第13話 神々の観察会

▽第13話 神々の観察会

 二人の女神が豆粒ほどの光を、身を屈めるようにして凝視している。


 それは星。

 ひとつの世界。

 女神ザ・ワールドが司りし、ネロたちが「ゲーム」だと思わされて介入させられている世界であった。


「わ、わ、見てみて! フールちゃんっ! ヘルムートくんが負けた! こんなの六百年ぶりだよお……嬉しいよお」

「抱きつくな。喚くな。魔王バグが発生した時点で世界をリセットすれば良いだけなのに」

「だってだって、私の初めての『人類種』だよ? ここまで辿り着くのに何兆年かかったと思ってるの!」

「時間がかかりすぎ。あたしなんてもう数十億回は世界をリセットしてるのに」

「でもー」

「蜂さんが絶滅しそうだから一部の時空を凍結するねっ、一億年くらいっ! 蜂さんが住める世界になっていたら良いなあ! とかやってるからよ」


 女神ザ・フールは呆れたように肩を竦め、ザ・ワールドの世界を見つめる。あまりに時間を掛けすぎた世界には、魔王バグが生じてしまう。

 魔王という謎の存在が出現し、世界に魔法が誕生。

 魔力を体内に宿した、魔物という生物が世界を蹂躙するようになるのだ。普通の女神であれば世界をリセットし、次の世界を楽しむところなのだが……


 ザ・ワールドは女神にしては珍しく、世界の管理にだだ甘なのだった。

 今もヘルムートを倒したという「アトリ」をしきりに褒め、彼女に合致した「固有スキル」まで授けている。


「アトリちゃん、良い子! 死んだら天使にしてあげちゃお。お父さんお母さんを殺しちゃったのは悲しいけど……生きるって殺すことでもあるよね!」


 とウキウキを隠そうともしない。

 ヘルムートを倒したくらいで大袈裟だ。


「で、これからどうするの?」とザ・フールが問う。

「魔王ちゃんとの契約は守るよ。彼女たちが六百六十六年、魔王を守り抜くことができたら……世界をリセットしない。魔王ちゃんたちの存在を認める。時空凍結も全解除する」

「他の生物を皆殺しにされても? ぎゃくに人類種が絶滅させられそうになって、慌てて時空凍結をしたわよね?」

「うう……仲良くしてほしい」

「あと四年ね。私の世界の人類文明が『ギリギリ』間に合ったから介入できたけど。かなり無理してるんだからね、あたし。これで負けたら、こっちの世界までリセットしなきゃだし」


 ザ・ワールドは世界一、次元一の美貌を歪めて、泣きそうな顔になる。


「ご、ごめんね、フールちゃん。私がダメダメ女神だからぁ」

「その泣き顔は卑怯よ……」

「代わりに、今夜のえっちは激しくしてあげるからねっ。お礼に十億年くらいはフールちゃんとしかしないよっ!」

「……う、うん。えへへ」


 二人の女神は手を繋ぎ、それから――

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