第9話 資料庫でこっそり魔法使ってみた

そういえば、魔法、使えるの?

ステータス画面のスキルに魔法あったよな?

ふふふふ。



ゲームの中のウイズが一番最初に覚える魔法を唱えてみた。

もちろん開いた手のひらを頭上に高く振り上げるという身振り付きで。


「ライトぉ!」


パアァァァァ


資料庫が明るくなった。


マジかマジかマジかまじか!

魔法「ライト」が使えた!

うおおおおおお、生まれて初めて魔法使った…。

宙に浮かぶライトをしばらくながめて感動に浸った。(目がチカチカした)



せっかく資料庫が明るくなったのだけど、この部屋には鏡がない。

WIZ服を着た自分を見たいんだけど。

トイレに行けば鏡はあるが、誰かに会ったら嫌だなぁ。


こんなわけのわからない状況の中、こっそりコスプレしてる派遣ジジィとか、痛い噂が立ちそうでカンベンだな。


あ!いい事考えたぞ。


とりあえずWIZ服はしまってぇ、トイレに行ってみて誰もいなかったら、「ライト」つけてWIZ服を瞬間装備、そして鏡で確認するのだ。

どうよ?俺、賢いぜ。


パンツ一丁で笑っていて気がついた。


「そういえば、俺の着てた服はどこいった?」


床に落ちてはいなかった。

アイテムボックスを確認したらちゃっかり中に入っていた。

アイテムボックスから直接装備すると、着ていた服は入れ替わりにボックスへ収納されるようだ。

よかった。

落とした服を誰かに拾われたら恥ずかしいもんな。


ん?

リアル服が収納されたということは、もしかしてゲーム以外のアイテムも収納可能か?


確認したい事がまだまだたくさんあるが、今は一旦服を着よう。

そしてトイレへと向かうのだ。



真っ暗な廊下に出たら、ライトがふよふよとついてきた。

ああ、そっか。

ゲーム内の魔法「ライト」は唱えた者の頭上についてくるのだ。

しかたないのでそのまま廊下を進んだ。

明るくなった廊下を進みフロアの中央のエレベーターホールを横切り、

その裏の男性用トイレへと向かった。


トイレに入ろうとした時、ふと違和感を覚えた。



トイレ前の廊下の先、突き当たりにある西側の事務室のドア、さっきまで「ステータス!」だの「フレンド登録」だのと社員さん達が騒ぐ声がドアの外まで響いていた。


だが、今はシーンとしている。

何でだ?


また声も出せないような驚愕事件でも起こったのか?

それとも部長か副部長が今後の方針でも話しているのかな?


みんなに注目されないように事務室のドアをそっと開けて部屋に滑り込んだ。



そこには 誰も いなかった


え?

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