四、仕方がないので、天仙になります。
黒竜と喧嘩をし、呪いをかけられてしまった
天に昇っていない仙人を、天仙たちや神と名の付く者たちは仙人とは認めてはいないようで、地仙は仙人と言ってもだいぶ下の存在として扱われている。だが、人の世では仙人は仙人であり、地も天も関係ないのだ。
そもそも、神と名の付く者たちの考えがどれだけ神基準で尊かろうと、
目の前の小さき命さえ救えないで、"神"といえるだろうか。
「さて、と。私は私の道を行くことにしましょう」
完全なる独り言だが、誰も聞いていないし気にすることもない。なんなら鳥すらいない。平原が続くその道の先は、さらなる平原であったが、その先にきっと村か町かはあるだろう。
「それにしても、この手の甲の紋様は目立ってしようがないですね、」
白い道袍の広袖を漁って細い布を取り出すと、くるくると左手に巻いていくのだが、かなり歪になっている。最後に口を使ってきゅっと結び、よし、と頷いた。
その紋様は、余命があとどのくらい残っているかを示しているのだろう。手の甲を覆うかように刻まれたその墨色の紋様は、太陽のような月のような抽象的な紋様だった。
数日前、
「
「····天仙ですか? 私はできればのらりくらりと、今まで通り地上でのんびりと人助けをしたいと思っています」
両肩に手を置き、指に力を入れてくる
「なに言ってるの!? 十年なんてあっという間よ!
「····はあ。でも、もう十分長生きしましたし、死ぬなら死ぬでもいいかな、と」
「それは駄目です!」
先程まで傍観者だった
「いいですか、
ああ、それは····と
(うーん。天仙にならないように、ある程度
「とりあえず天仙になって、それからまた地仙に戻ればいいのよ!」
「それはそれでどうかと思いますけど····」
「····とにかく。どちらも譲る気がないのはよくわかりました。なんにせよ、呪いを解かないことには始まりません。あなたは嫌かもしれませんが、天仙になるのが唯一の解決方法でしょう」
その後も散々言いたいことを言い、ふたりは
そんな数日前のことを思い出しながら、
(
ぐっと拳を握り締め、決意する。
「千二百の
ほぼ千二百ですね! と、遠い目をして最先不穏な曇り空を見上げる。
しかし、この
そんな強運が齎す運命の出会いまで、あと――――――。
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