好意は人を傷つける

「意味わからないです」


「どこが?」


 キョトンとして返す恋に悠里は困惑する。意味がわからない。

 どこが分からないのかすらわからないとかいう勉強できない人間にありがちな気持ちが悠里はなんとなく分かった。


「悠里ってさ、なんかあった?」



 やめて



 土足で踏み込む。恋はそんなつもりがなく一歩一歩確認しながら悠里の心の中を探ってるつもりだが、悠里にとってはズカズカと心の中にある秘密の部屋のドアをバカバカ開けてるようなものだった。


「なんで、だいたい!何か隠してるからって!わたしを好きっていう気持ちになるなんて不自然じゃ」


 悠里は大きく声を出してしまう



 見ないで



「ミステリアスな人が好きになるのはよくあることじゃない?」



入ってこないで



「そんなの、ただの、好奇心です。好意じゃないです」


 恋は全くひるむ様子がない。悠里は好意という押し付けがましいトゲの感情に嫌気が刺してくる。


「好意よ。好きだもの」



「好き」って言わないで



「ただ知りたいだけでしょ!それは好奇心です!」

「何をそんなに怯えているの?」



 わたしを嫌わないで



「好意は・・・人を傷つけます・・・!」


 そう強く言い残し、悠里は荷物をまとめて出て行ってしまった。


 恋は、ただ悠里が出て行った後もずっとカウンセリング室のドアを見つめていた。

 人と違うことはわかっている。だからこそ自分とどう話すかを見つめて考えてくれた悠里に対する興味は治らない。


 人と違ってあろう、人と違うとはっきりみんなにわかってもらおうとパンクな格好をしていても悠里はそう言う目をしてなかったことを恋は知っている。

 ナチュラルに対等な人間として見られるのは久しぶりだった。


 だからこそ惚れてしまった。悠里の奥底に持つ顔をしっているからこそ、恋は諦められない

 惚れてしまった相手に振り向いてもらおうと必死だった。


 そして静かになった保健室、恋はインクが切れかけたボールペンを筆箱にしまいカウンセリング室のソファに横になった


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