ピエリとの戦い
「テリアさんは本当におかしい人です」
ピエリは私にそう言った。
「いくら才能があるとはいえ、その歳でそれだけの強さを備えた人は今までいませんでした。それに一体どんな経路で情報を得るのかさえ不透明なのに、その情報の精度も高いですよね。そしてその情報を活用する判断力や冷静さも子どもとは見られないほどです。……まるでこの世を一度体験した魂が宿ったように」
「性格が若年寄りみたいってよく言われましたわ」
平気で答える私だったけれど、背中には冷や汗が流れた。
まるで転生を暗示するような言葉。まさか私の転生について知っているのかしらと思った。けれど、いくらピエリが頭の良い悪党でも転生という奇想天外な現象を推理力だけで突き止めるはずはない。だからそうじゃないだろう。
……と考えたい。けれど、ただ無視するわけにもいかない。
安息領は邪毒神に仕える者たち。そして邪毒神はこの世界の外に存在する神格だ。ということは、この世界のものではない法則や要素のことにも知識があるだろう。実際、『隠された島の主人』は『バルセイ』のことを確かに知っていた。『隠された島の主人』は安息領と敵対しているようだけど。
もし他の邪毒神も『バルセイ』のことを知っていたら、安息領と接触してその情報を与えた可能性もある。
「……まぁ、どちらでも構いません」
ピエリは私の悩みなど知ったことじゃないって言うように微笑んだ。
「貴方がどんな存在であれ、ここで死んだら何の意味もないですからね」
まるで散歩に行くような軽さで、ピエリの剣が私の首を狙った。
「!?」
私さえもぼやけてしか認識できないほどの接近速度。とてもギリギリの条件反射で剣撃を防いだけど、ピエリは反撃する隙を与えないかのように繰り返し攻撃を浴びせた。
「テリア!」
「お嬢様!」
ジェリアとロベルはピエリを両側から奇襲した。でもピエリはそんな二人をあざ笑った。
――蛇形剣流〈蛇巣穴突き〉
たった一度の斬撃。それが分裂し、蛇のようにうねる斬撃を無数に生んだ。それらが私たち三人を一度に襲った。
「くっ!」
「わっ!?」
重剣を立てたジェリアが押し出され、魔力で鋼鉄より硬くなったロベルの体が平気で切られた。けれど、二人を撃退した斬撃はごく一部に過ぎなかった。無数の斬撃の多くは私に集中した。
――天空流〈月光蔓延〉
高速斬撃の乱舞でピエリの斬撃をすべて相殺した。その直後に突っ込んで一閃。そしてまた斬撃。あっという間に数十回の剣撃を浴びせた。でもピエリは平然とした顔でそのすべてを防いだ。そして反撃を入れることも忘れなかった。
「なかなかですね」
「その余裕、後悔させてあげましょう!」
反撃を避け魔力を集中。〈三日月描き〉の巨大な斬撃を放った。至近距離での攻撃だったにもかかわらず、ピエリは巧みに回避した。でも私はその回避を前もって予想して突きを放っていた。
――蛇形剣流〈蛻け〉
ピエリが二人に分裂した。
いや、分裂ではなかった。魔力で作った残像を残し、本体が瞬間移動を彷彿とさせる速度で動いただけ。残像を残して突きの軌道から外れた彼が私に剣を振り回した。それを防ごうと剣を立てた瞬間、ピエリの剣の軌道が神妙に変わって反対側を狙ってきた。
「ふん!」
左手の剣でそれを防ぎ、右手の剣は閃光になった。
――天空流〈フレア〉
天空流でも速度だけは一番速い魔力の斬撃。けれど、ピエリはすでに予想していたかのように剣を戻して受け止めた。直後まるで分裂したように見えるほど早く繰り返された連続斬撃が、看破しにくい軌道で動きながら私を狙った。そのすべてを受け止めたものの、踏ん張られず数歩下がってしまった。
そんな私にピエリがささやいた。
「後悔はいつ頃させてくれるんですか?」
「……うるさいわよ!」
もう敬語を使いたくもない。
私は飛びかかって、ピエリは対応する。単なる戦い。でもそれに割り込む動きがあった。
「……うむ?」
ピエリの足が凍りついて地面にくっついた。そしてそのように動きが封じられた彼の頭を一つの拳が狙った。
「僕たちを忘れるなよ!!」
――極拳流〈頂点正拳突き〉
ロベルの拳とピエリの剣がぶつかった。攻撃をスムーズに受け流して隙を狙う剣。私が割り込んで剣を弾き、反対側から氷の力を含んだ重剣が飛んできた。でもピエリはそれさえも簡単に受け止めた。
「面倒ですね」
小さく呟いたピエリが左手で魔力を操作した。その魔力に呼応し、私の〈選別者〉の威圧感にやられて気絶していた雑兵たちから魔力が流れ出た。
「こいつらを相手にしなさい」
雑兵の懐で魔力が急激に膨らんだ。そしてついに服と体を引き裂きながら魔物が飛び出した。
「あんなことを……!」
残酷に飛び出したローレースアルファとベータの群れ。けれど、敵の惨事に心を痛める余裕などはなかった。
飛び出した魔物の数は約四百匹以上。ピエリの魔力が奴らを操縦して私たちに送った。ロベルとジェリアは私の方に下がって姿勢をとった。
「どいて!」
私はそんな二人を押しのけて前に出た。
魔物を前面に出したまま退くピエリを一瞥した。私たちにあまり気にしていない様子。おそらく、あの魔物たちが私たちを少しは阻止できると思っているのかしら。
なめやがって。
剣を振り上げて、振り下ろす。刃に流れていた破滅の雷電が空を切った。大地に紫色の線が刻まれ、莫大な雷電が一帯を埋めた。
雷電が消えたとき、魔物はすべて灰になって散乱していた。
「……これはちょっと驚きですね。たった一撃だなんて」
「余裕を後悔させてあげるって言ったでしょ」
私の話にピエリはニッコリ笑って剣を持った。
「いいです。これからは真剣に相手にしましょう」
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