第179話 もっと行く?

ダンジョンに入ってからだいぶ時間が経っていた。

地下も地上と同じようなら、恐らく10Fあたりにセーフティゾーンがあるとふんでいる。

今は14Fか。



「どうだ?皆、大丈夫か?」


似たようなアンデッドとは言え、地上に比べて魔物のポップが速い。

常に戦っている感じがする。

オークキングに頼ってはいても俺たちも結構頑張って倒していた。



「どうする?今日はここまでにして帰還するか?」

「明日またここまで来るの?このまま進まない?」

「カオさん…MPは?」

「あ、おう。大丈夫だ。1割も減ってない。ファイアだと自然回復でカバー出来る。連発した時は青ポ飲んだけど」

「青ぽ?」

「ああ、魔力回復ポーションだ。飲んでも一気に回復するわけじゃないが、ジワジワと回復していく」

「私はまだ大丈夫です!キック体力どう?」

「あ…えと、少し休ませてもらえれば…」

「では、カオの魔力が回復したら進む事にする。回復したら教えてくれ」

「了解!」


MPは5分もかからず回復したが、体力を回復させるため30分くらい黙っていた。

ステータスのHPバーは満タンなんだが、絶対俺、疲れてるよな?

疲労バーとかあったら、きっと今60%くらいだよな。

おじさんの疲労回復率を舐めるなよ!遅いんだぞ!



「そろそろ満タン」と声をかけた。よっこいしょっと。



『13F』

ゴブリンゾンビ?

そんな魔物は俺のゲームにはいなかったぞ?

ぼろぼろのゴブリンが、いや、元からゴブリンはぼろぼろだが、強烈な死臭を放ち、いや、元から臭かったが、そんな奴らがワラワラと大群で迫ってきた。

もう心のダメージ大だ。くっさ。

身体のダメージをやっと回復したのに、次は気持ちを攻めてくるとは、地下ダンジョンめ、やるな。



「ファイアファイアファイア!」


うっわ、凄くよく燃える。

ファイアボールが先頭に当たり弾けた炎が周りのゴブリンゾンビを一気に燃やす。

しかしこの勢いで魔法を使い続けるとMP枯渇が目に見えている。


「悪い、一回さっきの階段まで戻ってもらえるか!」


全員が階段まで戻った。


「大丈夫か?カオ?」

「ああ、ヤツらに火が有効なのはわかったがとにかく数が多い、サモンも囲まれれば消耗する。俺のMPも次の階段まで保つかわからん」


「ここが限界かしら…」


「いや、策はある」


俺はアイテムボックスからブランクスクロールを出してファイアボールを込める。

一枚作ったところでレッサに階段の外で試したもらった。


「おい!凄いな。自分が魔法使いになった気分だ!」


よし。ゲームと同じくブランクスクロールに詰めた魔法は魔力に関係なく誰でも使えるようだ。

俺はブランクスクロールにどんどんとファイアボールを詰めていく。

80枚くらい作っただろうか?

MPが半分になったところで青ポを飲み、さらにアイテムボックスからマナクリスタルを出し左手に持つ。


「ちょっとMP回復する」


そう断ってから魔法を唱える。


「メディテーショーン」


俺の頭上に虹色の光の球が浮き上がり回り始めた。


「何?」

「ああ……ウィズの魔力回復魔法…です。本当にあるんだ、凄い」


キックが眩しそうに俺の頭上を見つめていた。

大量に作る→魔力回復、を3回ほど繰り返しファイアボールのスクロールを200枚ほど作った。

それぞれに10枚ずつ渡す。

キックとナオリンは自分のアイテムボックスにしまった。

残りは俺のボックスにしまった。

先頭を進むレッサに渡したかったが、クルクルと巻かれたスクロールは嵩張るのでアイテムボックスがないレッサには持ちきれない。

なので俺が直ぐ後ろから渡していく。



「燃やしながら進もう。ただし横と後ろはよっぽどの事がない限りは無視で。とにかく前方の大群を燃やして通路を進む」


「なるほどね」

「通路がもっと狭かったら簡単に殲滅できたのに」

「とにかく前方を派手に燃やしながら走り抜ける。皆遅れずに着いてきてくれ」

「先頭がレッサで直ぐ後ろで俺がスクロールを渡す。キックとナオリンは離れずに着いてきて。マップで扉のマークを探してくれ。キシェはしんがりを頼む」

「わかったわ」「はい」「オケ」


全員にヘイスト魔法をかけた。キングさんにもかけた。

サモンも出した状態だが、途中で着いてこない場合は置き去りだ。スマン、キングさん。



そうして俺達は12Fの扉のマークを見つけた。

ファイアボールのスクロールは残り78枚。結構派手に燃やしたな。

実はドロップが結構落ちたのだが拾う暇がなかった。

そこらじゅうにお宝を落としっぱなしだ。

拾わないドロップはどうなるんだろうか?そのままか?地面に吸収か?

