第93話 開拓村の社員12人
マルクをアリサに預けてそろそろギルドへ戻ろうかと思っていた時、
シスターダイアンが部屋にやって来た。
シスターは部屋の中を見渡して山川部長を見つけると、部長を連れてすぐに部屋から出ていった。
何か嫌な予感がしたのでふたりのあとを追った。
シスターと部長が入った部屋に俺も入った。
そこにはザイアス司祭がいた。
「今、神殿の方に開拓村から70人が到着したそうです。魔物の氾濫に備えて街への避難となったので、一時的に神殿預かりになるそうです」
「開拓村からこの街まで徒歩半日くらいだっけ。ギルド動きが早いな、さすがゴルダ」
「もしかして教会でも預かる事に?」
ウゲェ、開拓村組が来るのかぁ。
土屋達とのファイティングでヘトヘトなのに嫌だなぁ。
「うむ、教会で半分ほど預かって欲しいと言われました。私たちは今地下へ移っているので、上の部屋はどうぞお使いくださいと申し上げました。食事は神殿の方で面倒を見てくださるそうです」
「そうですか、よかった。これ以上は私たちも生活がまわらなくなりますから」
「それで? 私が呼ばれたのは?」
部長が眉間に皺を寄せて聞いた。
うむ。俺も気になってた。
神殿から全員が出た事でようやく部長はお役御免になったというのに、
開拓村組が一時的とは言えまた戻って来たのだ。
部長としては勘弁してくれ、といったところだろうな。
「私はもう彼らの長としての役割を終えたと思っています。彼らの取りまとめはもう…」
そこまで言って部長は突然口を閉じた。
そして眉間に皺を寄せて再度口を開いた。
「開拓村から70人?開拓村にはうちから80人が行ったはずです、あとの10人は?」
「開拓村から避難してきた70人のうち58人はもとから村にいた者です」
ザイアス司祭が深刻そうな顔で告げた。
「?」
どういう事だ?
「貴方達と同じ界渡りでいらした稀人で開拓村にいた80人のうち、今回街に避難して来たのは12人です」
「12人だけ? どう言う事です? 68人は村に残ったのか?」
「いえ…」
司祭はとても言いづらそうにつづけた。
「68人の方々は、一緒には来られなかったそうです。くわしくは神殿にいる方々にお聞きになった方が…」
そう言い司祭は部長を連れて神殿の方へ歩いていった。
俺も後に続いた。
司祭の入った部屋には5、60人くらいの人が床に座っていた。
子供連れの家族のような集まりがいくつか。
おそらく開拓村にもとからいた村民だろう。
バラバラと壁に寄りかかって座っている人たちは汚れているが黒髪で見るからに日本人、服はボロボロになっていたがかろうじて日本で着ていた物とわかった。
髪も肌も汚れて浮浪者のようでパッと見、誰が誰だかわからなかった。
が、なぜ、12人?
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