第15話 検証の続き

▽第2話 検証の続き

 ログアウトして数時間、私は休憩することにしました。睡眠を取らねばなりません。せっかく、脱サラしたのにブラックでは辛いですからね。


 アトリのお陰でしばらくは金銭の悩みもございません。


 ベッド……もっと良いマットレスにしましょうかね。

 睡眠は人生の三分の一、というお話があります。現在の私はVRをする時もベッドに横たわっているので、なんと人生の三分の二がベッドです。


 これはアトリのためにもなる使い道でしょう。

 良いベッドを使えばゲーム時間も延びるわけですからね。


「お休みなさい、アトリ」


 スマートフォンに文字を打てば、即座に百通くらい返信が来ますが……起きてから返信することにしましょう。


      ▽

 掲示板を確認すれば、アトリが大人気になっていました。

 私のプレイも褒められているようですけど、あまり実感が湧きませんね。《スゴ》は実況プレイも可能ですから、動画勢やライブ配信勢がこぞってプレイしています。


 それを見るためのゲーム機も政府が配布しましたからね。

 今は未成年のゲーム実況者が悲嘆に暮れているらしいです。


 まあ良いでしょう。


 情報はなるべく秘匿したいですが(プレイヤーが強くなるということは、アトリがPKされやすくなる、という意味でもあります。手札が露呈するのも危険です)、必死に隠して何も遊べないのが最悪ですからね。


 ログインしました。


【ネロがレベルアップしました】

【ネロの闇魔法がレベルアップしました】

【ネロのクリエイト・ダークがレベルアップしました】

【ネロのダーク・オーラがレベルアップしました】

【ネロのHP自動回復がレベルアップしました】

【ネロのMP自動回復がレベルアップしました】

【ネロの鑑定がレベルアップしました】

【アトリがレベルアップしました】

【アトリの鎌術がレベルアップしました】

【アトリの農業スキルがレベルアップしました】

【アトリの光魔法がレベルアップしました】

【アトリの孤独耐性がレベルアップしました】


 寝ている間だに強くなりますね。

 アトリはきちんと寝ているのでしょうか。ちょっと心配です。寝ろと言えば寝るでしょうが、幼女の寝顔を何時間も見守るのはどうなのでしょう?


 久しぶり(体感です)にステータスを確認します。


名前【ネロ】 性別【男性】

 レベル【27】 種族【ダーク・スピリット】

 魔法【闇魔法31】

 生産【スキル未設定】

 スキル【HP自動回復30】【MP自動回復45】【鑑定4】

    【クリエイト・ダーク27】【ダーク・オーラ13】

    【敵耐性減少】【スキル未設定】

 ステータス 攻撃【135】 魔法攻撃【135】

       耐久【135】 敏捷【135】

       幸運【135】

 称号【未設定】




名前【アトリ】 性別【女性】

 レベル【30】 種族【ヒト】 ジョブ【神官】

 魔法【光魔法35】

 生産【農業40】

 スキル【孤独耐性38】【鎌術38】【スキル未設定】【スキル未設定】

 ステータス 攻撃【114】 魔法攻撃【210】

       耐久【177】 敏捷【213】

       幸運【150】

 称号【大罪・親殺し】

 固有スキル【殺生刃】


 情報が多すぎますね。

 高レベルのボスを単独討伐したので、だいぶレベルが上昇しているみたいです。


 新しいスキル、新しいアーツもたくさん覚えることが可能です。もうひとつずつ検証していくのは無理があるので、空き時間に確かめてみましょう。


 急ぎの仕事はアトリの職業を決定することです。

 私たち精霊は10レベル毎に契約者のジョブを変更可能なのです。ですが、20レベルを超過したのに、すでに30レベルになっています。


 まあ、神官でも悪くはなかったですけどね。

 しかし、50レベル以降は危険です。なんと上位職業を選べるようになるらしいですからね。ステータス補正も増えるので逃すわけにはいきません。


 というか仕様的にどうなんです?