目についた魔法書だけは杖で突ついて拾える限り拾った。

ヒール2冊とファイアボール1冊とライトニング1冊。

俺の魔法書と混ざらないようにキックに預かって貰っている。

魔石……拾いたかった。


俺たちは階段で休憩をとり、トイレだけ壁の直ぐ外で慌ただしく済ませた。

地上ダンジョンと違い壁の近くまで魔物が来そうで恐怖だった。(実際はそこまでは近くには来なかった)



俺たちは『12F』に降りた。

俺が天井にライトを放るのと同時にレッサが叫んだ。


「オークだと?」


オークが?と思ったが、目が濁り臭かった(死臭がした)。


「オークゾンビか」


レッサが直ぐに言い直した。

地下がアンデッド系なのはわかったけど、匂いに閉口した。

どの階も臭すぎる。

ドロップに肉が無くて良かった。あっても拾いたくない。

あと、しばらく肉は食べたくない。新鮮な野菜と果物が良い。

何か変な匂いが鼻にこびり付いている。


13Fよりここ12Fの方が魔物が強くなるのだが、さっきのゴブリンゾンビの大群よりずっと楽に感じた。

一体一体は強いのだろうが数が普通、さっきに比べて全然少ない。


銀矢や銀剣で皆サクサクと倒している。

サモンのキングさんは同族だからどうだろうと少しだけ心配したが問題なくフンスと倒していた。


よかった。

オークゾンビもさっきぐらいの大群で来られたらここで終わりになるところだ。


あ、そうだ!魔法を試そう。

ゲームではアンデッドに「ヒール(回復魔法)」は効果があった。

ここではどうだろう?

近くに来たオークゾンビにヒールかけた。


グハッ


オークゾンビが倒れた。うん。ヒール有効だ。

ファイアも有効。よく燃える。


「ターンアンデッド!」


あれ?倒れない。

もう一回。


「ターンアンデッド!」


ん?ダメか?


「ターンアンデッド」


バァン!

オークゾンビの頭から何かが抜けた。

しかし、オークゾンビにターンアンデッドが効きづらいのがわかった。

MPと魔石が勿体無いからオークゾンビは火で倒すに限るな。

そう、ターンアンデッドも魔石を消費する。


今まで確認したところでは、魔石が必要なのは、

カウンターマジック (魔法攻撃を一回のみ100%防ぐ)

メディテーショーン (MPを回復を速める)

ターンアンデッド  (アンデッドを浄化する)

の3つだ。


アンデッドは魔石をよく落とすが、アンデッドを倒すのに魔石を使う魔法を乱発するのは本末転倒だな。


そうこうしていると11Fへの階段の扉をキックが発見した。

階段で休む。


「11か10に安全域が欲しいわね」

「そうだな、10Fまで行って安全域が無かったら街に帰還しよう」



『11F』に降りた。


残念ながらセーフティゾーンではなかった。

ここの魔物は、レイス。


幽霊のように半透明で浮遊しつつこちらに攻撃をしかけてくる。

物理攻撃が効きづらい。

銀矢、銀剣を使っているが、全く効いていないようではないが倒すのに時間がかかる。

オークさんも手を焼いているようだ。


オークキングをしまい、大精霊をだしたが、風の大精霊はレイスと相性がよくないようだ。

風で地面に落としてもするりと上空に逃げてしまう。


「ターンアンデッド!」


シュボッ


お、一発で効いた。


「ターンアンデッド!ターンアンデッド!」


シュボン、シュボボ


おお。ターンアンデッド効きがいいな。


「物理が効きづらいから魔法攻撃が良いかもしれん!」


俺が叫ぶと、さっき渡したファイアボールのスクロールを皆使い始めた。


ボボボっ


おお!燃えてる、やはり魔法攻撃が有効なのか。


「足りなかったら声かけてくれ!」


レイスはそこまで数が多くなかったので、淡々と進んでいった。

もちろん、ドロップを拾いながらだ。

そして10Fへ到着した。


『10F』、待ち望んだ安全域、セーフティゾーンだ!


一応ざっとだが広場を確認して簡易トイレと寝床を設置した。

広場の明かりはキックとナオリンが点けていた。

うん、覚えたら使いたいよな。


俺は山さん経由でゴルダに連絡をしてもらった。

きっとゴルダはヤキモキしている事だろう。

無事な事と、10Fのセーフティゾーンまで来た事を伝えてもらった。

今夜はここに泊まり、明日行けるところまで行くと。

各階の詳細は戻った後にレッサ達が話すだろう。


安全だとは思うが一応キングさんに警戒を頼んで俺らは食事をしたら直ぐに寝入った。

心身共に疲れていたみたいでグッスリと寝てしまった。

途中、サモンを交代させるためのアラームをかけていたのだが、寝ぼけていたようで、朝目覚めたら、ゴブリンが3体が枕元にいて驚いた。

俺の叫び声に驚いて起きたレッサがゴブリンを3体倒した。

……俺のサモン。

俺、寝ぼけてゴブリンを出したようだった。

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