強い魔物との遭遇

 僕はすぐに〝指示〟の連携のための幻想を展開した。同時に騎士さんが〝指示〟を大声で叫んでくれた。


「射撃担当は今から色の標識に合わせて射撃するように! 緑色は牽制、黄色は制圧、赤色は高威力の殺傷射撃だ!」


 戦場のいたるところにカラフルなボールの幻想が現れた。


 騎士さんが言った通り、色は赤緑黄の三色。そしてその標識の向こうには必ず魔物があった。


 後方部隊の射撃の勢いが強まった。魔物の死にゆく速度が速くなった。それによって突撃隊の負担が減った。


 僕の幻影はほとんど特定の個人に幻術をかけるタイプではなく、皆が見られる像を投影すること。魔物を撹乱するのはいいが、同時に後方部隊の射撃を妨げる要素にもなった。そのため突撃隊が順調に戦っていくのとは別に、後方部隊の直接的な攻撃力が多少遅れている状態だった。


 でも視覚的な妨害で射撃が不便なら、視覚的な便宜を提供すれば良い。そのための標識と指示だった。


 もちろん標識のために戦況を見続けながらも、突撃隊と合流して魔物を討伐することは忘れなかった。


「やっぱりお兄ちゃんはすごいねっ」


 ハンナの近くにあった魔物を粉砕したとき、ハンナはそのような言葉を僕に言った。


「まだまだだ。テリアお嬢様を追いかけるには、この程度では足りないんだ」


「……目標が高いのはいいけど、高すぎるのも考えてみることだと思うよ」


「……集中しろ。お前はまだ実戦でよそ見をするほどの実力ではないだろう」


「大丈夫!」


 巨大なゴリラに似た魔物がハンナに飛びかかった。しかし魔物の拳が僕を見つめるハンナの側頭部に炸裂しても、ハンナはあくまで平然とした。ハンナの巨大な黒剣が奴を一刀両断した。


「これくらいは簡単だよ!」


「そんな油断が一番危ないってことだよ、バカ」


 まぁ、それでも自分の能力をどうすればまともに扱えるかはこいつも知っている。お嬢様からもらった剣もちゃんと使っているしね。


 ハンナの剣……『如意黒剣』はテリアお嬢様がハンナのために選んでくれたものだ。魔力で大きさを調節することができ、ペンダント程度から山を一撃で割る程度まで、扱えれば自由自在に大きさと質量が変わる武器。『鋼体』の怪力を持ったハンナによく似合う武器だ。


 実戦経験がもっとあればよかっ……。


「うっ!?」


「……来たか」


 亀裂から強力な魔力波が広がった。


 飛び出た邪毒の塊は今までと似ていた。だが膨らむ勢いがはるかに強かった。やがて現れた魔物は今までで最も巨大で、感じられる魔力も強かった。


 体はケイン王子殿下の視察の時に見た奴……ミッドレースアルファ・プロトタイプ、とお嬢様が呼んだっけ。あいつと似ていた。しかし見た目は筋肉質の二足歩行トカゲに近かった。そして感じられる魔力も格が違っていた。視察の時に例えると……お嬢様を除いて、大勢が駆けつけても苦戦した最後の魔物と似ているだろうか。


「あいつは俺が相手にする」


「私も……!」


「いや、お前はここを守れよ。お前が突撃隊の中心だろ」


 ハンナの反論を黙殺し、すぐに奴に向かって跳躍した。途中で騎士さんの通信が入ってきた。


[少年、あいつは自分が……]


[いいえ、僕が相手にします。騎士さんは全体的な戦線の維持を引き受けてください]


[何言ってるんだ! あんな奴を相手にするために自分がここにいるんだ!]


[ですが、貴方はここの実質的な指揮官です。他の騎士さんたちも同じです。あいつを相手にしながら指揮もできますか?]


[そう言うお前は標識と幻影を維持し続けることができるのかよ?]


[幻影は可能です。標識は難しいでしょう、戦況をずっと見なければならないから。ですが僕の幻影がなくても戦線は押されませんが、貴方の指揮がなければ有事の際に対処できないかもしれません。だから僕があいつを引き受けるのが正しいです。そして、一人で相手にするつもりはありません]


 騎士さんは相変らず納得できない様子だったが、結局納得してくれた。指揮問題はやはり知っているだろうし、僕の指揮能力は検証されていないが、少なくとも力は開戦する時の一撃殺で少しは検証されたから。


 僕はすぐに後方支援部隊に連絡した。


[射撃組の執行部員は四人だけ僕を支援してください。指示は僕が下します]


 話すやいなや、強力な魔物の首と肩に赤い標識の幻影を浮かべた。射撃要員の魔弾がその場を強打した。


「クオオオ!」


 突然の攻撃に憤怒する奴の足元に近づいた。奴が僕に気づいた時はすでに僕の両手に魔力が十分に集まっていた。


 ――極拳流奥義〈双天砕〉


 共鳴増幅した魔力を全方位に爆発させた。周辺一帯の魔物がすべて殲滅され、一時的な空き地が作られた。


 しかし、強力な魔物はただ少し押されてふらついただけだった。周りを整理するためにわざと拡散させて威力が低くなったのは知っているけど、特別な傷がないのは率直に気に入らない。


 だからといって気が引ける僕ではない。


 魔物の怒りが僕を向くのを確認し、すぐに体勢を整えた。そして奴の膝と肩に黄色の標識を配置した。射撃組の弾幕が奴の動きを制約した。


 ――極拳流〈一点極進〉


 腹部の方に飛びかかって一撃。魔物が短い悲鳴を上げた。だが奴の肌は非常に硬かったし、衝撃がまともに伝わってもいなかった。むしろ殴った僕の手が折れそうになった。奴の悲鳴も苦痛よりは怒りに近かった。


 奴の巨大な腕が僕を狙った。地面を転がり避けながら距離を開き、先ほど殴ったところに赤い標識を出した。強力な弾幕が再び奴を押しのけた。


 傷は……ほとんどないな。


 赤い標識の射撃も大きな被害は与えられなかった。でも赤と黄色の射撃が奴を押し出したり、動きを牽制できることは確認した。


 拳が触れた瞬間把握した奴の固さと魔力。それに基づいて戦力と勝算を計算し始めた。


 さあ、始めてみようか。


―――――


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