 取り返しのつかない要素が多すぎますし、致命的すぎますよね。まあ良いです。その時に気をつけていれば良いだけの話。


「アトリ、ジョブ変更はしますか?」

「神官……良い感じ、です。かみさまを敬いたい、です」

「うーん、あ! そういえば神官のままに二十レベル以上、職を変えなければ特異職に就けるらしいですよ」


 神官のまま二十レベル過ごし、その後に職業を変更した場合。

 女性ならば巫女になることが可能らしいですね。


「巫女! 神様、ボク、巫女。ですっ!」

「よろしいでしょう」

「ふ、ふ、もっともっと仕える。ですっ!」

「巫女で決定ですね。巫女の隠しアビリティは……近接攻撃時、魔法攻撃力の一部が乗る、ですか。近接主体なのに魔法攻撃力のほうが高いアトリには最適でしょう」


 微々たる数値ではありますが。

 この隠しアビリティは職毎に違います。職を変更しても、取得した隠しアビリティはステータスに影響し続けます。


 たとえば神官は回復力UPです。

 これはレベルを重ねる毎に効果が強くなっていくので、同じ職を続ければ特化されていきます。正直、職をコロコロ変わるのは良くないかもしれません。

 基本は50で上級職になるまで、同じ職を続けるのが定石みたいですね。


 ただし、ジョブ限定のスキルもあるようなので、それを取るために寄り道、という育成プランもあります。

 アトリは無事、巫女に転職しました。


 それから私たちは手早くスキルやアーツを取得し、ようやく冒険に戻ることとなりました。いざ、第二フィールドへ。

 まだ誰も知らぬ、未知の地へ駆け出しました。


       ▽

 真偽は定かではありませんけれども、全人類と全蟻を天秤に乗せたならば、重さではほとんど同じくらい、という説がございます。

 蟻ってたくさんいるんですね。

 それでも蟻に人間の重さが負けるイメージがつきませんでしたが。


「でっかぁ」


 私たちの視界一面、巨大蟻が埋め尽くしております。

 一匹一匹がカバくらいのサイズ感があります。デカいです。気持ち悪いです。なんとか防衛軍みたいです。


『ぎちぎちぎちぎち』

「蟻って鳴くんですねえ」

「かみさま、どうする。ですっ!?」


 鑑定の結果、レベルは私たちと同じくらいです。

 ただ数が百を超えていることだけが不安ですが、まあ、やってやれないことはないでしょう。何故ならばアトリは継戦能力特化なのです。


 格下と同格には滅法強いですからね。


「行きましょう!」

「行く。ですっ」


 アトリが敵の中央に踊り出しました。

 新しく取得した巫女限定スキル【神楽】により、本当に彼女の動作は舞踊のようです。元々、踊るように鎌を振るっていたアトリです。

 このスキルでより体術が洗練されていますね。


 あっという間に蟻の首が三つ、宙を舞います。


「【クリエイト・ダーク】スモークモード」


 私は【クリエイト・ダーク】の新モード、スモーク(煙幕ですね)を焚いてアトリの姿を敵から隠します。

 蟻が騒ぎ出す中、アトリは鎌スキル【死導刃ししるべば】を発動しました。


 これは攻撃のすべてが「クリティカル」になるアーツです。

 鎌のアーツの特色としては、刃に「様々な効果を付与」することが挙げられます。刃系のアーツは共存することはできないので【奪命刃】は機能していません。

 ただ、一度使用しておけば、上書きしない限り永続なのでコスパ良しです。


 例外として固有スキル【殺生刃】は共存可能です。厳密には鎌スキルではないので。


「――っ」


 更に鎌術で取得したパッシブスキル【弱点特攻】により、弱点に命中した際やクリティカルになった時、ダメージを増加させる効果が発揮されます。

 アトリが鎌を振るう度、蟻どもの肉体が両断されていきます。


「今までは首以外に命中させても火力不足でしたが、これなら良いですね」

「首を狙わなくて良い。楽。ですっ」


 蟻の攻撃は噛み付きばかり。

 全方位を囲まれているので回避が難しいですが、そもそも鎌の間合いに侵入させることがありません。


 雑に回転するだけで死が増えていきます。


「苦戦の気配がありませんね。少しスキルレベルを上げても?」

「もちろんです、神様! オーラ、です、か?」

「そうですよ。【ダーク・オーラ】!」


 この【ダーク・オーラ】もスキルレベルを上げ、ようやくアーツを取得しました。【消費軽減】というパッシブアーツです。

 効果はオーラを纏う際のMP消費軽減です。


 アトリの周囲に闇のオーラが顕現します。得に効果はありません。ただし、このオーラスキルはレベルが上がれば効果を付与できるようです。

 オーラ内の敵にDOTダメージや所持している状態異常の付与、などなどが可能になるそうですね。


 かなりMPを喰う上、中々にレベルが上がりません。

 ですが、アトリが試すうちに気づいたのは、闇に巻き込む数が多ければスキルレベルが上がるようになるそうです。

 スキル5以上に育てるには、敵を巻き込むことが必須らしいです。


(このスキル、気づき辛いですよね。MPが急速に減っていくのに、敵のど真ん中で使わないとレベルが上がらないんですもん。普通なら自殺ですよ)


 MP自動回復を持ち、なおかつ「私の指示は絶対に遵守」するアトリでなければ、そもそも試そうとも思わないでしょう。

 育てば強そうなスキルです。

 とくに持久力のアトリとDOT攻撃は相性抜群ですしね。


 さて、蟻の大群との死闘は続きます。稼ぎましょう。




―――――――――

 今回から毎日20時くらいに投稿しようと思います。

 テンション次第では一日に数話連続投稿もありえますが、その際はノートで告知しようと思います。

 こういうような形での告知もあり得ますが、当日、いきなり投稿したくなるかもしれないので。

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