第19話

 根古田博士の研究室もとい、ボロアパートの一室から何もかもが運び出された後、宅配業者によってベッドと布団一式が運び込まれた。


「こんなものは頼んどらん」という根古田博士の抗議も空しく、玉越たま子によって購入された家具などの品物が次々と部屋の中へと運び込まれた。


「これは一体どういうことだ?」

「いや、だって私ここに住むんですから、少しでも快適にしたいじゃないですか?」

「そんな話は聞いとらんぞ。今夜一晩だけではないのか?」

「もちろん、しらたまちゃんが人間に変わってしまったら、一晩でおいとまします」

「それでは変わらなければ?」

「一週間でも一ヶ月でも、お邪魔し続けます。まぁ、その間の家賃は折半させて貰いますから心配はなさらずに」

「そういう問題ではないのだ、わ、私はトラコを人間から猫に戻せと頼んだだけだ」

「ですから、その為にも猫が人間の姿に変わる瞬間を目撃しなければ。その仕組みを解明しないことには、その逆も解明出来ないということです」


「貴様、もしかすると私に惚れているのか?」

「そんなことは100パーセントありません」

「貴様は好きでも無い男の部屋で一晩を過ごせるというのか?」

「これは私の野望のためです、その為に多少の犠牲は致し方ない。もちろん、何か変なことしたならあなたの命は無いものと思って下さいね」













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根古田博士の災難(さいにゃん) 奇跡いのる @akiko_f

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