其ノ二十五 西の蔵

「は。御納戸役おなんどやく(用務員)どの、わざわざの御足労、痛み入ります。」

 常磐井ときわい様がこう仰ると、御納戸役おなんどやく(用務員)のおのこが、手に握って居た一枚のき(メモ)を常磐井ときわい様に手渡されました。

「では、わしはこれで。」

 御納戸役おなんどやく(用務員)様はそう仰って、そそくさと御座之間ござのま(PTA会室)を後にされました。


 常磐井ときわい様はそのき(メモ)に目を通されると、またか、と言った落胆の表情で嘆息を漏らされました。

 その様子をご覧になって居た好奇心旺盛なおりんさんは、堪らず常磐井ときわい様の後ろに回って、おでん方様かたさまのお筆蹟で書かれたそのき(メモ)を覗き込まれると、こう仰いました。


「なんと、次のお集まりは神無月かんなづき(10月) 十日、暮六くれむはん(午後7時)、新川沿い 津軽屋つがるや 西の蔵だって?」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る