第52話 初めての伐採

「聞いてきたよ~」


 大工さんたちに木の入手方法を聞きに行った、妻が戻ってくる。


「ありがとう。それでどうやって木を手に入れるって?」

「伐採っていうスキルを使って斧で木を切り倒すといいって」


 予想通り、スキルを取る必要があるらしい。採取や採掘がSP2であることを考えると、伐採も同じだろう。


「スキルを取るのはいいけど……俺たち斧なんて持ってないよ?」

「そこは心配ご無用。じゃーん! 大工さんが貸してくれました~」


 妻はアイテムボックスから2本の斧を取り出した。


「えっ、これ鉄製……」


 現時点でプレイヤー間では鉄製武器はまだまだ流通量が少ない。それなのにアネットさんのところの大工さんが貸してくれた斧はどちらも鉄でできていた。


「おじさんたちの話だと、アネットさんが昔の知り合いに頼んで工具は一式鉄にしたんだって」

「流石、元王都の魔法使いだね。いい道具も貸してくれるみたいだし、さっさとスキル取得して伐採がんばろうか」




ハイト・アイザック(ヒューム)

メイン:見習いテイマー  Lv.12

サブ1:見習い錬金術師  Lv.6

サブ2:見習い戦士    Lv.6

HP:260/260 MP:260/260

力:25(+11)

耐:25(+24)

魔:33

速:18

運:28

スキル:テイム、火魔法、錬金術、剣術(初級)、槍術(初級)、盾、気配察知、聴覚強化、鑑定、解体、採取、潜水、伐採←new

称号:<ラビットキラー>

SP:18


リーナ・アイザック(ダークエルフ)

メイン:見習いテイマー Lv.12

サブ1:見習い料理人  Lv.4

サブ2:見習い農家   Lv.1

HP:150/150 MP:200/200

力:10(+1)

耐:3(+9)

魔:45(+5)

速:30

運:14

スキル:テイム、料理、栽培、鑑定、採掘、植物魔法、水魔法、闇魔法、短剣術(初級)、伐採←new

称号:―

SP:22




 伐採を取得した俺たちは、エルーニ山を越えてペックの森を訪れた。妻が大工さんたちに話を聞きに行ったとき、エルーニ山よりペックの森の木の方が建築に向いているから、そっちで木材を確保して欲しいと言われたのだ。


「最近はバガードなしでも、山を歩けるようになってきたよね~」

「俺たちもファーレンまでの道のりを何往復もしてるから。特にその気はなかったけど、いつの間にか覚えてたね」

「でも、やっぱりバガードがいるときより、山を下るのに時間はかかっちゃったね」

「本職に負けるのは仕方ないよ」


 今、妻と話していた内容からもわかるように伐採に従魔たちは参加しない。湖の西側にある大樹の陰で昼寝をしているからだ。身を寄せ合って眠っている姿がかわいくて、起こす気にはならなかった。


「そろそろ木材確保始めようか」

「おっけー! どっちがたくさん切り倒せるか競争ね。よーい、スタート!!」


 伐採競争をしようと言い出した妻。俺が返事をする間もなく、勝負が始まった。

 

 まずは1本切ってみよう。

 俺は伐採用の鉄斧を手に持ち、近場にあった木に狙いを定める。


「なるほど、こんな感じになるんだ」


 木の幹の俺の腰より少し高いくらいの位置が、淡く光って見える。おそらくここに斧を当てろということなのだろう。採取スキルを使った際にも、拾える草などが淡く光るので同じ仕組みだと思われる。


 さて、あとはここに斧を打ちつければいいわけだけど……俺は都会育ちでキャンプとかしたことのないタイプの人間なんだよね。だから斧の扱いとかもわからない。かといって伐採のためだけに斧(初級)を取るのはSPの無駄遣い感がすごい。


 勘でやるしかないか。

 とりあえず野球のバッティングフォームをとればそれなりに上手くいくかな?

 小学生の頃、別に野球が好きなわけでもないのに父から左打ちのフォームを覚えさせられた。中学高校と部活ではバスケをしていたので、これまで一度たりとも役立つことのなかったのだが、ついに陽の目を見る機会が訪れたのかもしれない。

 えーと、たしか左手が上で右手が下だよな。そしてバットを――――じゃなくて斧を構えて……腰から振るッ!!!


「おぉ~! これは思った以上にいいかもしれない」


 今の一撃で木の幹の1/3のくらいまで切り目が入った。斧の振り方としてはあまり合っている気はしないが、力自体はしっかりと伝わったようだ。

 よし、この調子であと2振りがんばろう。




ラニットスギ

レア度:1 品質:低

ラニット地方の森林に多く分布する樹木。低価格で流通している上、丈夫なため建材や家具に用いられることが多い。




「これで1本か……結構疲れるなぁ」


 鉄の斧を3度もフルスイングするとなかなか疲れる。このゲームにはスタミナゲージなどはないが、どういった処理がされているのだろうか。少し気になるところだ。

 まぁ、誰か検証していそうだし、それは後で調べよう。今はとにかく木を切って切って切りまくらないと。クランハウスを建てるのに、いったいいくつの木材が必要なのかは知らない。だが、1、2本では足りないことくらい素人の俺でもわかる。


<伐採の熟練度が規定値に達しました。特定動作の疲労が軽減されます>


 4時間後、合計10本のラニットスギを切り倒した俺の頭にアナウンスが響いた。


 ……どうして剣術(初級)の次に熟練度が上がるのが伐採なんだ。気配察知や鑑定の方がたくさん使っているはずなのに!!


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