第14話

 魔王が倒れ、本拠地が潰され、何もかもを失った魔族の軍勢は一か月ほどで全滅。

 本当に生者が誰も残っていない……完全なる殲滅だ。

 ドレシア帝国皇帝、アレティア・フォン・ドレシアとフェルジャンヌ王国国王ララティーナ・フォン・ドレシアが連名で魔族の完全消滅の宣言を出したほどだ。


 世界大戦から始まり、魔族との戦争。

 全ての人類を巻き込んだ長かった争いもようやく終わった。


「……なにこれ」

 

 全てが終わった後はどうするか。

 急に大権を得た僕に嫉妬を抱く王国内の貴族たちを先導し、自分を越権行為で咎めさせ、そのまま強引にララティーナとの婚約を破棄。

 自身の作った商会で稼いだ莫大な金を手に、楽隠居を送る計画が僕の中にはあった。


「見ての通りよ」


 だが、そんな僕の計画が今。

 目の前で崩れ去ろうとしていた。

 

 自身の前にいるララティーナとアレティアの二人から渡された一つの書類……国際連合構想が書かれた紙を前に僕は体を震えさせる。


「……嫌だよ?」

 

 僕は半ば答えを察しながら


「拒否権はないわ。ドレシア帝国とフェルジャンヌ王国を世界的な機関にしたのは誰かしら?」


「これを断って……この世界でまともに生きていくのは少し諦めた方がいいかもしれません」


「な、なんで君たちが……」


「これが私の奥の手よ」


「どうせノア様は逃げてしまうでしょう?ですので、逃げられないようにしてみました」


「……」

 

 国際連合構想。

 二度とこのような災禍が起きないようにするため、世界を一つにしようという壮大な計画である。

 が、こんな理念は本題じゃない。おまけだ。

 

 本当に重要なのはその国際連合の総長にドレシア帝国皇帝とフェルジャンヌ王国国王の夫であるノア・ラインハルトを推薦すると言うとんでもない文言である。

 

「……正気か?」

 

「正気よ」


「絶対に逃がしません」


「……作戦ミスったわぁ」

 

 この世界の頂点である二人に睨まれて無事でいられる人間などいるのだろうか?いるわけがない。

 この二人が組むのは完全に予想外……。

 最後の最後で僕はチェックメイトを喰らったのだった。

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