復讐の妖魔退治の少年

ryuu

第1話

「おめでとう」


「おめでとう、勇気」


 一人の黒髪童顔の少年の前に真っ赤なろうそくを突き立てた誕生日ケーキがあった。


 少年がまた一つ年を重ねたことを祝うために両親が準備してくれたケーキである。


 今日は少年、安生勇気が7歳になった誕生日祝いである。


 こんなにうれしい祝い事はないだろう。


 勇気もまた、大好きな両親に祝ってもらうことが嬉しく喜びを顔に満ちさせてろうそくの火を吹き消す。その絵を年齢に会わぬ幼い顔をした父、安生勇生がビデオカメラで撮影した。


 毎年恒例の家族行事の一環だ。


 電気をつけて明かりをともすのは勇気を安心させるような抱擁ある笑顔を振りまく一人の女性の存在。


 長い黒髪とスレンダーなスタイルの母、安生霧葉。


 勇気は父と母にお礼を言う。


「ありがとう、父さん、母さん」


 今日は楽しいな。


 「まだ楽しみはあるのよ」


 と言い残し、優しい母はキッチンのほうへ向かい小さな包みを持ってくる。


 勇気が待ちに待っていた誕生日プレゼントである。


 茶色の包装紙にくるまれた小さくて細長いものだ。


 まるでナイフくらいの大きさ。


 勇気はわくわくした。


 ある種の期待を抱く。


 もしかしたら、自分が前から伝えていたものがまさか入っているのだろうか。


 それはこのリビングルームの壁にも多く立てかけてある『武器』だった。


 母と父に暖かく見つめられながら家族愛を感じ入ってその包みをゆっくりと剥がしていく。


 ドキドキしながらその包装紙をすべて剥がすと、中から出てきたのは普段から父が愛用していた銀で出来たナイフだった。


 前から勇気が父にねだっていたものだ。


 それは父や母が武器収集家でもあるのに影響されて勇気も欲しくなってしまった。


 子供のような思考であろう。


 少年、勇気には母と父と同じになってみたいという気持ちが強かった。


 勇気にとっては両親は、いつも仕事で忙しいのにきちんと思いやって勇気のことを考えてくれる尊敬する存在。


 だから、それを父のモノであったとしても、尊敬する人から譲り受けたということが何よりも大事で嬉しくあった。


 おもわず、歓喜に身体が震えた。


「いいの!?」


「ああ、もう7歳だ。そろそろ持ってもいいだろう。だが、気を付けて使うんだぞ。むやみに学校とか外では出すな。もしもの時に使え」


 父の言葉を親身に受け取る。


 勇気にとっての父親は親身になって勇気の将来性を考慮してしっかりと支えてくれる思いやりのある偉大な尊敬する人である。


 父から、その将来性を支えるというように表現する遠回しの言葉をいただけた。


 父はあまり、感情をうまく出せない人なのは良く知っている。


 わかっていたとしても家族としてその父が言いたい気持ちはよく理解できた。


 これほどにうれしい日はないな。


 これからは父さんと母さんのことを精一杯助けていく努力をしよう。


 父の言葉に一つの決意を胸に決めて元気よく返事をする。


「わかったよ」


 それから、包容力があり勇気の心を一番に理解し、誰よりも勇気の味方である母がその勇気の手を握りしめる。


 今後の勇気のことを思いやるように暖かく抱きしめてくる。


「勇気、しっかりと今後のことを考えるのよ。一つ年を重ねたことはあなたにとって大事な未来が待っているということよ。それをお父さんから譲り受けたこともまたあなたの新しい道を切り開く武器なのよ」


