもん!
内心での動揺を押し殺し、とりあえず聞いてみることにする。いつも楽しそうだねってどういうことって。
「…………っ」
ダメだ、緊張で声が出ない。憧れの二見さんに目で射抜かれてて、コミュ障ぼっちがまともにしゃべれるわけがない。心臓はバックバクし過ぎて今にも破裂してしまいそう。
だいたいなんで急に話しかけてきたの? なんでひとりなの? とかいろいろ聞きたいこともあったけど、この状態じゃムリだ。
「っ」
いけない、白目剥きかけてきた。ドキドキのあまり気絶しちゃうかも。
ごめんなさい二見さん……一足先に逝きます。
そんなみるに堪えない私を見てか、二見さんはようやく間を繋いでくれる気になったようで。
「友達になってくれない?」
「……ふぇ?」
「連絡先交換しようよ」
「!?」
次々に襲い来る衝撃に、私はノックアウト寸前だった。
だけど、それ以上に嬉しさが押し寄せてくる。二見さんが友達になろうって言ってくれてるんだから。
きょどるな私っ、勇気を出すんだ。彼女をサポートしてたときのように。
おそるおそるといった感じでスマホを取り出し、二見さんに手渡す。
彼女は慣れた手つきでスマホを弄り、私に返した。
「……あ、ありがと、ごひゃます……」
二見さんが気にしないでとばかりににっこり笑顔。眩しくて今が昼間かと錯覚してしまいそう。
のけぞる私に、二見さんが言った。
「じゃあね、薄陰さん」
ポカンとする私をよそに、くるりと背を向け去っていく。後夜祭に参加するのだろう。
二見さんの出たドアを眺めながら、ひとつ息を吐いた。
真相は結局聞けずじまいだったな……。自分のコミュ障っぷりが情けない。
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