第44話

 病を抱え、体調を崩していたフェルジャンヌ王国の国王が自分の娘へと王冠を譲り、隠居。

 ララティーナがフェルジャンヌの国王となってから早一ヶ月。

 

「……むむぅ」


 ララティーナとの婚約を発表し、フェルジャンヌ王国内においてかなりの権力を持つようになった僕は今、王城のほうで事務作業に当たっていた。

 王国内における権力基盤は既にララティーナが整えており、僕が自由に国を動かすための席も権力もララティーナが整え済み。

 自分ではなく他人が作った席に座るのはなんとなく居心地が悪い。


「まぁ、使えるものは使うけどね……」

 

 やらなきゃいけないことはたくさんある。

 アレティアに散々荒らされている戦線の整理に、フェルジャンヌ王国に寄せられる各国の支援要請。

 既に降伏済みであるルルド魔導帝国とフォレンク王国という二つの大国の処遇に終戦に向けた根回し並びに下準備。

 

 それらの作業が裏からではなく表立って堂々と出来るようになったのでまだマシにはなったが、それでも作業量が多いのは変わらない。

 帝国内の勢力図が塗り替わるまで僕の休みは続く。


「……んー。問題はアレティアが何時動くかだが……こんな中途半端なところじゃ動かない。動くべきは完全に全ての息の根を止められる時……」

 

 僕はアレティアのことも考慮しながら作戦を建て、テキパキと部下への指示書を作っていく。

 そんな作業を僕がやっているときだった。


「ノア!今日も盗賊を捕まえてきたぞ!仕事の割り振りを頼む!」


 ノックもなく扉が開かれ、一切遠慮のない言葉が僕の執務室に響く。


「……またか」

 

 元気よく部屋の中に入ってきたアレスにリリルにレース、リリを前に僕は思わず眉を顰めた。

 

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