 母の言葉の意味はよく理解できなかったが母が自分のことを思い、将来性を考慮してためになる言葉をくれているのはよく理解できた。


 その言葉に勇気は頷きながら、ナイフを嬉しさのあまりに天井へかざし、かっこよく決めて構えた。


 ナイフを譲り受けてもあくまでこれは収集家として保存用として保持する。


 一般的な家庭ではこんなものを手渡すのは不気味に思えるかもしれなかったが安生家にはこの手の道具が山のように家にあるので不思議ではなかった。


 特に勇気は前々から一つ武器を持ってみたいと父にねだっていたくらいだ。


 そして、今日一つの武器を手に入れたというよりも父から譲り受けた。


 心が躍る。


 銀色のナイフの刀身に彫られている痕跡が見えた。


 刀身を傾けて小首をかしげる。


 ナイフの刀身に彫り物とは珍しいと思えた。


 普通のナイフならばそのようなことはないのに譲り受けたこのナイフはどこか違う。


 何か文字が彫られている。


 勇気は不思議に感じたことを知っているであろう父に聞いてみた。


「ねぇ、父さんこのナイフ文字が彫られてるけどなんて書いてあるの? 英語みたいだけど……」


「ああ、それか。それは英語ではなくラテン語だ。「わたしはあなたと共にあり、あなたがどこへ行っても、 あなたを守り、あなたをこの地に連れ戻そう」だよ」


「えっと、どういう意味?」


 父は答えを返さず渋った顔をしながら、ゆっくりと息を吐いた。


 そして、母も父と目線をあわせるとゆっくりと頷いた。


 何か重苦しい空気を感じる。


 姿勢を正し、父と母の前に正座をする。


「そろそろ、勇気もいいころ合いだと思うから話そう」


「何を?」


「勇気にまずは謝らないとな。普段から、父さんと母さんは家に帰るのが遅く、いないこともほとんどだ。それは本当に申し訳ない」


「そんなのしかたないことだよ。父さんと母さんは仕事で忙しいんだから」


「まったく、お前はできた息子だ。だからこそ、真剣に聞いてほしい。お前ならわかってくれると思う。父さんと母さんは行っている仕事はこの世界を守るために政府から請け負っている仕事なんだ」




 普段から父と母は帰りが遅い。毎日のように二人の帰りを待つのが自分の日常。


 夕飯も出前が多くって寂しいときもある。


 だけど、帰って来た時の父と母はいつも自分に優しく接してくれて申し訳なさそうに謝る。


 いつも自分を孤独にしているそんな母と父だけれども勇気にとっては帰ってくれるだけでもありがたいししっかりと愛を感じ取れている。 


 謝る必要はないと思っていた。


 それに、仕事で大変なのもわかっている。


 二人は自分を養って、学校へ行けているのも二人のおかげなんだと理解している。


 忙しさは二人が自分に対する愛情の一つ。


 それに、わがままで二人を困らせるようなことはしたくもない。


 その大好きな両親が仕事について勇気は詳しいことを聞いたことはない。


 無言の理解とでも言うように家庭内では両親のことは詳しく問い出すべからずっていうのが暗黙のルールだった。


 でも、うすうす気づいていた。


 家にあるあらゆる武器が父と母の仕事に関係している。


 軍人や警察官、もしくは特殊な組織。


 そんな肩書をもっているんだろう。


 子供ながらに父と母の苦労な生活を気遣っているから、無理を言わないでずっと過ごしてきた。


 それに、誕生日の日はしっかりと祝ってくれている両親が大好きだから。


 大好きな両親が日本政府の役人だって言われたら納得もできた。


 それより真っ先に勇気は感動とあこがれを抱いた。




「せいふって、テレビとかでよく出てる黒い服を着ている人たちのこと?」


「そうよ、その人たちから依頼をされて仕事をしているの」


 母が苦虫を噛み潰したような顔でうけこたえる。

 

