第180話 ここまで来たら

昨日は、地下ダンジョンの10F、セーフティゾーンまで来てここに泊まった。

俺は思い出しながら各フロアの魔物一覧を書いた。(マップは全く思い出せない、というか覚えていない)


21F ゾンビ   臭い、動きは遅い

20F スケルトン 臭い、動きが速い

19F グール   臭い、動きは遅い、ゾンビより死ににくい

18F スパルトイ 臭い、動きが速い腐った戦士

17F スケルトンアーチャー 遠くから矢を射ってくる、匂い不明

16F ゾンビ、スケルトン 臭い二種混合

15F ゾンビ、スケルトン、グール 臭い三種混合

14F ゾンビ、スケルトン、グール、スパルトイ 臭い四種混合

13F ゴブリンゾンビ ワラワラと大群で来る、臭さ最高潮

12F オークゾンビ  ゴブビより強いが少ないからラク、でも臭い

11F レイス     臭くない!物理攻撃が効きにくい

10F セーフティゾーン ー


死霊の森ダンジョンの名に相応しく、まさにアンデッドのオンパレードだったな。

いや、途中魔物のネタが切れたのか、混合で攻めてきたが、特に問題には思わなかった。

総じて『火』に弱い。

オークゾンビに『ターンアンデッド』が効きにくいのもわかった。


ドロップだが、地上のように「このフロアはこれ」という縛りはないようだ。

金銀の硬貨、魔石、鉱石、宝石、魔法書だった。

もしかしたら他にも落とすかもしれない。

今回は階段を探して急ぎ走り抜けたからな、ゆっくり攻めてみたい気も…いや、臭いからいいや。

それにしても、13F。拾いに戻りたい。


魔物自体の強さは地上も地下も大して変わらない気がする。

大きく違うのはポップの速さだ。

地上は倒すと、少ししてから次の魔物が湧く。

地下は倒しても倒さなくてもどんどんと湧く。

うっかりすると対処出来ないくらい湧いてしまうだろう。

地下はそこが怖いかも知れない。


俺が書いていた紙をキックが覗き込んできた。


「あの、階段の扉……あった方向が」


そう言ってキックは俺の紙に書き足し始めた。


北 21F ゾンビ   臭い、動きは遅い

東 20F スケルトン 臭い、動きが速い

南 19F グール   臭い、動きは遅い、ゾンビより死ににくい

西 18F スパルトイ 臭い、動くが速い戦士ゾンビ

北 17F スケルトンアーチャー 遠くから矢を射ってくる、匂い…

東 16F ゾンビ、スケルトン 二種混合

南 15F ゾンビ、スケルトン、グール 三種混合

西 14F ゾンビ、スケルトン、グール、スパルトイ 四種混合

北 13F ゴブリンゾンビ 臭い、ワラワラと大群で来る、臭さ…

東 12F オークゾンビ  臭い、ゴブビより強いが少ないからラク

南 11F レイス     臭くない!物理攻撃が効きにくい

西 10F セーフティゾーン ー



「え、凄いなキック、マップ記憶してるんか」


「あ、いえ、あの、方角だけ…、そっち方面で扉あった、間違ってるかも…」


俺たちの会話を聞いていたレッサとキシェ、それとナオリンも寄ってきて手元の紙を覗いた。


「これ、階段の方角にルールがあるわね」

「ああ、これでいくと次の階段は北か!」

「てことは、まず北へ北へと進んで階段が見つかったらラッキーですね」

「キック!凄いよ」

「あ、いや、その、…わからない…し」


どのみち今日は進めるとこまで行って帰還する予定だ。

キックの見つけた法則が当たったら、ダンジョンを進み易い。

俺たちはセーフティゾーンを出て、『9F』に足を踏み入れた。


『9F』の魔物は、巨大な目玉の化け物だった。

直径1メートルくらいの目玉が地面を弾むようにこちらへと向かってきた。


「フロートアイ!皆、散れ! 目玉の正面に出るな!」


俺は慌てて叫んだ。

ゲームで見かけたフロートアイは目から光線か何かを出していて、それを浴びると動けなくなった。

と言ってもWIZは魔防が高いので大丈夫だが、他のプレイヤーはよく固まっていた。


「目から出す光線を浴びると動けなくなる!後ろに回れ!」


確か物理攻撃には弱かったはずだ。

うん、思い出した、結構MP吸える魔物だったよな?

