ジェリアの影
「辺境伯勢力を刺激してみようかと思うわ」
「彼らに中央に進出する機会を与えるということか?」
ジェリアは私が話すとすぐに意図を把握した。正直感嘆した。
「やっぱりすごいわね。そうよ。彼らが望むことを私たちが保障できるという判断を誘導すれば、彼らも私たちの味方になってくれるはずよ」
まだ辺境伯たちの令嬢令息とは接触していないけど、前回の選挙でも彼らは純粋能力主義派に属する生徒を支持した。今回も大きく変わらないだろう。
ジェリアは眉をひそめ、再び口を開いた。
「……発想はいいが、まだ生徒に過ぎないボクたちが彼らに魅力的なメリットを提示できるのか? さらに場合によっては彼らを抱き込む代わりに、既存の支持層が大量離脱する可能性もあるぞ」
「それはそう。だから堂々と私たちが保守能力主義派と敵対するような行動はしないわよ。必然的に純粋能力主義派への友好行動も消極的にすべきだけど……まぁ、その部分には考えがあるわ」
「その考えが何なのか今は話せないし?」
「……勘がいいわね。まぁ、ずっと秘密にしようとしているわけじゃないわ。まだ戦略が不完全だからだけ。整理ができ次第、みんなと共有するつもりよ」
「それなら構わないだろう。信じる。ボクも何かいい方法がないか考えてみる」
「ええ。私も今話したこと以外にも他の方向性やアイデアについて考え続けるわ」
あと、すでに言っていたアイデアに対する検討もね。
どうするのか、何が必要なのか。ほとんどはすでに検討済みだけど、まだ完全と言えるほどじゃない。そもそも完全な形ということ自体がうぬぼれに過ぎないし。
……ただ、それとは別に気にかかることもあった。
全然そぶりは見せなかったけど、最近ジェリアが何か気にしていることがあるみたいわね。でも聞いてもちゃんと答えてくれないし。
どうか今回のことに悪影響を与える悩みではないように。
***
やっぱり修練騎士団長選挙はアカデミー内では大きなイシューではあるようだ。
「今回の選挙は候補が二人だけだそうです」
「やっぱり次の団長はジェリア様ですよね?」
「でも総務部長のテニーさんも結構……」
アカデミーのどこに行っても、修練騎士団長関連話題が絶えなかった。聞きすぎてもう飽きるほど。
そして……恥ずかしい話だけど、私の名前もかなり頻繁に口に上っていた。
「ところでテリア様はなぜ出馬しなかったのでしょうか?」
「残念ですわ。間違いなくテリア様が団長になると思っていたのに」
「私も今度テリア様に票を投じようと思ったんですけど……」
「テリア様は今回ジェリア様を助けるそうですね。それで私はまずジェリア様を選ぼうと思います」
心は嬉しいけど、正直少し戸惑ったりもした。私を支持する意見も思ったより多くて。私が出馬せずにジェリアを支持したおかげで、私を支持する人の一部はジェリアを選択した状況だった。
……ある意味、これも計画通りと言えるのかしら。
〝これからやるべきことを考えると全力で目につくべきだ〟
アカデミーに入学した当時、そんなことを考えていた。ジェリアにいきなり喧嘩を吹っかけたのも、彼女との親交を始めること以外にも注目を集める目的もあった。
そうして集めた注目を今回の選挙に活用することにした。
ゲームでジェリアが票を独占した要因は私。けれど、今の私はそのような環境を作るつもりはなかったし、当然選挙の勝利も断言できなくなる。そこで思いついた方法の一つは、私を支持する人を確保した後、彼らがジェリアを選出するよう誘導することだった。
……実を言うと、当初はその考えはなかった。入学当時は選挙をあまり気にしていなかったから。むしろ入学の時からそんな考えをしていたら、当時から自分自身よりもジェリアが注目されるように計画を立てたはずだ。
でもせっかくこうなったから、活用できる方法はすべて動員しないと。
実は聞こえてくる話はそれだけじゃなかった。
「ねえ、それ聞いた? テリア様が四大公爵家の後継ラインを掌握しようと……」
「それはデマだと言ったじゃない」
「いや、でも怪しいところがあるんだって。それにピエリ卿がそうなったのも実はテリア様の陰謀だという噂も……」
いまだに私をあんな風に淫害する噂が流れているなんて。ディオスが依然としてあきらめなかったのかしら、それとも過去の噂が粘り強く生き残ったのかしら。過ぎ去った年数を考えれば多分前者だろう。その根性を他のところに使ったらよかったのに。
私はそのように笑い飛ばすことができるけれど、他の子たちはそうできなかった。
「何ですか! まだあんなタワゴトを言っている人がいますか!?」
「叱ろう!」
私の傍を歩き続けていたアルカとリディアが怒った。後ろからついてきたジェフィスは何も言わなかったけど、気配を見ると不満に思っていることは感じられた。
「どうしますか。ディオス公子を生け捕りしましょうか?」
ロベルまで私に近づいてきて、耳打ちでそんなことをささやいた。何か殺気のこもった声で。
生け捕りだなんて、一体何をしようとしているの!?
私のために怒ってくれるのはありがたいけど、そのせいで問題が生じてしまったら本末転倒なのよ。
「何もしなくてもいいわよ。どうせ一部で話題になる小さな噂なんだから」
なんとか落ち着かせた。まぁ、実際にあんな噂が主流じゃないのは事実だから。せいぜいゴシップ好きの何人かの子たちが時々言及する程度であり、気にする価値もない。今は他に考えるべきことが多いよ。
そう思いながら歩いていたら、生徒たちがかなり集まっているところを見つけた。特に何かがある場所じゃないけどって思ってそっちを見ると、女の子たちより頭一つは高い顔が見えた。
あれは……ジェリア?
ジェリアが生徒たちに囲まれた姿自体は珍しくない。今もジェリアは笑っているだけで。
ただ……その笑いにどこか影がついたような感じが、気になった。
―――――
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