 勇気は母のその表情に疑問を一瞬抱いたがそれでも、テレビで黒い服の人たちが子供ながらにすごい存在だってのは自覚していた。


 だから、真っ先に両親の存在の偉大さに感動が勝った。


「すごい! 父さんたちはお偉い人だったんだ!」


「お偉い人とは違うが……まぁ、そういう人たちから直接的に特殊な仕事をもらっているんだ」



 特殊な仕事とまた妙にはぐらかす言い方をする父に勇気もここまで引き伸ばしにされるのは辛く正直にここまで来たなら語ってほしいという気持ちがあった。


 ここで、無理にせがんでも父と母を困らせたくないというのもある。


 それでも、今はもう子供ではないと思う勇気に語ってくれてもいいころ合いだと主張をしたい。


 だからこそ、勇気は問う。


「それってどんななの?」


「それは――」


 語ろうとした父の表情が急に強張った。


 なにがどうしたのだろうかと勇気が怪訝に思い問い返すと父は急に立ち上がり、母へ「地下室へ」と命じた。何かが不穏に始まっているのを子供ながらの直感で理解した。母と父は普段見ない顔つきをしていて怖い。母が勇気を連れて廊下へ出て地下室へ向かう。


 地下室へ勇気を閉じ込めた母は「まずはこれを渡しておくわね。あとはここでおとなしくしているのよ、私たちはいつでもあなたを守っているからね」とたった一言だけ言い残した。


 その言葉はまるで別れの言葉のように感じ取れた。


 手渡されたものを見る。

 

 手に渡されたのは謎の正方形の形をした包みに入った何か。


 べりべりとはがして中身を確認した。


「なんだこれ? 本?」


 読んでみるとよくわからない祈りの言葉のような羅列ばかり。


「これって、学校の近くにある教会の人が良く配ってるのと似てる。でも、なんか少し違うような・・・最後の数十ページの文字はなんて書いてるんだろう?」


 最後の数十のページだけが見たこともないような文字で書かれていた。


 それは明らかに日本語ではなく、英語でもない。


 両親から多少の英語は学ばされていたので英語の知識もあったが、英語でもないのは即座に分かった。


「え」


 聖書の表紙はめくれるのだと気付いてめくるとそこには信じられない言葉が書いてあった。


『もしも、私たちがあなたに最後の言葉を伝えられなかった時のためにここに記しておくわ。私たちの生活でいつも聖書のお祈りの言葉をかかさなかったわね。あれはあなたを守るための呪文の言葉だったの』


勇気はバクバクとなる心臓。


信じられない遺言のようなその言葉を読み進めていく。



最後は裏のほうへこう書かれた文字。


『あなたに隠していたことがあったのはこの世には信じられない存在がいて、それをずっと私たちは退治していた。でも、ある時に母さんたちの一族は犯してはならないことをおかしてしまった。だから、この呪いがあなたをむしばめるかもしれない。ごめんなさい。最後にいつもあなたを見守って愛しているわ』

 

 何を言っているのか理解が追いつかないまるで遺言ともとれる言葉に焦りだした。


 焦りに始まった勇気は地下室の扉をたたき、母と父の名前を呼んだ。


 だが、返事はしない。


 先ほどの父と母の顔を思い出す。


 今に思うと何かを決意しているように見えた。


 本の言葉が嫌な想像に拍車をかけていく。


 地下室に取り残されて不安になりながら地下室の奥へ進む。


 暗くてじめじめしている。


 普段から両親がこの部屋には絶対入るなといわれていた開かずの間。


 どうしてかはずっとわからなかったが、今その要因がまさに分かった。


 地下室の中のランタンの光を灯した時、部屋のあちこちに幾何学な文字が刻まれていたり、不気味な本や道具、武器の類があった。




「なにここ……」




 恐怖。


 それは宗教的でもあればそれとは程遠いような真剣さが感じられる異様な光景差がある。


 オカルト好き、宗教一家で片づけられる言葉では足りない。


 魔術、魔法、悪魔学、神学などというタイトルの本が列を並べて目に飛び込んでくる。


 家では普段から聖書を嗜むように読まされていたけれど、それがこの真相だったのかと目を疑いたくなる。


 これは普段から読まされている聖書なんて比べ物にならないくらいのガチの古びた本もあった。


 そして、なによりも幾何学模様や幾何学図形は一体何を意味しているのか。


 一冊の本を試しに開いて読んでみればどこの言語かもわからない言葉が羅列していてちんぷんかんぷんであった。


 しかし、日本語で書かれた一冊のノートが目に入る。




「悪魔よけ? 封じの呪文? なんかよくわからない。父さんたちの仕事って何をしているんだ……」


 