ちょっと吸ってみるか。

俺は持っていたシルバーロングソードをアイテムボックスにしまい、マナスタッフを取り出した。

マナスタッフは、叩いた相手からMPを吸える杖だ。


「俺は固まらないから奴の気を引く!後ろから頼む!」


そう叫んでフロートアイに近寄りマナスタッフでボカボカと殴った。

ゲーム同様、よく弾む。

ゲームではそれが楽しくて、チューチュー吸いながらボヨンボヨンと殴ってたな。


俺に向かって案の定、光線を放ってきたがパリンとカンタマが弾いた。


「カウンターマジック!」


直ぐにカンタマを再度かけて殴る。

ボヨン、ボヨン、ボヨン

MPは元から満タンだったので吸えているのかわからぬ。

真横からキシェが矢で射抜いた。

目玉は地面にころがった。


俺はアイテムボックスからブランクスクを取り出して『リムーブカーズ』を込めた物を急ぎ4枚作成した。


「これ、渡しておく。誰か固まったら使ってくれ」


皆に一枚ずつ渡した。

それからフロートアイを見つけるとまず俺が走り寄り杖で叩きまくる。

皆は背後や横から攻撃して倒してもらった。

そうして北へと進んでいると、階段への扉を発見した。

キックの予想通りだ。



『8F』に降りた。


キックがライト魔法を使い、通路を明るくしたが魔物が見当たらない?

と思ったら、突然レッサが何かに足を取られたように突然倒れた。


「くっそう!何だ、コイツ!」


レッサが地面に転がったまま何かと戦っている。

兎に角ヒールをかけようと近づくと、レッサの右足に薄いグレーの空気のような物が絡みついていた。


「ヒール!ヒールヒール!」


俺はレッサにヒールを一発、それから足に付いてるグレーの空気のような物に二発ぶつけた。

シュワっと消えていった。


「大丈夫か?レッサ」


「ああ、驚いた。スマン助かった」


「今の、たぶんシルエットという魔物だ」


「シルエット?」


「スライムを空気で作ったような魔物だ。小さいし、獲物が通るまで地面にいるので気付きづらい」


「何かが足に付いているのはわかるが掴めねぇ、剥がせなくて焦った」


「ああ、シルエットは燃やせればいいが、自分に付いた場合はヒールが有効だ。ヒールもスクロールを渡しておく」


そう言って俺はブランクスクにヒールを詰めた物を作って渡した。

やはり地下は手強いな。

俺らは東へと進み、やがて扉を見つけた。



『7F』はレイスとシルエットだった。

掴めないわ物理が効きにくいわでぐたぐたになりながら南へ進み、扉を見つけた。

          

            

『6F』は、レイス、シルエット、フロートアイだった。


俺のイライラが天元突破した。


「ファイアアアア!ファイアボオ!ファイア」


そこらじゅうを燃やしまくり、目玉からはMPをチューチュー吸いまくった。


「おらぁ!ファイア!燃えろオラオラオラ!MP寄越せえええ」


皆は俺の後ろを着いてきてくれた。

階段への扉を見つけ、中に飛び込んだ。

少し休憩だ。(MPは満タンだったが)


残り5階か。

一度戻って色々と準備をした方がいいのだろうが、ここまで来るとあと5階、フロアを覗きたい。


「皆、大丈夫か?」


レッサが俺たちの顔を覗き込んだ。


「ええ、大丈夫よ」「…はい」「大丈夫、まだ行けます」


行くしかないか。


「おう、行ける」



『5F』へ降りた。


5Fはリビングアーマーだ。

床を這うように移動してくる鉄の鎧、リビングアーマーの攻撃ってどんなだったか?

