「初恋の君」との恋が実ることを信じて、運命の数だけトマトの種を蒔く。

作品を見渡すときらぼしの如く美しい言葉が並んでいるのに気づく。思わず、ビックリしてしまう。

道すがらお日さまが燦々と照りつける図書館に向かって、徒然なるままに足繁く通うひとりの大学生。
〝静謐〟な館で出会ったのは、なんと「トマトの君」。予期せぬ〝邂逅〟に驚いたのは主人公の幸太郎である。彼の気持ちを悟りすべてを〝 嚥下〟した彼女は、切ない想いを抱く男に向かって、ひとつの謎の言葉を残し微笑んでくれた。

『ガーデニング君は運命ってあると思う?』

幸太郎は彼女から授けられた言葉を頼りにし、恋がいつか実ることを信じて人知れず十一個の数だけ、トマトの種を蒔き育ててゆくのかもしれない。
これはもう一目惚れなのかも。いや、違う。人生に一回しかない、切なく甘く薫る運命的な初恋なのだ。