 ページの一文を読みすすめた時、外のほうで悲鳴が聞こえた。


 間違えようもない。


 今の悲鳴は勇気を支えて愛し、ずっと傍で支えてくれている父と母の悲鳴だ。




「――父さん、母さん!」




 本を置き、地下への出入り口扉に向かった。


 扉を再び叩いて怒鳴り散らした。


 扉の鍵が複雑な構造をしていて開け方がわからなかった。


 よく見てみれば扉にも幾何学な文様が描かれていて不気味さを醸し出す。




「ここってなんだか……」




 思い浮かんだのはまるで何か異形のモノから身を守る要塞の部屋を想像した。


 扉を叩きつけるような音が響いた。


 おもわず後ずさる。


 扉をひっかく音が聞こえておもわず耳をふさいだ。


 ゆっくりと、扉が軋む音を立てながら開いていく。




「……父さん、母さん!」




 懸命に父と母を呼んだ。


 勇気の目の前に父が見えた。




「父さん!」




 勇気は父へ抱き着いた。




「父さん! さっきのなんだ――」




 それ以上の言葉は勇気の口からは出なかった。


 パッと見は父ではあるが、何かが違う。


 そう、直感が告げていた。


 父の雰囲気ではない。


 思考回路がそう感じていた時に、それを阻害するように右手に激痛が走る。


「イタッ!」


 手にしたナイフが光を帯びていた。


 勇気の左手に光が吸い込まれるようにして行くと、文字が勇気の右手に浮かんだが一瞬であった。


「今のは一体……」


 勇気は右手の裾を抑えて腕の様子を確認した時、不気味な触感が伝わった。


「え」


 ベチャリとした何か。


 それは赤い血だ。


 どこかけがをしたのかと焦ったがそうじゃない。


 これは自分の血ではなく別の誰か。


 恐る恐る目の前の父を見た。


 父の腹が真っ赤になっている。


 そして、父が何かを持っているのに気付いた。




「え」




 父が手にしていたのは母の首だった。


 勇気は頭が真っ白になって、泣き叫んだ。


 そして、ずっと手にしていたナイフを構えた。




「おまえ、誰だ! 父さんと母さんに何をしたんだ!」


「グヒッ、グヒヒヒヒッ!」


「ひっ!」




 勇気は相手の笑いに恐怖する。


 父の声ではない声で笑う何か。


 コイツはなんだ。


 父の姿をした何か。


 だが、姿が父ではうまく勇気もナイフで切りつけることはできない。


 ためらっている瞬間、勇気の体は突然に軽くなった。


 そして、重力に逆らったように天井へ叩きつけられた。


 背中からの衝撃で意識が揺らぐ。


 地上へ落下した勇気の頭を踏みつける父の姿をした何か。


 


「安生のガキか。グヒッ。おもしれぇ」


「父さん……母さん……助けて……助けてッ!」


「グヒヒッ、てめぇの父ならここにいんだろう? あ、母さんは死んだぞぉ? 俺が殺したからなぁ。グヒヒヒッ」


「っ!」


「ほら、この首で気づかねぇのか?」


 


 容赦なく、母の首を勇気の眼前に置いた。


 勇気は肺から何かが込み上げた。


 気持ち悪く、嗚咽を繰り返す。




「グヒヒヒッ、大好きな母の死体を見て苦しんでんのか? グヒヒヒッ、最高だねぇ。その苦しみこそ嗜好だよ」




 勇気の苦しみを見て、恍惚の表情を浮かべ堪能する父の姿をしたモノ。


 勇気の目の先に一冊の本が見えた。


 『悪魔の書』。


 勇気は昔に父が教えてくれた教養を教えてもらったことを思い出した。


 『悪魔や天使というのは空想で語られているがね勇気、実在する可能性は十分にあるってことを覚えておくんだ。普段は人の目には見えないで人の中に隠れて本性を隠してはいるがね、この世にはしっかりと実在している。それは善と悪としてね』