そう思った瞬間にアーマーに体当たりをされ、吹っ飛ばされた。

驚いたがノーダメージだ。

シールドやブレスドアーマーかけてて良かったぜ。


「ダマ剣、そうだ!ダマ剣だ!」


そう言って4人に素早くダマ剣を渡した。

リビングアーマーはダマ剣で簡単にぶっ壊せた気がする。

5人でダマ剣でリビングアーマーを倒しながら進む。

通路を北の方角へと進んで行く。


『4F』の壁を見つけた。


4Fはアイアンゴーレムだった。

動きが遅いのでこの階はゴーレムを振り切って進む事になった。



『3F』へ降りた。

ここの魔物はケルベロスだった。

首が3つある犬が口から火を噴いてくる。

黒くて禍々しい犬、全然もふもふじゃない。


今まで地下ダンジョンの魔物はアンデッドで火に弱い物がほとんどだったが、ここに来て弱点が変わった。

火を噴くくらいだから火は弱点ではないだろう。

そう思い、水系の攻撃魔法を試す。


「フローズンクラウド!」


あっという間に白いモヤがケルベロスに向かって地面を這って広がる。

ケルベロスはモヤに獲らえられた足元から凍っていった。

凍ったケルベロスをダマ剣で叩き壊す。


「俺が凍らすから皆は叩き壊してくれ!」


そうしてケルベロスを倒しながら『2F』への壁をみつけた。

2Fへ降りるといきなり幅の狭い通路となった。

ただ歩くだけならふたり並べる幅はあるが、動いて戦うとなるとひとりでいっぱいだ。

しかも通路はカクカクと曲がり、まるで迷路のようだ。

一列で歩いていくしかない。

レッサ、俺、キック、ナオリン、キシェの順に並んで進み始める。


角をいくつか曲がると直ぐ先に魔物がいた。

黒いフード付きの長いマントを引き摺り大きな鎌を担いて滑るようにこちらへ移動してくる。


デス…だ。

こんな狭い場所であの鎌を振れるのか?と頭によぎった一瞬に、デスは鎌を振り上げた。


「ターンアンデッド!」


ボシュン…。

あ、良かった、ターンアンデッドが効いた。

デスが消えた地面にはクルクルと巻かれたスクロールが落ちていた。


「スクロールだ」

「このダンジョンでスクロールが出たのは初めてですね」

「何のスクロールだろう?」


「あ、開かないで。もし帰還スクロールだったら開いた瞬間に帰還してしまうぞ」


拾いあげて開こうとしたレッサを慌てて止めた。

キックに現在アイテムボックスに入っているスクロールを確認してからボックスにしまってもらった。

するとアイテムボックスに入れた途端にキックが驚いたように声を上げた。


「カオさん、これ、強化スクロールって表示されました!」


「何だって!」


驚いた、このダンジョンでスクロールが出たのは初めてだが、まさかの強化スクロールだと?

倉庫女神の中のスクロールに『強化』系が無くなっていたので、この世界に『強化』は無いのだと思っていた。


「また来たぞ!」


ぼやっと考えていたら次のデスが来てしまった。

慌てて魔法放つ。


「ターンアンデッド!」


今度は何も落とさなかった。

まぁそうだよな、強化スクロールのドロップ率が100%なわけはないからな。

俺たちは縦に一列になって進んで行った。


他の魔法も試した。

炎もヒールも効く事には効いたが、それほど大きなダメージは与えられなかった。(もしくはデスのHPが多いのか?)

スローが効き鎌の振り上げがゆっくりになったのでレッサが銀剣で斬りつけたら、倒せた。


あの大きな鎌をデスが振り回しても壁にぶつからずに通り抜けていたので、デスはレイスやシルエットのような実体が無い系の魔物と思い込んでいた。

だが、デスの持ってた武器(鎌)が魔力による武器だったようで、デス自体は肉体(肉体と言って良いのかわからん)があったようだ。


スクロールはやはりドロップ率が低いようで、落ちたのはあの一回切りだった。

そして俺たちは1Fへ降りる壁にたどり着いた。

扉の大きさからも1Fはボス部屋でない事は想像がついたので、俺たちは1Fへ踏み込んだ。

予想通り、そこはセーフティゾーンだった。


となると、『B1』がボス部屋だろう。

レッサが確認に行くとまさにあの大きな扉があったそうだ。


俺たちはとりあえず今夜はここで休む事にした。

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