第105話 ゴブリンの氾濫 第一作戦

ゴルダと部長らを連れて西門へとテレポートした。

部長らを西門に残して俺は迷路岩にテレポートする。

冒険者が待機しているポイント1〜5のブックマークの補正をした。

それからまた西門に戻り、夜明けを待った。


西門前にはランクDの冒険者達が20人ほど待機していた。

それ以外のDは残りの三ヶ所の門や街の中の要所に待機しているそうだ。

皆、緊張して夜が明けるのを待った。




空がうっすらと明るんできた。

ゴルダは通信班に何か指示を出した後、俺に向かって言った。


「頼む」


「わかった」


俺も慎重な顔つきで返事を返し、テレポートをした。

まずは例の林前の草原へ。



「おっと、さっそくゴロゴロいるぜ」


林と草原に挟まれ少しだけ開けた場所、ここから右方向へ突っ切ると迷路岩だ。

そこには既にゴブリンが10匹くらいいた。


突然現れた俺に驚いたようだがすぐに俺に向かってきた。

とりあえず走る。

迷路岩へ。


予定では召喚魔法で“ライカンスロープ”を出し、俺を担いで走ってもらうつもりだった。

ライカンスロープとは、身長が2メートル以上の巨体で全身毛むくじゃらの二足歩行のオオカミみたいな魔物だ。

ライカンスロープはサモン(召喚)できる魔物の中で群を抜いて足の速い魔物だ。


テレポートした場所にゴブリンがいたためサモン魔法を使う余裕がなかった。

一回引いて、迷路岩で処理してもらい、そこで召喚しよう。

とにかく今は走る。


地点1が見えてきた。


「行くぞぉぉ、後ろの方から4、5匹たのむ」


大きな声で叫んだ。


「おお!」「まかせろ」


冒険者からの返事が返ってきた。

全部のゴブリンが地点1の冒険者の方に向かわないように、

一旦スピードを緩めて自分に近い4、5匹を杖で叩いた。

うわっ接近戦はやはりビビる、武者震いが出た。


今回持っている杖は”マナスタッフ“だ。

竜の慟哭の子らとやったときは”フォーススタッフ“だった。

”フォーススタッフ“は物理的な”力“を上げてくれる杖だ。

”マナスタッフ“は相手のMPを吸ってくれる杖だ。

ゲームではウィズ御用達の2本。

ゲームをやめるときに“街の倉庫”に入れてたら、今、ここには無かった。

持っててよかった。


マナスタはMPを吸うのがメインなので相手にさほどダメージを与えない。

今回にはうってつけの杖だ。


地点1の冒険者が後ろの5匹をうまく引いて処理にかかってる。

俺は残りの5匹をひいて地点2へ。




「5匹ぃぃ、行くぞおおおお」


「ほいよ」「任せな」


地点2の冒険者の意気のいい返しが聞こえた。

ゴブリンが冒険者の方に全て移ったのを確認して、サモン魔法を使った。


「サモンモンスター!ライカンスロープ!」


あ、3匹出ちゃった。

ゲーム同様に一回の召喚で3匹出るのか。

まぁいいか。


1匹に俺を担ぐように言い、ライカン三匹と共にスタート地点へテレポした。


うわっ、相変わらずウジャウジャいるな。

俺に気がついたゴブリン、2、30匹が寄ってきたのでそのまま引いて俺を担いだライカンを走らせる。

残り2匹のライカンにはその場所で林から出てくるゴブリンと戦うよう命じた。



ゲームでのサモンの召喚時間は10分だった。

命じていればその間は戦い続ける。

10分経つと、もしくは相手に殺されるとその時点でサモンモンスターは消滅する。

この世界ではどうなんだろう?


ライト魔法はゲームで30分のところ、この世界では4時間程もった。

単純に8倍…とまではいかなくても、10分でなくもっと持ちそうな気がする。

とはいえ、大量のゴブリンに囲まれたらそうも言っていられないだろう。



離れたところで戦っていてもサモンが消えるとステータス画面で見れる。

現在はステータスにサモンのHPバーが3本表示されている。

サモンが消えるとそのバーも消えるのでわかる。

ちなみに俺のウィズとしてのINTで出せるモンスターは三匹が限界だ。

そして恐らくゲーム同様、死ぬか消えるかしないと次のサモンは出せないだろう。


そんな事を考えていたら迷路岩が近づいていた。


次は地点3から行く事を念話で部長経由でゴルダに伝えてある。

30匹近く引いてるから、3、4、5と周ったあと、1、2に戻ると伝えてある。


迷路に突入した。

1、2の冒険者には身を隠していてもらう。



「さん、行くぞおおおお」


3を通り過ぎる。

最後部あたりの数匹が叩かれて持っていかれた。

よし。うまいぞ。


ただ、引く数が多いと杖で叩くのが届かない。

近場の5、6匹はマナスタで叩いてあるので俺から離れないが、

それ以上後ろは叩くのが難しい。


が、ライカンに荷物のように担がれているので後ろがよく見える。

MP消費の少ないレベル1魔法、ウインドショットを後方のゴブリンに向けて放つ。


「ウインドショット、ウインドショット、ウインドショット」


パシュ パシュ パシュ


「ウインドショット、ウインドショット、ウインドショット」


パシュ パシュ パシュ


「ウインドショットウインドショットウインドショットウインドショット はあ、面倒くさい」


パシュパシュパシュパシュ


一匹ずつ当てるの面倒くさいな。たまに外すし。

レベル1の範囲魔法なかったっけ?

ゲームから離れて10年近い……。

ううむ 思い出せん。


事前にちゃんと確認しておけばよかったぜ。

次を引いてる時にステータスで確認するか。


「つぎぃ、よん、たのむううう」


「「「「「おおお!」」」」

地点4から冒険者が出てきてゴブリンを倒し始めた。


まだタゲをとっていない後ろのやつが釣られて行きそうになったので慌てて魔法かけた。


「ウイショウイショウイショウイショウイショウイショウイショウイショウイショ」


パシュパシュパシュパシュパシュパシュパシュパシュパシュ


魔法の詠唱を端折ってもちゃんと出るな。

よしよし。

ほぼ全員…全ゴブに当てたから、あとはこのまま運んでいこう。


「5番、行きまあああす」


「ほいよ!」

「待ってた」

「さあ来い」


地点5で数匹とってもらい迷路岩から出た。

ぐるりと回って地点1へ向かう。

あと10匹くらいだから、予定通り1、2で落とせるな。




引いてるゴブリンが全ていなくなるとテレポートでスタートの草原へ飛び、また引いて迷路岩へ向かう。

草原に残してたライカンスロープ達はいい仕事をしてくれていた。

ゴブリンの死体がゴロゴロあった。


そこを通り過ぎる際にライカンにヒールを当てておいた。

一緒に戦うサモンを常にヒール(回復)するのは基本だからな。

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