次の為の考え
「そうだ。テリア、君も大体は予想したことじゃないか?」
ジェリアの言葉に私は頷いた。
あえてゲームの設定などを考える必要もなく、バルメリア王国の政治的な問題や修練騎士団長の重要性などは貴族の令嬢として見逃せないからね。まぁ、私はゲームの記憶と対処が優先だったので、今まで気にしていなかったけど。
それでも今回だけはさすがの私も無視できない。
「それでジェリア。これからの計画は考えてみた?」
「大体はな。ただこういうのはちょっと苦手な方だぞ。まだ悩みが多い。ところで……」
ジェリアは腕を組んで細目をあけた。その視線が私に刺さった。どうしたのかしら。
「君、なぜ選挙に出馬しないんだ?」
何よ、そのことだったの?
いや、考えてみればジェリアにあらかじめ話をしなかった私の過ちではある。選挙を放置するだけならともかく、私はジェリアに協力する立場だから。事前に話し合い、戦略を立てることは重要だ。
【それだけじゃないじゃない。貴方はジェリアを友達だと思っていないの?】
[そんなはずがないでしょ]
……まぁ、言ってくれなかったのが寂しかったんだろう。ジェリアとはお互いに友達と呼べるだけの時間を過ごしたからね。
「気性に合わないから」
「なぜだ? 君ならうまくできるはずだ」
ジェリアは私の何を見てそんな考えをしたの。
「全然。修練騎士団長に最も必要なのは前面に出て人を導くカリスマなのよ。私は……まぁ、できないとは言わないわよ。でもあまりしたくはないわ。私は堂々と出るよりは後ろで工作をする方が楽よ。私が前面に出るのは騎士として剣を振る時くらいなら十分だね」
私が言うにはちょっとアレだけど、私は両親の血統を本当に徹底的に受け継いだと思う。性格的な面でね。
研究と謀略の大家であるオステノヴァは、前面に出るのがあまり好きじゃない。あくまでも技術開発と裏工作、そして策略で徹底的に状況を思い通りに解決していくだけだ。そして狩りと武芸の名手であるアルケンノヴァは、集団の統率より個人の技量を誇ることをより重視する。
もちろん人間というのは工場で製造される存在じゃないし、先祖の中には家の気風とかけ離れた人も多かった。けれど、私は良くも悪くもオステノヴァとアルケンノヴァ公爵家の典型的なイメージに符合する人間だ。
ジェリアは私の話を聞いてため息をついた。
「まぁ強要するつもりはない。強要してもライバルが増える格好でもあるし。そして……ボクを助けると言ったか?」
「ええ。いわば今回の選挙で私は貴方の参謀というか?」
「そうなるだろうな。……もしボクが団長になったら、次の執行部長は君になるだろう」
「さぁね? 部長は部の中で決まるんだからまだわからないわよ。他に部長になりたい子がいるかもしれないじゃない」
「君を差し置いて部長の座を狙うほど根性のある奴はいないだろう。そして言っているのを見ると、執行部長の席は興味があるようだな」
「まぁそれはそうね」
執行部長になることも計画にある。もしゲームの回想シーンの事件が起きれば、先頭に立って事件に対処する執行部の指揮権程度は私が持っていた方が良いから。もちろん全体的な指揮はジェリアがすることになるけど、状況による臨機応変はゲームの記憶を持った私がするのが良いだろう。
……これもあれも、ジェリアが団長になってこそ意味があるんだけどね。
「テリア。さっき君がボクに計画を聞いてみたんだが……逆にボクからも聞きたい。君はどうするつもりだ?」
「一応いくつか考えておいたことはあるんだけど……ジェリア。テニー先輩が言った人たちについてどう思う?」
「個人的には別にどうでも構わないぞ。ボクのことが嫌いな奴らは勝手に嫌がれ。……と言いたいが、選挙だけはそう無視するわけにもいかないのが現実だな」
「やっぱりそうでしょ?」
一つ。根本的な対策というには微妙だけど……方法がないわけじゃない。
それは
政治的な意味でジェリアのイメージを支配するのは、やっぱりフィリスノヴァ公爵家そのものの権威的で身分を重視する姿だ。ジェリアに近い子たちはジェリアが全くそのような人ではないことを知っているけれど、問題はジェリアの交友関係がそれほど広くないということだ。
執行部長として生徒たちとよく向き合うけれど、〝部長としての親切さ〟程度は業務の延長線上に過ぎない。そもそもフィリスノヴァ公爵家だからといって傍若無人として皆を見下すような存在じゃないから、単純に執行部長としてのイメージだけではフィリスノヴァ公爵家という出身が与える先入観を消すことはできない。
けれど……端的に言えば、ジェリアの性向はむしろ純粋能力主義に近い。
強ければ、有能なら。ただそれだけで人の使い道を判断し、それ以外は全く気にしないタイプ。露骨に言えば、ジェリアを敵対する勢力は単にジェリアを誤解しているだけだ。
……ただ、単にジェリアがどんな人なのかを公然とするだけでは問題がある。
フィリスノヴァ公爵家という背景がジェリアにかぶせた先入観。それがあるからこそ、保守能力主義派に属する生徒たちはジェリアの支持層だ。下手をして彼らに背を向かうことになったら、本来の支持層を失う結果になりかねない。
そんな考えを要約して伝えると、ジェリアも深く共感するかのように頷いた。
「その問題は慎重にアプローチすべきだろう。まぁ、単純にボクの性向が違うという理由だけでボクに背を向けるほどの奴らではないが、それもこちらからどうするかによって変わるだろう」
私は頷いた。
やっぱりジェリアもよく知っているわね。言うまでもなく認識を共有しているのであれば、今後を考えるにもよい。
「……それで、ジェリア。考えておいたことがあるんだけど」
―――――
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