第44話

「やめる……?やめるわけがない。どんな手を使ってでも私はノイと添い遂げてみせる」


「……困るんやが」


 僕はアーテの言葉に表情を引き攣らせることしかできない。


「そんなの私の知ったことではないよ」


「愛の押し付けは良くないと思うのだけど」


「ふふふ。私に愛を向けさせる方法などいくらでもある。私が勝利し、私の夫としてノイを迎え入れた際は私だけしか愛せなくしてやろう。なぁに。脳を弄ろうとしているわけじゃない。そんなに怯える必要はないよ」


「……常人じゃ思いつかないような洗脳を仕掛けてきそうで怖いんだよなぁ」


「ふふふ」

 

 僕の言葉にアーテは笑みを漏らす。


「僕の人生は僕が決める。アーテの夫になんかならない」


「私が認めない」


「僕だって認めないよ」


「ふふふ。実に単純な構造になったじゃないか。私が勝ったらノイを手にし、ノイが勝ったら自由を手にする」


「僕に利点ない……いや、自由は自分で勝って初めてつかみ取れるものか……」

 

 僕の目的であるハーレムを作って女の子を囲んで好き放題してすること……その障害が一つ増えただけとも言えるし。

 この障害が一番デカいな。

 でもまぁ、僕の人生の目標の一つに天才へと手を伸ばすってものがあるし、天才と正面きって勝負できるなら良いの、かぁ?


「良いね。うん……私は生まれて初めて本気で頑張ろうって思えるものが出来たよ。私の持ちうるすべてを


「あっ。でもちょっと待って。一つだけルール付けていい?」


「何?」


「人類を滅亡させないこと。これを一つのルールとして認めて。このルールが破られたら自殺するから」


 この勝負でアーテが魔族に協力しだしたら大変だ。


「あぁ……もちろん。わかっているとも。最初から人類を裏切るつもりなんてなかったけど、ノイに自殺するって言われれば更に裏切れなくなったね。でも戦争を引き起こすくらいは良いでしょ?」


「まぁ、それくらいなら」

 

 僕の言葉にアーテは同意してくれる。

 どこまで信じて良いかは未知数だけど、ひと先ずはこれで良いだろう。


「別に君たちの痴情のもつれとか興味ないけど世界に厄災振りまかないでね?人類の滅亡とか戦争とかちょいちょい物騒な話があるから……」

 

 僕とアーテの会話を側で聞いていたセルフィオが会話に入ってくる。


「「……」」

 

 そんなセルフィオから僕とアーテは揃って視線を逸らして口を閉じる。


「待って?二人とも?」

 

 

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