 その意味は当時は理解できてはいなかったが今なら理解できた。


 まさに、今目の前にいる存在こそが悪なる象徴とも呼べた。


 勇気にとっての悪魔。


 母と父を傀儡にしているのか、父の姿をしているのか。


 だが、わかった。


 これは父が語っていた通りの悪だ。




「悪魔……なのか」


「くひひっ! なぁーんだ、ガキ。知ってんのかよ俺たちをさ」




 勇気の首を掴み、持ち上げて締め上げていく。




「……父さん……父さん……どこだ!」


「お前の父なら目の前にいるだろうが」


「お前……父さん………じゃないっ!」


「いいや、お前の父さ。まぁ、今は悪魔である俺だけどな」


「…………父さんを返せ……父さん……返せぇええ!」




 勇気の右手は神々しく輝いた。


 その光に焙られたように勇気を拘束した存在は悲鳴を上げて勇気を解放する。


 まるで、その光が弱点であり嫌そうにして勇気を突き飛ばした。


 勇気は自ら発した光の原点を見る。


 腕に浮き上がっている文字。


 父と母が語り残した言葉だ。




「ぐぅう……コノガキィ……ぐがぁあ……がぁあ……聖剣……カァ」




 勇気は悪魔が苦しんでいるうちに地下室にあった一冊のノートを思い出した。


『悪魔よけ』『悪魔封じ』とか書かれていた一冊のノートである。


 急いでそのノートのおいてあるテーブルに向かい手に取った。


 めくりにめくって一冊のページ、唯一日本語であった場所を読み始めた。



「ぐがぁあああ……その呪文……くそが……いますぐやめろぉおお!」



 その手が勇気へ伸びたが勇気は逃げるように後ろへ下がる。


 すると、悪魔の体がそれ以上進めないのか動きを止めた。




「くそがぁあ……悪魔封じかぁ……ガキガァアア……ぁあああ……」




 勇気は床を見た。


 そこにはサークルのようなものが描かれている。


 この範囲から悪魔が出られないのを悟った。


 これもまた父と母が自分を守ってくれるように残してくれているものであると痛感する。




「だが……このままで……」




 すると、悪魔に変化が訪れる。




「ゆうき……逃げろ……」


「父さんっ!?」




 目の前の父の姿をした悪魔から父の声が出てきた。


 たしかに父の声だ。




「父さん、よかった無事で……」


「俺は悪魔にもう意識を乗っ取られている……いずれこのまま……」


「大丈夫! 僕がどうにかそいつを追い出すから!」


「……いきろ……ゆう……うっせぇ! 引っ込んでろ! はぁ、はぁ! いますぐてめぇをころす! クソガキャァアアア!」


「ふぐぅ!」




 悪魔は突貫し、口を掴まれてふさがれる。


 相手は悪魔で人の深奥意識に入り込み乗っ取る類の存在なのだろう。


 聖書にもあるように悪魔は人を篭絡し騙し、その身を朽ち果てさせる。


 今すぐ父を助け出さないと父は死ぬ。


 勇気は抵抗し、反撃する。


 その悪魔の掴んでいる手にナイフを斬りつけた。


 悪魔は今度は微動だにしなかった。




「そのナイフはもう効かねぇよ!」




 父の姿を借りた悪魔の貫き手、それは勇気の胸元へ迫った。




「死ねぇええ!」




 ―――パァン。


 一発の銃声が響いた。


 悪魔は身体を震わせながら、笑い。


 父の口元から黒煙を吐き出してどこかへ黒煙が去っていった。


 亡骸となった父がその場に横たわっていく。


 そして、勇気も意識が混濁へ。




「おい、大丈夫か! 緊急アラートが鳴ったから来てみればなんてことだ! クソッ!」




 勇気の視界に最後に映ったのは眼鏡をかけた知的な男性の姿だった。


 


 それから数年の月日が流れる――

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