第55話

「僕の計画の最終目的地点は人類が一致団結出来る状態を作ることにある」

 

 魔王の襲来が確定しているこの世界で人類の団結が出来ないような状態にあるのは不味いだろう。


「だが、普通の手段でそんな状況を作るにはあまりにも時間がかかりすぎる。今、この世界にくすぶっている火種は長年の歴史が徐々に大きくしてきた巨大な火種だ」


 民族問題、宗教問題、領土問題。

 うちの家を始めとした各国の優秀な外交官が爆発しないよう細心の注意を払いながらなんとか平和な状態を保っていたが、そろそろもう限界だ。

 限界を迎えつつあるこの世界で人類の一致団結なんて不可能。


「故に、一度盛大に爆発させてしまうのだ。維持なんて面倒なことしないでね。人類を一致団結させるなんて不可能。なら、上から強引に一致団結させるだけ」


「……フェルジャンヌ王国では全世界を支配下に置くのは厳しいかと」


「だからこそ、ドレシア帝国と協力する」

 

 僕がアレティアと一緒にいるのはそれが理由だ。

 

「僕の計画はものすごく簡単だ。世界中で火種を爆発させ、世界中で戦争を勃発させる。その戦争にフェルジャンヌ王国とドレシア帝国を参戦させ、共に世界をパイ分けする」


「ドレシア帝国内でクーデター、属国の反乱を誘発させることでちょうどいいタイミングでフェルジャンヌ王国よりも強国であるドレシア帝国を戦争からフェードアウトさせ、最終的にドレシア帝国とフェルジャンヌ王国の影響力下にある国々の国力が同じくらいになるようにし、フェルジャンヌ王国自体もドレシア帝国に匹敵する国へと成長させる」


「二つの大国が互いに睨み合い、相手の国に対抗できるよう自分の影響力下の国を強引に自分の色に染めさせる……こうすれば人類をドレシア帝国とフェルジャンヌ王国の上に立つ人間が自由に動かせるようになる」


「ノア様がフェルジャンヌ王国の上に立つためには私と結婚し、王族になる必要がありますね。私が国王になればノア様の傀儡に喜んでなりますよ?」


「……んん!それで、だ!戦争を引き起こすためにリーミャ王国とルクス連合の仲を引き裂いた。現在進行形でルクス連合は自分の国の味方を探そうと躍起になって各国と関係を持っている。それを利用させてもらうのさ。ルクス連合とドレシア帝国は既に繋がっているしね?」

 

 アレティアは既にセルフィオとリリカルの父親に接触している。

 二人は何も知らない間に自国の運命を大きく変えていた。


「フェルジャンヌ王国がバックにいるとリーミャ王国とドレシア帝国がバックにいるルクス連合が戦争を起こせばそのまま大戦争に一直線。ルルド魔導大国を強引に戦争へと引きずり込む準備も既に出来ているしね。まぁ、僕の計画はこんなもんだよ」


「……?肝心のドレシア帝国との関係はどうなっているのでしょうか?ノア様の計画的にドレシア帝国と我が国が裏で手を組む必要があると思うのですが……その方法はどこにあるのでしょうか?」


「え?そこに気づいていないの?僕はドレシア帝国の第一皇女であるアレティアと既に関係を持っているのだけど……あれ?というか、今更だけどララティーナ王女殿下は一体どこまで嗅ぎつけていたの?」

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