第53話 借家住人がふたり増えた

ギルドに登録して仕事をする事、家を借りてそこに3人で住む事を山川部長に報告した。

部長はなるほどと頷いて、そこらに転がって寝ている社員達にもギルド登録を勧めに行った。


俺たちは部長への報告も終わったし借家へ帰ろうか話していた。


「3人で住むの?

男手足りなくない?

部屋余ってたら俺達もいれてよ」


石原さんが人懐っこい顔でねだってきた。

石原さんは見た目は結構細マッチョだが身体を動かすのが大好きという体育会系で、だけど脳筋というわけでもなく実は仕事でもシステム系で活躍していた。

何でも興味があると積極的に食い付くタイプだ。


普通だったら「図々しいな」とスッパリ切ってしまう事も、石原さんのニコニコ顔でお願いされると、

「しょうがないなー」とこちらも折れてしまうという、ある意味お得なスキル持ちだな。


石原さんは「俺たちも」と言った。って事は、石原さんだけでなく織田さんもって事か。


「え?そんな、僕まで悪いです」


と、こちらは真面目に困り顔の織田さん。

織田さんは真面目だけど四角張ってない、とてもソフトな男性だ。

言葉遣いや態度がいつも柔らかくて丁寧で、係を越えての仕事の相談事もまったくこだわりなくのってくれたりする優しい社員だった。

こんな人の下で働きたかったよ。

ちなみに既婚者で奥さんがフランス人で可愛い子供がふたりいる。


「一緒に住みたい」と、他の社員から言われたのであったら即「NO」と答えるところだが、石原さんと織田さんはやまとの社員の中では数少ない信用している社員さんだ。

うぅむ……。


「え〜と、部屋は3つ空いてるけど、どうしましょう、かのさん」


やまとの社員を避けている俺を気遣って、中松さんが聞いてきた。

実はひと部屋は予定を考えていた。

昨日街で会った孤児のアリサとその兄弟に住んでもらおうかと思っていたのだ。


この世界の事はわからない事が多い。

身近にすぐ聞ける人がいたら便利だと思っての事だ。

ラノベみたいに孤児を救おうとか孤児院作ろうとかじゃないからな!

まぁ、アリサにはまだ何も聞いていないのでどうなるかはわからないが。


うん、


「とりあえず2部屋は確実に空いてるから、ふたりに来てもらうか

俺以外にも男性がいた方が心強いだろ?どう?」


中松さん達に問いかけるとふたりとも快く同意してくれた。

そういうわけで、俺、中松さん、大森さん、石原さん、織田さんの5人は一緒に住むことになった。


5人で神殿を出た。


一応、部長にも声をかけたが、山川部長は残りの皆が自立するまでは一緒に神殿にいるそうだ。

残り全員が独り立ち?

‥‥‥そんな日 くるのか?



床でヘタレている社員さんを見ていると旅立ちは永久に来なそうだけど?

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