第27話、レベルイーターのコンサル
翌週、俺とイーターさんは京都金閣寺に向かう市バスに乗っていた。
金閣寺境内の
日本のダンジョン法ではBランク以上のダンジョンは全て国有である。
内部のダンジョン資源がそれまでのダンジョンとは桁違いに豊富だからだ。
そのため潜るには幾つもの申請手続きを済ませなければならない。
通常1か月以上かかるそれを、頬白さんは2日で通してくれた。
国内でも最上位クラスの探索者という信用とコネがあるからこその手際の良さだ。
ちなみにライド料金の前払いと手数料や頬白さんの滞在費モロモロの支払いで、既に500万円くらいかかってる。
この500万は借金した。
ここで稼げなかったら、俺はいよいよ破産だ。
緊張する。
やがてバスは金閣寺前に到着した。
かつてここは関西でも有名な観光地だったらしい。
今は一つの巨大な基地のようだ。
寺の周囲にはバリケードが幾重にも張られ、一般人は入る事ができない。
境内には機動戦闘車や自走砲や装甲車の他、ヘリコプターやミサイルを載せた重装輪車が何台もある。
最も有名な金色のお堂(
そして、一番奥。
かつては景勝地の一つとして有名だった池の水が無くなっていた。
Bランクダンジョン『
池の淵から覗き込むと、底にぽっかりと黒い穴が開いているのが見えた。
ちょうど自然の洞穴みたいな形だ。
ここは完全な国有ダンジョンなので、ダンジョンセンターは無い。
代わりに近くにある自衛隊桂駐屯地から来た隊服姿の探索者チームが、24時間態勢でダンジョンの入口を監視している。
見上げれば戦闘機も二機上空を飛んでいた。
警戒レベルは市ヶ谷の防衛省どころじゃない。
これから戦争始まりますって感じだ。
「お疲れ様です!」
頬白さんの姿を見るなり、付近を警備していた隊員たちが片手を上げて敬礼する。
そんな彼らに向かって頬白さんも敬礼をし、ニコリと微笑んだ。
頬白さんは軍人じゃないはずなんだけれど、上位の探索者は上官みたいな扱いになってるのかな?
その辺りは分からない。
「頬白さん、お疲れ様です。
今日も潜られるのですか?」
やがて隊服を着た中年くらいのおじさんが護衛の自衛官の人と一緒にやってきて、頬白さんに挨拶をした。
かなり偉そうな人だった。
階級とか分からないけど、ブレザーの両胸にバッジとか色々つきまくってる。
「うん。彼のレベル上げでね」
頬白さんはそれだけ言うと、挨拶もそこそこに水の枯れた池の底へと向かって歩き出した。
俺も後を追う。
池に近づくと、途端に肌がピリつき出した。
魔素の影響だ。
ダンジョン内の魔素が強すぎて、外まで影響が出ているのだろう。
見ればダンジョンの入口も湾曲している。
空間がねじ曲がっているのだ。
これがBランクダンジョン……!
魔素の密度的に、もうライムバードぐらい出てきてもおかしくない……!!
「眠くん、大丈夫かい?
体が震えているよ」
頬白さんが振り向いて俺に言った。
確かに俺の体は震えている。
「そうですね、正直震えちゃってます……!」
「フフ。
無理もないね。
ここに来る探索者は誰もが怖気づく。
どうする?
引き返すなら今のうち……」
「頬白さん、早く行きましょう」
俺はそう言うと、率先して歩き出した。
もう居ても立っても居られない。
(だって楽しみ過ぎる……!
どんな強敵が出てくるんだろう……!
早くモンスターを狩りたい……!)
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